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2013/01/17

志水辰夫/待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控

待ち伏せ街道―蓬莱屋帳外控

通し飛脚「蓬莱屋」シリーズ3作目。

同じ設定で3作目ともなると内容がパターン化してしまうのではないかと心配したけれど、今回は敢えてそこを外してきたという印象の3本。

蓬莱屋の鶴吉が身体だけは大きいがやる気がなく言い訳ばかりの半端者・長八を連れて信濃まで仏像を届ける仕事を描いた「なまくら道中」。
仏像の奪取を図る敵対する寺の刺客たちを避けながら山道を走るうちに飛脚としてのイロハも身に付いておらず鶴吉の足手まといにしかならなかった長八にも少しずつ変化が見え始める展開。
「このままちょっと感動的な感じで終わるのかな」と思いきや…もう一捻りあるラストが笑えた。

「峠ななたび」は浪人の身で蓬莱屋の大名家相手の仕事を助ける澤田吟二郎が主人公。
藤倉家の使いとして江戸からの文を持って国元の三郷の城下までやってきた澤田はひょんなことから目付の永渕勘七と知り合い、一緒に三郷から駆け落ちした城の奥女中の行方を追うことになる。
この話は、そもそもなんで澤田はここまで他の家中の騒動に積極的に首を突っ込んでいるのかがよく判らなかった。
なので、内容自体は面白かったけど今ひとつ入り込めずに終わってしまった感じ。
勘七との会話も含みが多すぎて、意味がよく判らないことがときどきあった。

最後は、急死した某藩の留守居役の奥方が屋敷を抜けだして国元に帰るのを蓬莱屋の仙造が手助けする「山抜けおんな道」。
今回の3篇の中ではこれが一番面白かった。
物ではなく人を運ぶといういつもと違う展開に最初はあまりいい印象を持てなかったけど、話が進むにつれて仙造と旅をともにするおたかの性格がどんどん変わっていく(地が出てくる)のが面白かった。
最初はしっとりとした武家の奥様だったのが、徐々に自分の生きる算段は自分で出来る女性だということが現れ、最後には自分を殺すために近づいてきた男を騙し手玉にとるようになる。(実はもともとそういう女性だったという設定)
そして遂には自分の手で追手を葬り去ることに成功する。
仙造の力を頼みながらもただ流れに任せるだけでなく、自分の力と知恵で道を切り拓いてゆくおたかの力強さに引きつけられた。
それまでの窮地もこれからの苦労もものともしないような明るいラストも印象的だった。

足も速ければ、腕も立つことももちろんだが、それだけではだめなのだ。なによりも危険を嗅ぎ分け、どんなときも自分を抑え、いざこざを避けられる意志と、分別を持ち合わせている人物でないとだめなのである。/ 通し飛脚に求められたものは、それまでの飛脚とはまったくちがう新しい人間なのだった。(p127)

<収録作品>
なまくら道中 / 峠ななたび / 山抜けおんな道

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