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2013/01/13

原宏一/ヤッさん

ヤッさん (双葉文庫)

都会の恩恵を受けて生きられることに感謝はするが、決して媚びないを人生哲学としてホームレスを続けるヤッさん。
彼は味覚と知識と信頼で築地の仲買と一流の飲食店を取り持つことで毎日の食事を確保していた。
そんなヤッさんに拾われた駆け出しホームレスのタカオは、ヤッさんの弟子になりその生き方を学ぶようになる。
そんな2人が行く先々で起こるトラブルを解決していく話。

面白かった♪

読む前はナンセンスコメディーみたいな笑える話なのかと思ったら、そうではなかった。
実際は築地の移転問題や、環境問題、飲食店の経営問題など現実に起こっている堅めな話題が大半。
でも、そういった問題の背景を丁寧にわかりやすく説明してあるのと、主人公のヤッさんの設定にぶれがないせいで全編面白く読めた。
物語が進むにつれてヤッさんの過去が少しずつ明らかになっていく設定もよかった。

登場人物の言動で「設定とちょっと合ってないのでは…?」と思う箇所も時々あった。
例えば漁師町育ちのタカオがエビの食べ方も知らないとか、北海道から出てきたばかりのミサキが都会の人混みをすり抜ける技術がタカオより高かった部分とか。
あと、シノケン師匠がホームレスになった経緯というのも改めて考えるとなんとなく納得しにくいし、いくら食事は問題ないしその他のことは都会の恩恵を受けて生きられると言っても本当に無一文で生きていけるのかという疑問も。
(最終話の入院費の件も話が出来すぎだろ、と思う)
何より基本にある「ホームレスが築地や一流飲食店に出入りする」って設定自体に無理がある。

ただ、これは物語であって現実ではない。
そういう現実とのギャップに目をつぶって「都会のファンタジー」として考えればとても面白く楽しめる物語だった。
ラストはちょっと「ありきたり」だけど、大団円で読後感もよかった。満足♪

<収録作品>
ホームレスのグルメ帳 / ラブミー蕎麦 / 籠城レストラン / 築地の乱 / 松の木コテージ / ターレの行方

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