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2013/02/08

冲方丁/光圀伝

光圀伝

素晴らしい作品だった。

同腹の兄がありながら世子となり水戸徳川家を継ぐことになった自分の存在を「不義である」として悩み、学問と詩にその答えを求め続ける光圀。
やがてそこから、救いと得がたい人々との交わりそしてついには義へ立ち返るための道を見つける。
その道もまた楽ではなかったがそれを貫き通しただひたすら「義」に生きた光圀の生涯が圧倒的な迫力で描かれていて読み応えがあった。

何よりも人物に対する愛情と尊敬で溢れた文章がいい。
主人公の光圀はもちろん、どの登場人物も活き活きとしていて立体感がある。
そして主要な人物はみなその最期まできちんと描かれているところがいい。
それがあるからこそ、光圀と同じ時を生きているような気持ちで読むことが出来た。

途中で『天地明察』の主人公・安井算哲とのやり取りも。
『天地明察』のときはあそこで光圀が出てくるのは単に幕府の要人だからかと思っていたけど、これを読んで確かに算哲を正しくバックアップ出来るのはこの人物しかいないだろうなと思えた。

全750ページという圧倒的な迫力。
しかもそこにまったく無駄がなく、むしろ足りないと思わせる充実した内容だった。
持ち歩くにはなかなか大変な大きさだったけど、その厚み、重さといった物理的な記憶もまたこの作品に必要なファクターだったように思える。
これを分冊せず、1冊ものとして出版した著者と出版社(角川書店)は英断だと思う。

とても幸せな時間だった。
ありがとうございました。

史書は、命の記述であり、決して死者の名簿ではない。

命がついえたことが肝心なのではない。どのような命も、生きてこの世にいたという事実は、永劫不滅である。そのことを知り、今生の我らもやがてその列に加わるのだという思いを喚起させる。それがひいては未来の子々孫々の営みを想起させ、今生における人倫の大義を、後世に伝える意義となるのである。
今生の世を未来に捧ぐ。
その理念あれば、いかなる死者も無に帰すことなく、そしてまた、いかなる者の死も、今生の者を脅かすことはないのである。(p484)

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