西崎憲/世界の果ての庭
複数の物語が少しずつ、入れ替わり立ち替わり登場して話が進んでいく不思議な構成。
描かれるのは
「リコとスマイス」
30代の日本人女性で作家であるリコと彼女とパーティで知り合ったアメリカ人で日本の哲学者を研究しているスマイスの物語。
「寒い夏」
リコがこれから書こうとしている小説のプロット。
「人斬り」
スマイスの研究対象である日本の哲学者・皆川淇園と富士谷成章、御杖の親子を知るきっかけとなった明治期の作家渋谷緑童が書いたとされる小説。
「成慶・淇園・成章」「御杖」
スマイスの研究対象である日本の哲学者についての考察。
「影の物語」
戦争中に捕虜収容所から脱走したまま行方知れずになったリコの祖父が辿り着いた不思議な世界を描いた物語
の(多分)5つの物語。
雰囲気は決して嫌いじゃないけど受け止め方が難しい作品だった。
それぞれの物語が閉じて(完結して)いるのかどうか微妙だし、お互いの関係性もよく判らないまま終わってしまうので。
5つの物語の中ではリコの祖父の話が好きだった。
戦争中、敵の収容所を逃げ出したものの動く力もなくなり死を覚悟しながら目を閉じた男が再び目を覚ましたとき、そこは元の世界ではなかった。
いつの時代のどこの世界なのか判らない場所に迷い込み、歩いても歩いても同じような光景が広がる世界で自分が乗ることが出来る列車の到着だけを待ちながら旅をする話。
茫漠とした虚しさと孤独だけが広がる世界。
男が乗った列車はどこに行ったのだろうか。
個性的であるというのは、小説家にとっては褒め言葉ではない。不幸なことだ。(中略)
もっと正確に言うと、個性的であるだけではだめなのだ。個性的であると同時に普遍的であることが必要なのだ。書かれたものがすべて個人の体験に見えた時点で、その小説は見限られてもしょうがないだろう。(p23より)
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