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2013年4月の6件の記事

2013/04/27

保科昌彦/ウィズ・ユー 若槻調査事務所の事件ファイル

ウィズ・ユー (若槻調査事務所の事件ファイル) (ミステリ・フロンティア)

インターネット上の仮想空間「ウィズ・ユー」で誘拐事件が発生。
若槻調査事務所では被害者(アバター)の持ち主から身代金の受け渡し場所への同行を依頼され引き受けるが、相手に撹乱されてまんまと身代金を奪われてしまう。
その後、誘拐されたアバター・亜理沙は無事に戻ってくるが、実は身代金を奪ったのは犯人ではなかったことが判明。
何故犯人は金が手に入らなかったにも関わらず人質を開放したのか。
独自に捜査を続行しそこに隠された真相に迫る調査事務所のメンバーの活躍を描く長編ミステリー。

ネット上で起こった事件は実は15年前に起きた実際の誘拐事件をなぞったものだったというのがポイントなんだけど、そこに辿り着くまでが長い。
だいたい、仮想空間のアバターが誘拐される、そしてその身代金の受け渡しが仮想空間上で実行され、その護衛に実際の調査事務所が出てくるという構図がどうしてもしっくり来なくてなかなか物語に入って行けなかった。

結末は悪くないし、主人公(探偵役)で元刑事の調査員・高原と家族(離婚した妻と息子)との関わりは効果的だったので、もう少し全体をスッキリさせて現実と仮想空間のバランスを考えたほうが良かったと思う。

そういえば、以前なんとかいう仮想空間が話題になったけど、なんだっけ?と調べてみたらこれだった。

セカンドライフ

私が忘れていただけでまだちゃんと存在するし、ユーザーも増えているらしい。
Wikipediaの解説を読む限りでは作中の「ウィズ・ユー」は「セカンドライフ」の世界観をベースにしたものなのかな。
実際に詐欺などの犯罪もあるらしい。
こういう現実をきちんと反映した作品であるなら、それが理解できないのは私がアバター同士のやり取りというのにあまり興味がないせいなのかもしれないな。

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2013/04/24

桜憑き―異形コレクション綺賓館〈3〉

桜憑き―異形コレクション綺賓館〈3〉 (カッパ・ノベルス)

桜を中心に春の花をテーマにした小説作品のアンソロジー。
監修は井上雅彦さん。

古典の域に入るものから、新しい作品まで全19作。
好き嫌いはあるけれど、どれも華やかで妖しい。
日本人がどれだけ「桜」という存在を特別に思っていたかが判る作品集。

城昌幸の「人花」と新美南吉の「花をうめる」がよかった。
安吾の「桜の森の満開の下」と梶井基次郎の「桜の樹の下には」は初めてちゃんと読んだ。
「桜の森の~」のほうが分かりやすくて好きだな。

「桜の森の満開の下」というと今は解散してしまった劇団「夢の遊眠社」の舞台を思い出す。
’89年に初演、'92年に再演された舞台の華やかさと笑いとそして同時に哀しみに満ちた舞台の美しさを今でも覚えている。
再演のときの舞台の床にライトで桜の花の形がゆらゆら揺れている演出が素敵だった。
(このときは同じ舞台を3回見た。で、感動して「ずっと遊眠社についていきます!」と思った直後の解散発表…がっくりしたw)

<収録作品>
菅浩江「桜湯道成寺」 / 五代ゆう「阿弥陀仏よや、をいをい」 / 森真沙子「花や今宵の…」 / 速瀬れい「約束の日」 / 菊地秀行「ある武士(もののふ)の死」 / 竹河聖「闇桜」 / 井上雅彦「花十夜」 / 城昌幸「人花」 / 新美南吉「花をうめる」 / 森奈津子「シロツメクサ、アカツメクサ」 / 吉行淳之介「花畠」 / 藤田雅矢「舞花」 / 坂口安吾「桜の森の満開の下」 / 倉橋由美子「花の下」 / 萩原朔太郎「春の実体」「憂鬱なる花見」 / 赤江瀑「春泥歌」 / 石川淳「山桜」 / 小泉八雲「十六桜」 / 梶井基次郎「桜の樹の下には」

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2013/04/17

小林頼子、朽木ゆり子/謎解きフェルメール

謎解き フェルメール (とんぼの本)

フェルメールの作品と画家本人についての考察、さらに有名な贋作事件や盗難事件の背景に迫る美術本。

簡潔だけど丁寧な解説でわかり易かった。
作品とフェルメールの生涯の解説を担当する小林氏の文体はちょっと砕けてて大学教授が書いた解説文というより、ブログに書いてある文章みたいな感じ。
最初ちょっと違和感があったけど、リズムがある文章だったのでだんだん読みやすくなった。
フェルメールの作品を解説するときに必ず触れられる「カメラ・オブスキュラを使用していた」という説に対して否定的な立場らしくその根拠についても簡単に触れられていて興味深かった。

贋作および盗難事件の解説はジャーナリストの朽木氏の担当。
有名なメーレヘンによる贋作事件について、深く掘り下げてはいないけれど全体像が分かりやすい内容で面白かった。
意外だったのは政治的な目的による絵画窃盗(盗んだ絵画を政治的な取引の材料にする)は効果が殆どない、という部分。
世界的に有名な絵画で、その価値が何千万、何億というものであれば何らかの効果があるのかと思っていたけれど、(少なくともここに書かれている限りでは)絵画の価値と政治的な価値は別物であるらしい。

名画が損なわれてはならないものであることは確かだが、芸術品は人間が蓄積してきた知識を体現するものであり、特定の作品が破壊されても知識の総体に影響がないことを私たちはよく知っている。さらに、政治的大義と芸術品を天秤にかける方法自体が矛盾しているという考え方も社会には行き渡っている。その意味で、政治的目的達成手段としての絵画窃盗には、最初から勝ち目はない。(p105より)

ただ、それにしてもラスボロー・ハウスの警備体制はどうなっているのか、と思ったのは私だけではないはずw
この本に書かれているだけでも4回も盗難にあっているらしい。(すべてが政治目的ではないらしいけど)
美術館ではなく個人の邸宅らしいけど、そんなに貴重な美術品を所有しているならもうちょっと警備体制をどうにかして欲しいなあ。

紹介されている内容に合わせた図版が豊富で更にすべてカラーなのが好印象。
また、フェルメールが生涯を送ったデルフトの写真もたくさん掲載されていて楽しめた。
巻末にはフェルメールの作品が見られる世界の美術館一覧と年譜付き。

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2013/04/11

坂木司/大きな音が聞こえるか

大きな音が聞こえるか

恵まれた環境に育ち、自分が見えなくてこのまま腐っていきそうだった高校生の泳がアマゾン川にサーフィンをしにいく話。

いい話だし面白かった…けど、長かった。
すごく丁寧に書いてあるなあとは思ったけど、それが却って勢いを消してしまってるような気がした。

旅費を貯めるためにバイトをして、現地の言葉を覚えて、サーフィンをきちんと習って、親を説得して…あたりの前半の展開は好き。
でも後半は「この話、どこまで行っちゃうのかなあ」という印象のほうが強かった。
ちょっと広げすぎだったような気がする。
と言っても、そこからちゃんときれいにエンドマークが付いているあたりはさすが。

あとサーフィンやブラジル、アマゾン、ポロロッカについての丁寧な描写は素晴らしかった。
本当に見に行ったりしたのかしら。
まさか実際に乗ったりはしていない…よね?(^^;

これを読んで一番感じたのは「運も実力のうち」ってことかな。
なんだかんだ言って恵まれ過ぎでしょ。
あんなにちゃんと自分のことを考えてくれる大人に囲まれた子どもってそんなにいないよ。(大人にだっていないよ)
そこに甘んじず、さらに高みを目指して行くとき、泳はどんな大人になるんだろうな。
あと、二階堂の今後も気になる。
(キャラ的には二階堂のが好きかも)
坂木さんのことだから二階堂バージョンも書いてくれるんじゃないかとちょっと期待。

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2013/04/03

ダ・ヴィンチ編集部・編/嘘つき。ー優しい嘘十話

嘘つき。―やさしい嘘十話 (ダ・ヴィンチ ブックス)

10人の作家による「誰かを大切に思うあまりについてしまった嘘」をテーマにした短編アンソロジー。

全体的に恋愛要素が多かったせいかそんなに内容に変化はなかったけど、どれもちょっと物悲しくて柔らかい印象の物語ばかりで読みやすく読後感もよかった。

好きだったのは西加奈子さん、佐藤真由美さん、中島たい子さんの作品。
特に佐藤さん「ダイヤモンドリリー」はラストがとてもよかった。
みなとくんがこれからどんな男の子に成長するのか楽しみ。

三崎亜紀さんの作品は他のとは全く違う視点で印象的だった。

<収録作品>
西加奈子「おはよう」 / 豊島ミホ「この世のすべての不幸から」 / 竹内真「フライ・ミー・トゥー・ザ・ムーン」 / 光原百合「木漏れ陽色の酒」 / 佐藤真由美「ダイヤモンドリリー」 / 三崎亜記「あの空の向こうに」 / 中島たい子「やさしい本音」 / 中上紀「象の回廊」 / 井上荒野「きっとね。」 / 華恵「やさしいうそ」

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2013/04/01

大倉崇裕/小鳥を愛した容疑者

小鳥を愛した容疑者

勤務中に負った頭の大怪我が元で捜査一課から外れ長期リハビリ中の須藤警部補と、その部下で動物全般に異常なほどの愛情と知識を持つ薄(うすき)巡査。
犯罪の被害者あるいは容疑者によりペットとして飼われていた動物を人道的立場から保護するという役目をおった2人が、部屋に残された動物たちの様子から事件の真相を導き出す連作ミステリー。

『ペットのアンソロジー』に載ってた2人が活躍する短編「最も賢い鳥」が面白かったので本編も読んでみた。
やっぱり面白かった(^^)

様々な動物の生態や飼育方法に詳しく事件の勘も鋭いけど日本語力がイマイチで須藤との会話が時々噛み合わない薄のキャラが面白い。
特に2話目で須藤が薄に事件の詳細を説明する場面にあった

「時間がないので、簡単に済ませるぞ。かいつまんで言うとだな……」
「カイツマン?」

という会話には思わず吹き出しちゃった(笑) 
方向的には福家に似てる感じかな。
何だかんだ言いつつ薄の働きを認めて意見を尊重する須藤とのコンビもいい。

事件の情報の出し方や事件と動物の関わらせ方も分かりやすくて好ましかった。
これからも続けて行って欲しいシリーズだな。

ただ読んでいて疑問だったのは、ペットの中には動物を餌として食べる種類のものもいたんだけど、ペットとその餌になる動物との区分けは彼女の中ではどうなっているんだろう、ということ。
特定の動物だけを好きな人なら「餌は餌だ」と思えそうだけど、彼女のようにどの動物にも愛情を注いでしまうのだとしたら切り分けるのが難しいように思えてしまうのだけど。
まあ、そこは本筋とは関係ないし、そこを追求し始めると話が面倒になるからスルーされているんだろうけど。
でもちょっと訊いてみたいな。

<収録作品>
小鳥を愛した容疑者 / ヘビを愛した容疑者 / カメを愛した容疑者 / フクロウを愛した容疑者

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