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2013年5月の6件の記事

2013/05/28

大山淳子/猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち

猫弁 天才百瀬とやっかいな依頼人たち (講談社文庫)

有名な靴メーカーの会長の葬儀の最中、会長の遺体を乗せた宮型霊柩車が何者かによって乗っ取られた。
息子である社長のもとに犯人から「千五百四十万円」の身代金要求の電話が入る。
事件の解決を依頼された「猫弁」こと百瀬太郎の活躍を描いた作品。

う~ん、全体的な話は面白いんだけど、ストーリーも人物設定も凝りすぎ。
いちいちいろんなオマケがくっついてくるので本質が上手く見えてこない感じ。

物語はともかく人物設定はもっと単純でも良かったんじゃないのかな。
でもそのとっちらかった状況をあの枚数できっちりまとめ上げてあるのはすごい。

この作品は「ドラマ原作大賞」受賞作とのこと。
途中で「なんだか台本読んでるみたい…」と思った部分が時々あったんだけどそのせいだったのかな。
確かにドラマだったらこのくらいクドい人物設定でも大丈夫なのかも。

ドラマでは会長は渡辺美佐子さんだったのね!見ればよかったな。

しかし、亜子がやったことって契約関係に必要な信頼を裏切ってるわけだから(そのせいで百瀬は金銭的な負担を強いられたわけで)場合によっては訴えられても仕方ない行為なんじゃないの?と思う。
まるく収まってるからいいようなものの、ね。

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2013/05/14

近藤史恵/キアズマ

キアズマ

舞台は大学の自転車部。
ふと知り合った自転車競技にのめり込みつつも自分の中の迷いや過去の思い出に囚われて先に進むことをためらう主人公の正樹と、正樹と似たような経験を抱えつつもだからこそ先に進もうとする自転車部のエース・櫻井の姿を描く青春小説。

赤城さんがチラッとだけ出てくるのでサンクチュアリ・シリーズの1作なのねと思うけど、それ以外は別の話。
でも、プロのレーシングチームとは違った面白さがあった。

何よりスピード感のある文章の気持ちよさ。読んでいるうちにフワリと浮き上がるような感覚だった。

登場人物では主人公の正樹や櫻井よりも二人を静かに見守る裏方的な隈田や村上のほうが好きだったかも。
脇がいい作品は安心して読める気がする。

ちなみに今回はミステリ要素は無し。
でも、そんなストレートさが私は好きだな。

正樹や櫻井がチカと戦う日は来るのかな。
今後に期待。

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2013/05/11

中山七里/いつまでもショパン

いつまでもショパン (『このミス』大賞シリーズ)

動乱のポーランドで開催されたショパン・コンクールに岬が出場する話。

冒頭からずっと音楽の話が続くので、途中で「あれ?これってミステリ要素はないのかな?」と思ってしまったくらい。
実際、前の2作と比べると岬が実際に推理するシーンなどは少なめ。

でも、じゃあつまらなかったかというとまったくそんなことはなく、とても面白くそして感動的な物語だった。
以前の作品でも魅力的だった中山さんの「音楽を表現する描写」が更に研ぎ澄まされ、美しく力強い文章でコンクールの出場者たちが奏でるショパンの音色を表現していく。
まるで本当にそこに音楽が流れていくかのような表現に圧倒された。

岬の最後の演奏のエピソードはちょっとやりすぎとも思えるけど、それだけの力が音楽にはあり、人間はそれを受け止める心を持っているという希いと祈りの物語だったような気がする。

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2013/05/09

小路幸也/フロム・ミー・トゥ・ユー 東京バンドワゴン(8)

フロム・ミー・トゥ・ユー (8) (東京バンドワゴン)

春のお楽しみ、『東京バンドワゴン』の新刊。

今回はいつもの季節ごとの4話のパターンではなく、それぞれ主人公(語り手)を変えた11の小さな物語。
ゆっくり丁寧に楽しもうと思っていたのに、結局1日で読んでしまった(^^;

一つ一つの物語が短いので正直物足りない部分もあったけど、物語全体に流れる優しさや真っ直ぐな気持ちは相変わらずで清々しい読後感。

青と堀田家、紺と亜美、青とすずみ、そして我南人と秋実、藤島と東京バンドワゴン(堀田家)など、たくさんの「はじめまして」の物語が綴られていて、「ああ、ここから新しい歴史が始まっていったのね」という感慨を持ちながら読んだ。
なかでも我南人と秋実の話は印象的。
他の物語と比べて短かったのは、このあときちんとした長い話を書く前振りかな。
(と勝手に期待している)

紺とサチさんの会話で始まって、同じ2人の会話で終わる構成も見事だった。

でも、いつもの「去年よりちょっとずつ成長したみんな」も見たかったな。
特に確か今年で4つになるはずの鈴花ちゃんとかんなちゃんの出番が殆どなかったのが残念。
一番かわいい時期なのに~!(;_;)

<収録作品>
紺に交われば青くなる / 散歩進んで意気上がる / 忘れじの其の面影かな / 愛の花咲くこともある / 縁もたけなわ味なもの / 野良猫ロックンロール / 会うは同居の始めかな / 研人とメリーの愛の歌 / 言わぬも花の娘ごころ / 包丁いっぽん相身互い / 忘れものはなんですか

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2013/05/08

東野圭吾/プラチナデータ

プラチナデータ (幻冬舎文庫)

舞台は少しだけ先の時代。
犯人の遺留品から検出されるDNA解析によって犯人の身体的特徴や持病、果ては個人の特定までが可能になるシステムが開発され秘密裏に警察内部で運用が開始され驚異的な効果をあげていた。
ただ、そのシステムをもってしても遺留品があるにも関わらず犯人が特定出来ない事件はあった。
警視庁 捜査一課の刑事である浅間はその一つである「NF13」のケースを追っていた。
そんな中、新世紀大学病院のVIPルームで殺人事件が起きる。
被害者はDNA解析システムを開発した天才数学者である少女とその兄だった。
現場に残された毛髪を解析した結果、システムから吐き出された犯人のモンタージュはシステムの管理者である神楽の顔にそっくりだった。
見に覚えのない神楽は真実を突き止めるために、その場から姿を隠すが…。

読みやすかったけど、内容的には今ひとつな感じ。
もっとギリギリの逃走劇なのかと思ってたらそうでもないし、DNAシステムやモーグル、プラチナデータの意味や謎も思ったほどでも…という印象だった。
あと、結末もあまりスッキリしなかった。

何より「プラチナデータ」の正体がああいったものだったことにガッカリした。
言葉自体の響きが綺麗だし、ましてタイトルに使うならプラスの要素を持つものにして欲しかった。
「モーグル」と逆のほうがよかったのに…。
まあ、この話では他の部分でもネーミングセンスがかなり「?」だけど。
(例えば「暮礼路(ボレロ)市」とか「スズラン」とか(^^;)

登場人物では警備員の富山さんと浅間の相棒の戸倉のキャラは好きだった。(思いっきり脇だけどw)

いろんな情報が入っていたにしては読みやすかったけど、その分全体が薄くなってしまったような気がする。
もうちょっとポイントを絞って濃厚な話にしてもよかったんじゃないのかな。

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2013/05/05

保科昌彦/名探偵になりたくて 若槻調査事務所の事件ファイル

名探偵になりたくて (若槻調査事務所の事件ファイル) (ミステリ・フロンティア)

「変な男に追われている」と突然事務所を訪ねてきた美女を自宅まで送り届けることになった向坂は、自宅の玄関前で何者かに襲われて気を失ってしまう。
病院で目を覚ました向坂にもたらされたのは依頼人が殺されたという知らせだった。

先日読んだ『ウィズ・ユー』の続編。
今回の主人公は事務所の若手・向坂。
探偵には向いていないし、本当にやりたいことは探偵ではない向坂が命を掛けて事件解決に奔走する話。

暴力団と中国マフィアの三つ巴の抗争や、依頼人と被害者の別人説など凝った作りの話。
人がいっぱい出てきたわりには物語の展開はスムーズで読みやすかった。

でも、調査事務所ってホントにこんな危険なことやってるのかな。
ヘタすれば死んでたかもしれないのに、呑気すぎ。
そりゃあ、恋人に「もうあなたにはついていけないから別れましょう」って言われるよ(^^;
あと、警察から需要参考人と目されている当人が、被害者遺族から依頼を受けてその事件を調べる…なんてこと本当にあるのかな?

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