篠田真由美/ホテル・メランコリア
かつて横浜にあった小さなホテル。
少女時代に父親とそこをよく利用したという老婦人に依頼された人物が、ホテルに関わりのある人物を探して話を聞く、という形式の短編集。
その名の通り、幻想的で現実からちょっと離れた物語が心地よかった。
ホラーというほど怖い話はなく、そんな「気配」だけという感じ。
怖いもの苦手な私にはこのくらいが丁度よかった。
冒頭の老婦人による独白形式の「赤い靴を履いて」が印象的。
彼女の依頼を受けて物語がまわり、また最後はこの老婦人のもとに戻ってくるのだろうなという予想は当たっていたけれど内容は期待していたのとはちょっと違っていたのが残念。
「赤い靴を~」で語られなかった彼女の思い出や後悔、葛藤などが昇華された結末が読んでみたかった。
それでも表紙の装丁、普通の本よりもしっかりした質感のページ、物語の随所に1ページを割いて差し込まれるモノクロの写真も含め、きちんと計算された素敵な作品だった。
<収録作品>
赤い靴を履いて / 憂鬱という名のホテル / 黄昏に捧ぐ / 影に微笑むカッサンドラ / ビロードの睡り、紫の夢 / 百合、ゆらり /あなたのためのスペシャリテ / 時過ぎゆくとも(アズ タイム ゴーズ バイ)
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