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2013年7月の8件の記事

2013/07/28

朝松健/てれすこ 大江戸妖怪事典

てれすこ 大江戸妖怪事典 (PHP文芸文庫)

岡っ引きの娘で霊感の強い美江とその幼馴染で蘭医の息子・菊之助が稲毛外羅と名乗る怪しい蘭学者とともに『大江戸妖怪辞典』という書物を作るため妖怪退治をする話。

面白かった♪
『大江戸妖怪辞典』を作るために実際にその妖怪を捕まえて本に閉じ込めるという設定、捕まえるために外羅が考えだす妖怪を吸い取る妖気掃除機や、離れた場所から司令が出せる妖話器などの道具、外羅を目の敵にする悪路王の手下たちなど笑える要素満載の怪談話。
くだらないな~と思う部分も多少あったし全然怖くはないけど、テンポのよい文章でサクサク楽しく読める作品。

朝松さんの作品は今までシリアスなものしか読んでなかったので、こんな作品も書くんだと新鮮な驚きだった。
続編もぜひ読みたい。

<収録作品>
浅草狸の藪知らず-お咲とガイラ先生- / 影がまた降る-つるべおとし- / 三人の通り神-ぶこあたり-

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2013/07/24

大山誠一郎/密室蒐集家

密室蒐集家 (ミステリー・リーグ)

第13回本格ミステリ大賞(本格ミステリ作家クラブ主催)受賞作。

密室事件が起こるとどこからともなく現れ事件を解決する謎の「密室蒐集家」…という設定は面白かったけど、中身の方は正直今ひとつ。

どれも、それこそ「密室の謎を解くための密室」という感じ。
「いくらなんでもそんな偶然ないでしょう」という設定もそうだし、あと情景描写や心理描写があまりないので感情移入出来る部分がない。
しかも説明が判りにくくて読みにくかった。

もともとパズル的な推理小説が苦手な私には合わなかったということで。
謎解きを試しみたい人向きの作品かと。

<収録作品>
柳の園 / 少年と少女の密室 / 死者はなぜ落ちる / 理由ありの密室 / 佳也子の屋根に雪ふりつむ

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2013/07/21

高山由紀子/源氏物語 悲しみの皇子

源氏物語  悲しみの皇子

源氏物語+それを綴る紫式部と時の権力者・藤原道長の恋(?)の行方…という話。

前半はイマイチ文章が硬くてなかなか物語に入っていけなかった(特に「雨夜の品定め」のあたりがキツかった)けど、後半はけっこう面白く読めた。
夕顔のところの解釈が大胆(実は六条御息所の変装でした説)でビックリ。まあ、それはそれで面白いけど、そうなると(夕顔の子どもである)玉鬘はどうなるのよ、と思うんだけど。(この本では玉鬘の章には触れられていない)

光が物語世界から現実世界に出てきちゃうところや道長との関係は面白かった。
でもラストはちょっと中途半端だったかなあ。

この本、斗真くんが主役をやった「源氏物語 千年の謎」の原作だったのね。確かにいきなり安倍晴明が出てきちゃうような源氏関連の話はそうそうないよねw
(映画見た時、「紫式部と安倍晴明って時代がずれてるんじゃ?」と思ったら、原作では『実は死んだことになっていて…』という設定だった(^^;)
光が魔物になって現実世界に現れ式部を襲うときに守る存在が必要だったのかとは思うけど、それも含めいろいろ突っ込みすぎて全体的に中途半端になってしまった、という感じはあるかな。

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2013/07/18

太田忠司/目白台サイドキック 女神の手は白い

目白台サイドキック  女神の手は白い (角川文庫)

一人暮らしの女性が鍵の掛かった自室で絞殺され手首を切り落とされる、という事件が発生。
事件の直後犯人は逮捕され、そのまま拘置所内で自殺したはずだったが、その後同じ手口の犯行が連続して発生する。
捜査一課の新人刑事・無藤は刑事を辞めるつもりで自宅に引きこもっている先輩の刑事・南塚を、捜査に引っ張りだすために目白台にある彼の家を訪問する。
南塚こそ最初の事件を解決した「探偵刑事」だったのだ-。

長編ミステリー。

実は詩人になりたかったけど、探偵として優秀すぎるので無理やり警視庁にスカウトされて刑事になった、という主人公 南塚の設定が斬新。
他にも人物や舞台にはギャグっぽい設定が多いのに、事件についてはあくまでシリアスなのがアンバランスで面白かった。

ただ、南塚と一緒に捜査を担当することになる後輩の無藤はイマイチ。
神経質なわりに気が利かないし、「尊敬しています」とか言いながら南塚が自分の予想の斜め上を行く言動をするとイライラしてるし。
もうちょっと素直な設定の人物像がよかったな。
あるいは男性じゃなく女性だったら同じ性格設定でもまた違ったかも。

南塚が居候している豪邸の家主である北小路の設定も、意外性がある(と言っても最初のほうで分かったけど)わりに今ひとつ物語の展開にうまく絡んでいないような気がした。
この物語にとってどんな立場なのかがきちんと説明されていない感じ。
もっと事件に積極的に関わってもいいのでは。

カバーイラストが『腕貫探偵』と同じ人だったせいかもしれないけど、読んでる間なんとなく西澤さんの作品のような気がしてしかたなかった(^^;
設定とか展開とかもちょっと似てたと思う。
(作家さんに「似てる」とか言うのは禁句かもしれないけど…)

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2013/07/16

大倉崇裕/福家警部補の報告

福家警部補の報告 (創元クライム・クラブ)

シリーズ3作目。

面白かった~!今まで読んだ中で一番よかった。

今までは殺人捜査の責任者らしからぬ福家の外見に気を取られているうちに気がついたら事件が解決してましたって部分があったけど、今回は福家と犯人の緊迫したやり取りが多く読み応えがあった。
福家のキャラも今までのとぼけた感じはそのままに、そこに凄みが加わった感じ。

どんな相手を前にしても怯まず、先入観を持たず自分の勘を信じてマイペースで突き進む福家がとても素敵だった。
少女マンガやラジコンなど幅広い分野に専門家も驚く知識と関心を持ち、同時に暴力団の幹部に気を遣われるほどの影響力があり徹夜2日くらいじゃビクともしない体力を持つ福家…普段どんな生活してるんだw
ますます謎は深まるばかり。

今回は『小鳥を愛した容疑者』の須藤さんが登場。
須藤さんも元々は捜査一課にいたという設定なので、福家とは元同僚(上司と部下?)なのね。
そのうち薄巡査も出てきて合同捜査、なんて展開も期待したい。

それ以上に今回の最終話の終わり方が気になる。早く続きを~っ!w

<収録作品>
禁断の筋書(プロット) / 少女の沈黙 / 女神の微笑(ほほえみ)

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2013/07/13

宮部みゆき/桜ほうさら

桜ほうさら

偽文書により身に覚えのない罪に問われ切腹して果てた父親の無実を証明するため、藩の江戸留守居役・坂崎によって江戸に呼び寄せられた笙之介。
貧乏長屋に住み、貸本屋を営む村田屋の代書屋の仕事を請け負いつつ父を陥れた犯人の行方を探る笙之介の江戸での暮らしを描いた連作短編集。

相変わらず文章が丁寧で上手い。
人物の描き分けも見事。

物語も事件の謎が見えてくるまでは面白く読んだけど、最後の展開は今ひとつ登場人物の気持ちに寄り添うことが出来ず取り残されてしまい残念だった。
何故かというと笙之介の母親の魅力がまったく判らなかったから。
最後に東谷(坂崎)が何故それほど彼女を庇うのかというその根本のところがさっぱり理解できなかった。
同様に押込御免郎と治兵衛の関係も難しいけど、あれは治兵衛によって関係性が詳しく語られていたからまだわかり易かった。
東谷と笙之介の母親の間にどんなやり取りがあったのか、もう少し回想という形ででも表現されていたらまた印象が変わったんじゃないかな。

メインの話より三八野(みやの)藩の長堀さんの話が好きだったな。
長堀の実直で真摯な人柄がとても気持ちよかった。
この話だけは悪人が登場しなかったせいもあるかも。
旅立ちの場面は泣けた。

「長堀さん、どうぞお元気で」
「古橋殿もな。貴殿がこの江戸で歩む道が、平らかに広くこの世に通じるものであることを、この老体、奥州の鄙の片隅にて祈念しておりますぞ」(p298)

<収録作品>
富勘長屋 / 三八野愛郷録 / 拐かし / 桜ほうさら

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三浦しをん・あさのあつこ・近藤史恵/シティ・マラソンズ

シティ・マラソンズ (文春文庫)

3人の女性作家による3つの街のシティマラソンをテーマにした短編集。

それぞれ60ページほどの短編なのであまり大きな物語はないけれどリズムがあって読みやすかったし、どの作品もラストが明るく前向きなのがよかった。

あさのさんと近藤さんの作品はマラソン自体よりもそこに至るまでの主人公の葛藤が主題。
これはこれで考えさせられたけど、読み物としてはやっぱりこの少ない枚数でニューヨークマラソンを走りきった三浦さんの作品が楽しかった。
走るのは苦手だし大嫌いな自分もうっかり「走ってみようかな」という気分になる。
危険だw

<収録作品>
三浦しをん「純白のライン」 / あさのあつこ「フィニッシュ・ゲートから」 / 近藤史恵「金色の風」

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小野不由美/丕緒(ひしょ)の鳥

丕緒の鳥 十二国記 (新潮文庫)

待ちに待った「十二国記」シリーズの最新短編集。

4つの短編にはどれも王や麒麟たちは(直接的には)登場しない。
主役となるのは雲の上の存在である彼らに声を届けることも出来ず国の行方に翻弄されて、それでもそこで生きるしかない下級官僚や市井の人々。

いずれの時代背景も国が乱れ弱体化し貧困や犯罪が蔓延、民にとっては暮らしにくい設定ばかりだったため重く悲しい描写が多かったけれど、最後に見える幽かだけれど確実な光のあるラストに救われた。

どれもよかったけど特に「青条の蘭」は印象的。
物語に華やかな部分はまったくないし、動きもそんなに多くないのにどんどん惹きつけられて最後は涙が止まらなかった。

物語的には非常に地味だと思う。
(あくまで私の場合だけど)これ単発だったら読まなかったかも、というタイプの作品。
なのにこんなに深く感動してしまうのは、その周囲にあるものを私達が知っているから。
すべての現象は単体で存在するのではなく、全部繋がっているってことなんだろうな。
12年ぶりの新作でこんな作品を出してくる作家の自信と矜持、そしてそれをきちんと受け止めて評価する読者の見識がこの作品を名作たらしめているのだと思う。

次に来るという長編が本当に待ち遠しい。

<収録作品>
丕緒の鳥 / 落照の獄 / 青条の蘭 / 風信

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