小野不由美/丕緒(ひしょ)の鳥
待ちに待った「十二国記」シリーズの最新短編集。
4つの短編にはどれも王や麒麟たちは(直接的には)登場しない。
主役となるのは雲の上の存在である彼らに声を届けることも出来ず国の行方に翻弄されて、それでもそこで生きるしかない下級官僚や市井の人々。
いずれの時代背景も国が乱れ弱体化し貧困や犯罪が蔓延、民にとっては暮らしにくい設定ばかりだったため重く悲しい描写が多かったけれど、最後に見える幽かだけれど確実な光のあるラストに救われた。
どれもよかったけど特に「青条の蘭」は印象的。
物語に華やかな部分はまったくないし、動きもそんなに多くないのにどんどん惹きつけられて最後は涙が止まらなかった。
物語的には非常に地味だと思う。
(あくまで私の場合だけど)これ単発だったら読まなかったかも、というタイプの作品。
なのにこんなに深く感動してしまうのは、その周囲にあるものを私達が知っているから。
すべての現象は単体で存在するのではなく、全部繋がっているってことなんだろうな。
12年ぶりの新作でこんな作品を出してくる作家の自信と矜持、そしてそれをきちんと受け止めて評価する読者の見識がこの作品を名作たらしめているのだと思う。
次に来るという長編が本当に待ち遠しい。
<収録作品>
丕緒の鳥 / 落照の獄 / 青条の蘭 / 風信
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