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2013年9月の6件の記事

2013/09/25

高橋克彦/かげゑ歌麿

かげゑ歌麿

シリーズ最新刊。
一番最初の作品に出たきり姿を消していた歌麿がここに来て久々の登場。
歌麿がかつて愛した女、そしてその女が遺した娘をめぐる連作短編3本。

主役の歌麿はもちろん、歌麿がいない間シリーズを守っていた春朗、蘭陽、源内らも大活躍、さらに仙波の旦那やおこう、左門も登場の賑やかな作品。(左門にはもっと活躍して欲しかったな)

それぞれの登場人物が自分の役割をきっちり演じきり、全体的に緩急のバランスがとれた、非常にいい作品だったと思う。

歌麿のゆうへの想い、そして最後に選んだ結末にも納得の1冊。
これからもシリーズが続いていって欲しいなあ。

『命を懸けてもいいと思えるものに出会って、それこそ死ぬほどに取り組めりゃ、たとえ中途であろうと悔いはねぇ』(p331)

<収録作品>
さやゑ歌麿 / かげゑ歌麿 / 判じゑ歌麿

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2013/09/19

谷津矢車/洛中洛外画狂伝 狩野永徳

洛中洛外画狂伝: 狩野永徳

安土桃山時代の天才絵師・狩野永徳の青春時代を描いた長編歴史小説。

残念ながら文体が合わなくて読みづらかった。
テーマとしては面白いし冒頭の源四郎(永徳)が信長に謁見するシーンは外連味があって「これは!」と思ったんだけどなあ。
それ以降はその冒頭の印象を超えることなく読み終わってしまった、という感じ。

一番気になったのは文章が軽すぎるということ。
私もその時代のことに詳しいわけでも何でもないし時代考証が出来るわけではない。
また、普通の歴史小説は年代とその時代に起こったことが物語に関係なく延々と書かれていることが多く、そうした記述には飽きてしまうことが多いのも事実。
でも、やっぱり「歴史」を題材とした物語を書くのであれば、その当時の言葉とか風習とかもうちょっとそれっぽい感じにするべきだと思うんだけど。
あと、そうした考証以外の書き方にしても「こういうシーンはこう書く」というパターンに沿って書いてあるような記述が目についたり、言葉の意味とか使い方が間違ってる部分も多かったように思う。
あと、あれだけ家族の話を書いたのに最後に家族が出てこないのも違和感があった。

そんなことが1つ気になるとあれもこれも気になってきてしまい、あまり物語に入り込むことなく終わってしまって残念。
物語に勢いはあると思うので、もうちょっと短い作品だったらよかったかも…。

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2013/09/15

あさのあつこ/闇医者おゑん 秘録帖

闇医者おゑん秘録帖

望まない妊娠をした女の子どもを人知れず流すことを生業にする闇医者・おゑんの活躍を描く連作短編集。
面白かった。
異国人の医師を祖父に持ち、その父から受け継いだ医術を武器に女一人で闇医者として生きるおゑん。
その特異な生い立ちから生まれたおゑんの優しさと勁さ、度量の広さがかっこいい。

医者としての技量はもちろん、自分を必要とする傷ついた女達の生きる力を掬い上げるおゑんの描き方が印象的。
更に最後にその奥にあるおゑんの特異な生い立ち、経験を最後に長い物語として描き切ったのがとてもよかった。
それ以外の2編も合わせ、3つの物語すべて読み応えあり。
おゑんと周囲の人物(末音、お春、高麗屋)との関わり方も気持ちいい。シリーズになったら嬉しいな。

<収録作品>
春の夢 / 空蝉の人 / 冬木立ち

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2013/09/14

福井栄一/春の駒 鷺澤家四季

春の駒 鷺澤家四季 (ミステリ・フロンティア)

祖母と両親、そして3人兄弟が同居する鷺沢家で起こる"日常の謎"を、次男の葉太郎が所属する将棋部の顧問の真琴先生が解決する連作ミステリー。

登場人物の設定とかはいかにも"日常の謎"系のほのぼのした感じでいいんだけど、いかんせん文章が説明的すぎる。
起こったことが丁寧に描いてあるけど、「説明」することに比重がかかりすぎて「物語」にはなっていなかったような気がする。
また、謎の本質がなかなか見えてこないので、書いてある内容の何が重要なのかが判断できず読んでいて疲れた。
探偵役の真琴先生もなんとなくイマイチ。

鷺澤家もそれぞれ個性的な性格、趣味を持った三世代6人家族のうえに犬、猫までいるのに「何かが足りない」という気持ちがずっと拭えなかったのは何故だろう。

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2013/09/10

原田マハ/楽園のカンヴァス

楽園のカンヴァス

世界的な絵画コレクターが所蔵する1枚の油絵。
それはニューヨーク近代美術館(MOMA)に収められたルソーの「夢」と酷似していた。
この絵の真贋をめぐり、若き研究者2人はコレクターの元で古い物語を紐解くことになる…。

絵画ミステリー。原田作品初読みだけど、噂に違わず面白かった。

絵画を扱う作品としても、ミステリーとしても丁寧で誠実に描かれていて物語に惹きこまれる。
そして更にその底に、モチーフとなった作品への著者本人の情熱が感じられてとても気持ちよく読めた。
最後に明かされるコレクターの正体の設定も印象的。
こんなふうに1枚の絵の中に物語を見る人がいるからこそ、その作品は芸術となるんだろうな。

17年の時を経て再会したティムと織江のその後の物語も読んでみたい。

ところで作品中に何度も出てくる『詩人に霊感を与えるミューズ』、どこかでみたことあるような?と思ったら先日行った「プーシキン美術館」展だった。
誰かの夢を描いたような印象的で可愛らしくて見ているとつい微笑んでしまいたいくなるような無邪気な絵だったなあ。
展覧会行く前に読んでおけばよかった。

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2013/09/04

小路幸也/ナモナキラクエン

ナモナキラクエン

突然父親を亡くしたそれぞれ母親が違う4人の兄妹が、小さいころ別れたきり会っていなかった母親に父の死を知らせに行く話。
「家族」と人と人の繋がりがゆったりと柔らかいタッチで描かれていて心に響く。
人はこんなにも誰かを大切に思うことが出来るものなのかな。

父親の志郎は物語の冒頭で死んでしまうので、子どもたちの思い出や会話の中にしか出てこないんだけど彼の生き方、想い、決意、そういったものがさり気なく、でも確実に伝わる描き方がとてもよかった。
彼に育てられた4人の子どもたちも、彼らの周辺の人物もみんな魅力的。

テーマはとても重いけど、悪人が誰一人として出てこない描き方が小路さんらしくてとてもよかった。
現実には「そうしよう」と思っても、そうならないことのほうが多分多いのだろうと思う。
ここに出てくるような家族が現実にいたら、きっともっと殺伐とした物語が描かれることだろう。

でも、だからこそここに描かれた「ラクエン」とそこに至る人々の思いを、私たちは信じたいと思う。
美しい山と水に囲まれた場所で暮らす4人の兄妹と彼らの愛する人、そして彼らを見守る人々がずっと笑顔でいられますように。

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