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2013年11月の6件の記事

2013/11/21

東野圭吾/疾風ロンド

疾風ロンド (実業之日本社文庫)

いきなり文庫シリーズ第2弾。
大学の研究室から盗み出され雪山のどこかに隠された生物兵器を探す話。

面白かった。
盗んで大学を脅迫した犯人がいきなり冒頭で事故死してしまうという意表をつく展開で、犯人との交渉は抜きで探しものに集中出来る設定にしてるところが上手い。

途中ちょっともたつくけど、後半はどんどんスピードアップ。
探しものを横取りしてスキーで逃げる便乗犯とそれを追いかける探しものチームの千晶がスノボで並走しながらのチャンバラ(想像が追いつかない!そんなこと出来るの?(^^;)シーンあたりからちょっとギャグっぽい要素も入ってきて、ラストのオチも笑えたw

主人公(?)の大学の研究員の栗林の情けなさも絶妙。
独善的な上司と良心の呵責の板挟みになってオロオロしてる感じがよかった。
あれで「オレが、オレが」のタイプだったらあんなにみんなで協力して、の話にはならなかったんだろうね。
でもその半面、肝心なところではけっこう上手く嘘を交えたり、息子のゲレンデでの恋にチャチャを入れたりするちゃっかりした部分もあって、その加減が上手いと思った。
最後に主導権を息子の秀人に握られた栗林が、まだまだ子どもだと思っていた秀人とどんな話をしてどんな結論を出すのか知りたいな。

全体的に軽めな内容なので「いつもと違ってガッカリ」的な感想もあるみたいだけど、私はその軽さも含めて楽しく読めた。
実際問題として考えれば、本当にこんな事件が起こってこんな対応が取られたらいくら担当者が「いい人」であっても許せないだろうけどね。
まあ、そこはエンタメ作品ということで。

前作(『白銀ジャック』)と同様スキー場での事件+登場人物も前作で出てきた根津と千晶中心の話なので最初のほうは「あれ?間違って買ったかな?」と思って表紙を見直してしまった(^^;
今後もこのシリーズはこの組み合わせパターンになっていくのかな?

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2013/11/15

畠中恵/こいわすれ

こいわすれ

シリーズ3作目。

4作目を先に読んでしまいこの巻で起きる不幸を事前に知っていたせいもあるかもしれないけど、なんともやりきれないスッキリしない読後感の作品だった。
こういう雰囲気の作品で主人公の身近な登場人物をああいう形で退場させる意味があるのかな。
しかも1人じゃなく2人なので、更にダメージが大きい。
せめて彼女が生きた証は残してもよかったのでは。

この件以外もなんだかやーな気持ちになる作品が多かった。
例えば「御身の名は」も謎は解けてるけど、気持ち的には全然スッキリしない。こんな話が読みたいわけじゃないんだけど。

内容が気に入らないと、文体にもいちいち引っ掛かってしまう。
もともと畠中さんのセリフの言い回しとか言葉の使い方とかあまりスムーズに読めなくていつも「ん?」となってしまうんだけど、今回は特にそれがひどかったな。
まあ、八つ当たりみたいなものなんだけど。

「おとこだて」で出てきた「夫婦が離婚する時、妻の持参金はどうするか」とかそれに町名主はどう介入するかなどの話は面白かった。
こういう話がもっと読みたい。

<収録作品>
おさかなばなし / お江戸の一番 / 御身の名は / おとこだて / 鬼神のお告げ / こいわすれ

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2013/11/11

小路幸也/東京バンドワゴン

東京バンドワゴン (1) (集英社文庫)

大好きなシリーズの1作目。
ドラマを見てたらまた読みたくなってしまったので再読。

アウトラインは覚えていたけど、細かいエピソードとかけっこう忘れてるのがあった。
特に一話目のマードックさんとお父さんの話は完全に記憶からとんでた。
あんなにいい話なのに何故忘れたんだろ(汗)

再読してみて、改めて素敵な作品であることを実感。
キャラクター、舞台設定、謎の内容や重さが絶妙なバランスで描かれていて安定感、安心感がある。
懐かしく、それでいて新鮮。

ずっと大切にしたい作品。
新刊が待ち遠しい。

そしてドラマの行方も楽しみ♪

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2013/11/10

近藤史恵/土蛍 猿若町捕物帳

土蛍 猿若町捕物帳

シリーズ5作目。

読みやすく、面白くて久々の一気読み。
相変わらずストーリー展開がスムーズで上手い。
特に1話目の「むじな菊」の事件の発端から広がり絡まり合っていた謎の糸が、あることをきっかけにスルスルと解けていく展開が見事だった。
最後の「はずれくじ」の伏線も上手かった。

小者の八十吉、歌舞伎役者の巴之丞、遊女の梅が枝らお馴染みの登場人物も過不足なく活躍するバランスの良い、いい作品だった。

千蔭が誰かを好きになる話はまだないのかな。
千蔭と梅が枝がお互いを意識しているのは分かるけど、さすがに遊女と同心が所帯を持つってわけにもいかないよねえ。
その辺りをどう決着付けるのかも興味あり。

でも、そこは曖昧にした今の関係のまま長く続いていくのもまたいいかな。
何にしろまた早く続きが読みたいシリーズ。

<収録作品>
むじな菊 / だんまり / 土蛍 / はずれくじ

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2013/11/09

畠中恵/ときぐすり

ときぐすり

『まんまこと』シリーズの4作目。

3作目の『こいわすれ』を思い切り飛ばして4作目に来てしまい、しかも最初それに気づかなかったので麻之介が置かれている状況がさっぱり理解できずにしばし悩む…という出だし。
そのせいなのか何となくどこかが引っかかったままの読了。

それぞれどの話も結末はいいんだけど、そこに来るまでの話の展開に微妙に無理があるような。
あと、麻之助や清十郎など主要な登場人物の外見がうまくイメージ出来ないのも大きい。
これは私の想像力不足もあるけど、例えば麻之助の喋り方が『しゃばけ』の若だんなと大差ないとのも原因だと思う。
大店の若だんなと町名主の息子という立場が似たような感じであるのは分かるけど、話す言葉ってこんなに似てるものかな。

でも、先に書いたように結末はじんわりする話が多くてとてもよかった。
特にあまり評判のよくない金貸しの丸三が吉五郎のために奔走する『ともすぎ』はとてもよかった。
貧乏から逃れるため幼い頃から脇目もふらず仕事だけに生きてきた丸三がこの歳になって初めて得た友との絆を思う気持ち。
そしてそれに応える麻之助たちの心遣い。
ちょっと泣けるいい結末だった。

<収録作品>
朝を覚えず / たからづくし / きんこんかん / すこたん / ともすぎ / ときぐすり

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2013/11/04

宮本徳蔵/敵役

敵役

短編集。

最初の2篇が江戸時代の絵師を主人公にしたものだったので全部江戸ものかと思ったら、3編目で急に現代物になったのでちょっとビックリ。

文章に少し古臭さを感じたけどどれも読みやすかったし、登場人物の心の深い部分を覗きこむような怖さもあって面白かった。

「子鬼図」「高麗屏風」「松」「花の窟」「敵役」の5編を収録。

5編の中では江戸中期の絵師・蕭白の生き様を描いた「子鬼図」がよかった。 あと、ホラー風味の「松」も印象的。

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