赤川次郎/鼠、危地に立つ
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江戸の町なかに夜ごと転がる骨だけを残してすべてなくなっている死体-「骨きり」と呼ばれ恐れられるその怪事件の犯人は封印を解かれた鬼だった。
その鬼を封じ込めるために一人の老人が若き絵師・石燕の元を訪れる…。
初めて読む作家さん。面白かった!
表紙に惹かれて何気なく買ったんだけど当たりだった♪
謎に包まれた生い立ちを持ち、色彩が見えない代わりに妖怪が視える石燕、その石燕の絵の腕を見込んで人間に仇なす妖怪の調伏を依頼してくるのは裕福な大店のご隠居然とした妖怪の棟梁・塗楽(ぬら)。
そして生まれながらに密教の理を見に宿し、妖怪も一刀の元に切って捨てる美貌の剣士・椿鏡花。
3人の噛み合っているようなそうでもないような会話がよかった。
物語はシリアスで深みがあってちょっと物哀しさも含んでいたりするんだけど、会話の中にはユーモアもあって楽しく読めた。
何より文章のリズムがすごくよかった。
読んでいて気持ちいい文章。会話もテンポがよく読みやすいしすんなり頭に入ってくる。
連作短編が4つ入っていたけど、最初の3編に比べて最後のは今ひとつ。
でもこの後の作品はこの4作目の登場人物が続けて出てきそうな雰囲気なのよね…(T_T)
出来れば最初の3作のように塗楽が持ち込んだ仕事に石燕が手を貸して、別口からやってきた鏡花とゴチャゴチャあったあとに最終的には協力して(?)相手を成敗する的な話が読みたいんだけどなあ。
<収録作品>
第一夜 骨きりの巻 / 第二夜 何処何処の巻 / 第三夜 蛇座頭の巻 / 第四夜 紫陽花幻想
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毒舌で人気の芸人がパーソナリティを務める深夜のラジオ番組あてに「番組が終わったら自殺する」という予告メールが届く。
差出人の本気を感じ取ったディレクターの安岡はなんとか思いとどまらせようと考えるが、そのために番組を使うことには周囲から反対され…という話。
番組が始まってからの中盤の展開はスピード感と次は何をするのかという期待感があって面白かったけど、全体的には今ひとつ。
問題のメールのどこに安岡が真実を感じたのか、という根本的な部分を共有出来なかったのが大きかったのかも。
終始「なんでそんなに一生懸命なのかな」という気持ちのほうが先にあった。
共感出来なかったのは私がこういうラジオ番組を殆ど聞かなかった人間だからかも。
多くの人が寝静まった夜中に流れてくるそういう番組の中で生まれる連帯感みたいなものを実感として感じた経験があれば違ったのかもしれない。
でも、今の状況ならラジオでこんなことやってたらあっという間にネットで広がって、ラジオ聞いたことない人でもワラワラ参加してきてそれこそ収集がつかなくなる可能性大だと思うけどな。
メールが出てくるのにネットが出てこないというのも違和感の一つだったのかも。
内容的には安岡と周囲の人間(上司、芸人、同僚、警察など)との会話で同じ話が何度も繰り返されるのもちょっと気になったし、自分のメールによってあれだけのことが起きたのにメールを出した本人からそのラジオについての感想が一言もなかったのにも違和感を持った。
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東京の治安維持のために作られた緊急推理解決院。
そこには事件の特徴によって細かく分類された科が設定され、その事件を解決するための名探偵師(ホームズ)と助師(ワトソン)が1日24時間365日事件解決に勤しんでいる。
そのEDSのある年のクリスマス・イブの1日を描いた作品。
一つの科を1人の作家が担当して書いていくんだけど、一話ごとに完結するんじゃなくて全部同時進行で進んでいろんな科の情報がランダムに出てくる構成が面白かった。
量的にはどれも短編なのでそんなに込み入った話ではなかったけど意外性があって飽きずに楽しく読めた。
複数の科が合体した動きなんてのもあればよかったのにな。
あとセリフでしか出てこなかったけど民俗学推理科の蓮丈那智推理師の話も是非読みたかった。
最近、「新世紀「謎」倶楽部」の作品て見なくなったけどもう活動していないのかしら。
これからもこういう実験的な作品を時々は出してくれたら嬉しいな。
院長室:石持浅海 / 怪奇推理科:加賀美雅之 / スポーツ推理科:黒田研二 / 外国人推理科:小森健太朗 / 歴史推理科:高田崇史 / 不可能推理科:柄刀一 / 動物推理科:鳥飼否宇 / 小児推理科:二階堂黎人 / 受付:二階堂黎人 / 女性推理科:松尾由美
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美容をテーマにした連作短編集。
はるか昔から人間が追求してきた「美」に対する意識が昇華した結果がどこに向かっていくのかを描いた作品。
近未来SFと太古の神話的な物語を結びつけての構成で「美」に対する人間の飽くなき要求の描写が深くしかも美しく描かれている。
それを具現化するのが自分が理想とする自分を手に入れるためのあらゆる手段を提供する会社「ビッキー」とその広告塔として美を体現する少女「リル」。
物語はリルを中心にして描かれているけれど、それよりも印象的だったのは自分をよりよく見せようとビッキーの門を叩く一般の女性たちが印象的だった。
それにしても「ホントにこんなことが出来るようになったら凄いな~」ってことがたくさん書いてあって普段メイクには殆ど関心のない私もドキドキしながら読んだ。もしかしたらそういう未来が本当に来るのかもね。
ただ殆どのケースが女性目線だったのが残念だったかな。
人類には女性だけではなく男性もいるわけだから、女性がそうなっていくときの男性側の心理や行動についてももっと言及して欲しかった。
ただ、身体が外的刺激に敏感になることで普段は感じないことを感じられるようになるというのは理解できるけど、それに「脳」はついていけるのかなあ。
脳は肌より繊細(あるいは脆弱)だと思うので、感覚が研ぎ澄まされて来たとしてもそれを受け入れる精神を鍛えるのは難しいんじゃないかと思うんだけど。
これ読んでて意識が進化しすぎて人間の体に収まりきらず精神として宇宙に行ってしまう『樹魔』を思い出した。
あ、あと出てくるものの名前がイマイチオシャレっぽくなかったのはわざとなのかな。
例えば「ビッキー」の母体となる商業施設の名前が「プリン」だったり、画期的な整形美容のネーミングが「はさみ撃ち作戦」だったり。
「ホントにその名前でいいんですか?」と思うようなのがけっこう多かったのが妙に印象的だった。
<収録作品>
流浪の民 / 閃光ビーチ / トーラスの中の異物 / シズル・ザ・リッパー / 星の香り / 求道に幸あれ / コントローロ / いまひとたびの春 / 天の誉れ / 化粧歴程
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連作ミステリー。
月に一度、旧知の男友達6人+男性ゲスト1人によって開催される『黒後家蜘蛛の会』。
そこで語られるゲストの悩みや不思議な事件を、メンバーと給仕のヘンリーが解決するシリーズ。
面白かった。
アシモフ氏の博覧強記ぶりが随所に出てきて、しかもそれが英語特有の表現や専門的な話も多いので正直話の半分くらいは「よく判りません」状態w
しかも、メンバーの名前と特徴がどうも一致しなくて最後まで覚えることが出来なかった。
それでも「面白かった」と思えるのが凄い。
謎解き役は給仕のヘンリー。
こういう役の人はわりと「正体不明」なまま存在することが多いような気がするけど、この作品では1話目「会心の笑い」の主人公としてヘンリーが出てくるところが意外。
そして、その結末も洒落てて思わずニヤリとさせられた。
他の作品もどれもよかったけど最後の「死角」が好きだったな。
ヘンリーだからこそ気づく犯人像…なるほど!のエンディングだった。
各作品の最後についているアシモフ本人のあとがきも楽しい。
翻訳ものを読むのは久しぶりだったけど、池 央耿氏の訳も読みやすかった。
<収録作品>
会心の笑い / 贋物(Phony)のPh / 実を言えば / 行け、小さき書物よ / 日曜の朝早く / 明白な要素 / 指し示す指 / 何国代表? / ブロードウェーの子守歌 / ヤンキー・ドゥードゥル都へ行く / 不思議な省略 / 死角
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古書を題材にした短編ミステリーアンソロジー。
執筆陣は松本清張、城昌幸、甲賀三郎、戸板康二、石沢英太郎、梶山季之、出久根達郎、早見裕二、都筑道夫、野呂邦暢、紀田順一郎、仁木悦子の各氏+江戸川乱歩による口絵。
古い作品から比較的新しい作品まで、また古書に対するアプローチも様々で楽しめた。
なかでも戸板さんの「はんにん」、梶山さんの「水無月十三么九(シーサンヤオチュー)」、早見さんの「終夜図書館」、都筑さんの「署名本が死につながる」がよかった。
早見さんの作品は初めて読んだけど、センテンスがすごく長くてビックリ。
出だしから19行が全部繋がっている文章、そのあともそういった長い文章が続くのでページにぎっしり活字が並んでいて圧巻。
これはこの作品だけの特別な書き方だったのかな。
最初はかなり読みにくかったけど内容の面白さもあってだんだん気にならなくなっていった。
ジュニア小説好きで自らも作家の一人である主人公と、終夜図書館という不思議な施設の館長によって語られるジュニア小説の歴史がマニアックで面白かったし「終夜図書館」という発想も斬新だった。
都筑さんの作品は探偵役の怪しいアメリカ人キリオンがよかった。
彼を主人公にした作品集があるらしいので今度探してみよう。
梶山さんのは以前読んだ『せどり男爵数奇譚』に入っていた「人間の皮膚で装丁した本を作る」話。
内容はグロいけど淡々と書いてあって読みやすかった。
<収録作品>
口絵:江戸川乱歩 / 二冊の同じ本:松本清張 / 怪奇製造人:城昌幸 / 焦げた聖書:甲賀三郎 / はんにん:戸板康二 / 献本:石沢英太郎 / 無月十三么九:梶山季之 / 神かくし:出久根達郎 / 終夜図書館:早見裕司 / 署名本が死につながる:都筑道夫 / 若い沙漠:野呂邦暢 / 展覧会の客:紀田順一郎 / 倉の中の実験:仁木悦子
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9人のミステリー作家による短篇集。
前の作家が次に書く作家に物語のテーマ(お題)を指定するという趣向のリレー小説。
執筆陣は北村薫、法月綸太郎、殊能将之、鳥飼否宇、麻耶雄嵩、竹本健治、貫井徳郎、歌野晶午、辻村深月の各氏。
リレー小説ではあるけれど、前の設定は使ったり使わなかったり、登場人物もそのまま出てきたり隠しキャラみたいになってたり。
それでもそれぞれどこかしらで濃く薄く関連した話になっている。
各編独立しているので単体でも楽しめるし、同時に全部まとめて一つの作品のようにも読める出来に仕上がっているのはさすが。
どれを読んでも楽しい作品集だった。
なかでも法月さんの「まよい猫」、竹本さんの「依存のお茶会」、辻村さんの「さくら日和」が好きだったな。
特に最後の辻村さんの作品は最初の北村さんと繋がりが明示されていたわけではないけど、他の作品と同じように繋がるように書いてあり、環が閉じるようなラストになっている気配りも素敵だった。
著者一人ひとりのあとがきが、本編とは逆の順番で書かれているのも洒落ていた。
フォロワーさんによると単行本では各編の文字のフォントがそれぞれ違っていたとのこと。
文庫ではそこまではされていなかったので、どの作品がどんなフォントで書かれていたのか気になる。
今度本屋さんで見かけたら覗いてみよう。
<収録作品>
「くしゅん」北村薫 / 「まよい猫」法月綸太郎 / 「キラキラコウモリ」殊能将之 / 「ブラックジョーク」鳥飼否宇 / 「バッド・テイスト」麻耶雄嵩 / 「依存のお茶会」竹本健治 / 「帳尻」貫井徳郎 / 「母ちゃん、おれだよ、おれおれ」歌野晶午 / 「さくら日和」辻村深月
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中学の時のある事件がきっかけで大好きな野球から遠ざかっていた雄作が親友の一良(いちろう)の誘いで高校の野球部にお試し入部する。
そこは雄作が想像していた野球部とはまったく違う場所だった-。
面白かった!
軽やかで爽やかで気持ちのいい読後感。
少年の野球ものだけどあの『バッテリー』のような悲壮感はまったくない。
もちろんこの作品の少年たちも悩んだり迷ったり落ち込んだりはするけど、それでもみんな明るく前向き。
好きなことを、好きな仲間と楽しんでやってる生徒たちとそれを見守る監督がいい。
こういうメソッドが実際問題として効果的かどうかは判らないけど、物語として心に響くものがあった。
勇作が「一家揃って温泉好き」という設定も楽しかった。
勇作が現在の心境をモノローグする部分が随所にあるんだけど、それがすべて「温泉」での例えになっているので野球の話なのに3分の1くらいは温泉薀蓄が書いてある感じだったw
勇作以外の選手もみんなひと癖もふた癖もある個性的な設定なので、それぞれを主役にした作品も読んでみたいな。
(特にいくら活躍してもみんなの印象に残らない前田さんの日常生活が知りたいw)
ところでこの作品、読んでて「これって『もしドラ』の(恐ろしくよく出来た)パロディなんじゃ…」とチラリと思ったりしたのは私の考えすぎでしょうか(^^;
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