菅浩江/誰に見しょとて
美容をテーマにした連作短編集。
はるか昔から人間が追求してきた「美」に対する意識が昇華した結果がどこに向かっていくのかを描いた作品。
近未来SFと太古の神話的な物語を結びつけての構成で「美」に対する人間の飽くなき要求の描写が深くしかも美しく描かれている。
それを具現化するのが自分が理想とする自分を手に入れるためのあらゆる手段を提供する会社「ビッキー」とその広告塔として美を体現する少女「リル」。
物語はリルを中心にして描かれているけれど、それよりも印象的だったのは自分をよりよく見せようとビッキーの門を叩く一般の女性たちが印象的だった。
それにしても「ホントにこんなことが出来るようになったら凄いな~」ってことがたくさん書いてあって普段メイクには殆ど関心のない私もドキドキしながら読んだ。もしかしたらそういう未来が本当に来るのかもね。
ただ殆どのケースが女性目線だったのが残念だったかな。
人類には女性だけではなく男性もいるわけだから、女性がそうなっていくときの男性側の心理や行動についてももっと言及して欲しかった。
ただ、身体が外的刺激に敏感になることで普段は感じないことを感じられるようになるというのは理解できるけど、それに「脳」はついていけるのかなあ。
脳は肌より繊細(あるいは脆弱)だと思うので、感覚が研ぎ澄まされて来たとしてもそれを受け入れる精神を鍛えるのは難しいんじゃないかと思うんだけど。
これ読んでて意識が進化しすぎて人間の体に収まりきらず精神として宇宙に行ってしまう『樹魔』を思い出した。
あ、あと出てくるものの名前がイマイチオシャレっぽくなかったのはわざとなのかな。
例えば「ビッキー」の母体となる商業施設の名前が「プリン」だったり、画期的な整形美容のネーミングが「はさみ撃ち作戦」だったり。
「ホントにその名前でいいんですか?」と思うようなのがけっこう多かったのが妙に印象的だった。
<収録作品>
流浪の民 / 閃光ビーチ / トーラスの中の異物 / シズル・ザ・リッパー / 星の香り / 求道に幸あれ / コントローロ / いまひとたびの春 / 天の誉れ / 化粧歴程
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