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2014/01/11

梨木香歩/冬虫夏草

冬虫夏草

『家守綺譚』の続編。亡くなった高堂の家を守る綿貫が、いなくなった飼い犬のゴローを探して鈴鹿山系を訪ね歩く話。

すごく良かった。
綿貫が行く先々で出会う土地の人々との関わり、その中で語られる風習や言い伝え。人ならざる者との出会い。彼らが綿貫に示す気遣いと厚情。
静謐な澄んだ空気の山の中で営まれる人々の暮らしが、丁寧で静かな筆致で描かれていて胸に迫った。
特に土地の人々が人ならざるモノたちの存在もそのまま受け入れて、同じ命あるものとして共に生きている様が自然に描かれているのがとてもよかった。
この旅は日々家に居てあまり人と交わらず書物からの知識を糧に物書きの仕事をこなしている綿貫に対するゴローからの贈り物だったのかもしれない。

それにしてもゴローのリア充っぷりが素晴らしい。
どこで聞いてもみんなが「ああ、あの…」と気づいてくれる犬って…(笑)
話の中で実際に姿を見せる部分は殆どないのに、すごくゴローの存在感に溢れた物語だった。

体躯は大きからず小さからず、色は茶。尻尾はふさふさとして目元涼しく、人を見て恐れず、それを侮らず、己が必要とされれば役割に応えんと誠実の限りをつくす。与えられぬものを盗ろうとせず、与えられたものでも、必要とする者があらば、そちらへ譲ろうとする。威張らず、威嚇せず、平和を好むが、守るべきものがあれば雄々しく立ち向かう。友情に篤く、その献身はかけがえがない。(p134)

旅の途中で会った老人にゴローの人となりを説明する綿貫のことば。
「こんな人に私はなりたい」…といった感じの素晴らしさ。
でも、(半分ヤマメが目当てだったとしても)仕事を放り出して山の中を何日も探し歩いてくれる綿貫だから、ゴローも一緒にいるんだろうな。
いつまでも2人で幸せにくらして欲しい。

各章のタイトルに植物の名前がついていて、その植物が登場する話になっているのも雰囲気があってよかった。
聞いたことも見たこともない名前もたくさんあったのでネットで検索しながら読むのも楽しかった。

「キキョウ」の章(蒟蒻屋さんのおばあさんの話)が特によかった。
人が人を思いやる気持ちが溢れ出てくるような内容だった。
読みながら泣いてしまった。

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