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2014年2月の9件の記事

2014/02/27

柚月裕子/検事の死命

検事の死命 (「このミス」大賞シリーズ)

シリーズ3作目。

今回は短編2編と2部構成の中編1編という内容。
すごく面白かった。

どの作品も主人公の佐方という人物の人となりをシンプルに、でもとても丁寧に描き出していて引き込まれる。
また彼の周辺の人物たち(同僚、上司、家族)の描写もとてもよかった。

特に2つめの短編「業をおろす」は素晴らしかった。
他の2篇は佐方の元に持ち込まれた事件についての物語だったけれど、これは彼の家族の物語。
自分の正義を貫き、獄に繋がれたまま病死した佐方の父・陽世。
彼はなぜそのように生き、そして死ななければならなかったのか。
幼なじみで親友だった男の名誉を回復するためにその真実を見つけ出した地元の古刹の住職によって語られる言葉の重みが胸に迫った。

またその前段、法事のために久しぶりに実家に帰った佐方と彼を迎える家族(祖父母と大叔母)の会話のシーンもとてもよかった。
特に自慢の息子を喪し世間に頭を下げながら日々を暮らし、それでも残された孫のために何かしようとする祖父母の想いが切なくて思わず泣いてしまった。
方言での会話もよかった。

タイトルに繋がる中編も非常に佐方らしい事件。
ただ、あまりにも佐方に余裕がありすぎて「もしかしたら負けるんじゃ?」というハラハラ感があまりなかったのが残念だった(贅沢な悩みw)
あと、被告側の妨害工作が思った程ではなかったのが意外。
地元の有力者という立場を利用して、もっと露骨なことをしてくるのかなと思っていたので、それにしてはアッサリしてるなという印象を持った。
(そういうのはドラマの中だけの極端な話で、現実はそんなこと出来ないのかな?)

前作を読んだときは「佐方は検事より弁護士がいいんじゃ?」と思ったけど、やっぱり検事の話も面白いな。

<収録作品>
心を掬う / 業をおろす / 死命を賭ける(「死命」刑事部編) / 死命を決する(「死命」公判部編)

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2014/02/25

神護かずみ/石燕夜行 輪入道の巻

石燕夜行 2    輪入道の巻 (角川文庫)

シリーズ2作目。

面白かったけど1作目ほどのワクワク感はなかった。
石燕と鏡花がつるんでるシーンが意外に少なかったのが残念。

前回出てきた蛇座頭と蛭法師が再登場。
前作よりも「悪い奴」オーラが減っていたような感じ。
確かに悪役ではあるけどその中に間抜けな部分や臆病な部分などが見え隠れしていた。
前作で出てきた時はもっと圧倒的な悪役のようなイメージだったのでちょっと意外な感じ。
更に悪人には悪人なりの義理があるといった感じのまめまめしさもあってそれが面白かった。
あと妖猫の双尾丸が可愛かった♪

話が進むにつれて石燕を縛っていた鎖が一つづつ解かれていく。
鎌倉での想いを解き放った石燕はこれからどうなって行くのかな。

逆に鏡花は謎が一つづつ解き明かされるごとに、彼の持つ闇が深くなっていく感じ。
このあと鏡花と石燕が対立するような流れにならなければいいけど。

今回の表紙は鏡花みたいだけど…ちょっとイメージ違うな。

<収録作品>
妖笛の巻 / 夜叉椛の巻 / 輪入道の巻

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2014/02/18

野口卓/闇の黒猫 北町奉行所朽木組

闇の黒猫: 北町奉行所朽木組 (新潮文庫)

北町奉行所の定廻同心 朽木勘三郎と彼に仕える岡っ引きや手下たちはその結束力と実績から羨望とやっかみを交えて「朽木組」と呼ばれていた。
勘三郎はふとしたきっかけで、誰も気づかないうちに何の気配もなく盗みを働くため「闇の黒猫」とあだ名される盗賊のことを思い出し例繰方の土岐織に調査を依頼するが、その矢先ある商家で似たような事件が起き-。

連作短編時代小説。
一話ずつ完結している事件を重ねていって、最後に大きなテーマの姿が見える構成。
渋い。というかちょっと地味。
と言っても細かい人物設定と丁寧な語り口は嫌いじゃない。

でも丁寧すぎてちょっとくどかったり、話が見えにくくなっていたりした部分はあったかも。
あと朽木が使う岡っ引きの伸六親分の下にいる手下4人が何度説明を読んでも区別がつかなかった。

むしろあまり出番のない例繰方の土岐織や朽木の息子・葉之助のほうが印象的だった。
書きおろし作品とのことだけど、この後シリーズ化されたりするのかな。その時は土岐織や葉之助が活躍する話が読んでみたい。

<収録作品>
冷や汗 / 消えた花婿 / 闇の黒猫

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2014/02/15

千早茜/おとぎのかけら-新釈西洋童話集

おとぎのかけら 新釈西洋童話集

「ヘンゼルとグレーテル」「みにくいアヒルの子」「白雪姫」など誰もが知っている西洋のお伽話をモチーフに、その舞台を現代日本に置き換えた短編集。

もっとふんわりした内容かと思っていたらどれもヒリヒリするような痛みを伴う作品だった。
しかもどの作品からも性的な匂いが色濃く漂ってくるけれど、それでいて下品な印象にはなっていないところに著者の文章力を感じた。

また、あとがきでは「話の筋は大体そのままで」とあったけれど、私にとってはタイトルに元の作品が併記されていなければ分からないものも多くそうした発想の広がり、豊かさも印象的だった。

収録されている7編の中では結末に光が見える「金の指輪」(シンデレラ)と「アマリリス」(いばら姫)が好き。

<収録作品>
迷子のきまり(ヘンゼルとグレーテル) / 鵺の森(みにくいアヒルの子) / カドミウム・レッド(白雪姫) / 金の指輪(シンデレラ) / 凍りついた眼(マッチ売りの少女) / 白梅虫(ハーメルンの笛吹き男) / アマリリス(いばら姫)

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2014/02/09

東野圭吾/マスカレード・ホテル

マスカレード・ホテル

連続殺人の現場に残されたメッセージから次の犯行現場を都内のシティホテルと考えた警察は、犯人逮捕のために刑事をホテルの従業員として潜り込ませることになる-。

長編ミステリー。面白かった。

一気に読ませる文章力と展開の巧さ、さらに話題の豊富さが際立つ。

物語はフロント・クラークに扮して捜査に当たることになった新田とホテル側の人間として彼を指導する立場になった入社10年目の尚美を中心に進んでいく。

冒頭、部屋にクレームを付けた客への尚美の対応が数ページ描かれるが、既にここで尚美の立場、思考、信念などがサラリと、しかし非常に的確かつ印象的に描かれていて秀逸。
その他にも尚美の口から語られるホテルで起きた様々な出来事が非常に興味深かった。しかもそれがただの薀蓄ではなく事件解決の伏線ともなっている部分もあるのがうまい。

事件については誰が誰を狙っているかなど主な目的が分からないまま進むので、一瞬も目を離せない緊張感があり先が気になって一気に読んでしまった。

当初は立場や考え方の違いから反発していた新田と尚美の関係が、捜査の進行に伴って変化していく様子も丁寧に描かれ説得力がある。
正直、新田のホテルマンとしての仕事ぶりは出来過ぎじゃないの?と思える部分があったけど「いつまでも使えない人」じゃ話が進まないから仕方ないんだろうね。

犯人が姿を表してからの展開はそれ以前の緊張感に比べるとちょっと弛緩してしまう部分もあったけど、全体として非常に面白く満足できる作品だった。

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2014/02/08

西澤保彦/ぬいぐるみ警部の帰還

ぬいぐるみ警部の帰還

超美形+キャリアでありながらぬいぐるみをこよなく愛する音無警部が難事件の謎を解く連作ミステリー。

主人公の音無を始め、見た目は叩き上げのベテラン刑事だけど実はミステリファンで小説の設定を事件現場に見出しては喜ぶ江角などキャラ設定は面白い。
ただ、その設定が物語の中に生かされているかといったらそうでもなかったような。

キャラ設定に対して事件自体は重めのものが多く、発端から解決までに至る筋道も会話中心の内容ではあったけどしっかりと描かれていたけれど、設定とのバランスの悪さがちょっと気になった。

<収録作品>
ウサギの寝床 / サイクル・キッズ・リターン / 類似の伝言 / レイディ・イン・ブラック / 誘拐の裏手

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2014/02/07

太田忠司/ミステリなふたり a la carte

ミステリなふたり a la carte (創元クライム・クラブ)

その言動一つで同僚、部下は言うに及ばず上司さえも凍りつく鬼刑事・景子が関わる難事件を景子の年下夫で主夫兼イラストレーターの新太郎が解決する連作ミステリー。

シリーズ3作目。
主役の2人を始め景子の部下の生田や同僚の間宮などのキャラ設定も落ち着いて来て読みやすかった。

でも、内容的にはあっと驚くこともなく、全体的に可もなく不可もなくって感じ。新太郎の特技である料理と事件を絡める構成も後半ちょっと破綻してたような。
気楽にサクッと読むにはちょうどいい1冊。
また新たな女性キャラ登場で今後どう展開していくのか楽しみ。

<収録作品>
密室殺人プロヴァンス風 / シェフの気まぐれ殺人 / 連続殺人の童謡仕立て / 偽装殺人 針と糸のトリックを添えて / 眠れる殺人 少し辛い人生のソースと共に / 不完全なバラバラ殺人にバニラの香りをまとわせて / ふたつの思惑をメランジェした誘拐殺人 / 男と女のキャラメリゼ

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2014/02/02

東野圭吾/ナミヤ雑貨店の奇蹟

ナミヤ雑貨店の奇蹟

悩みを書いた手紙をシャッターの郵便受けから投げ込むと、翌日の朝裏口の牛乳箱の中に回答が入っている。
そんなやり取りで見知らぬ人々の心に寄り添って来たナミヤ雑貨店の店主。彼の三十三回忌の夜、無人の店に侵入した若者たちが体験した奇跡の物語。

ミステリーかと思って読み始めたら、なんとファンタジーだったのでちょっとビックリ。でも、面白かった。
確かに設定はファンタジーだけど、ベースは「現在」「現実」をはみ出していないところが成功の秘訣かな。
だからこそ語る側にも、読む側にも無理を強いない余裕があった。

1話目を除いてすべて同じ場所に関係する人々と繋がるというのは最初は違和感があったけど、その答えもきちんと準備されていたのがよかった。
一つ一つの物語にきちんとした結末が準備されていて読後感もよかったし全編を通して表立った形で悪人が出てこないのも○。

いろんな親子の関係が出てくるけど、中でも雑貨店の主人・雄治と息子・貴之の関係がよかった。
病に倒れ死期が近い父親を心配する息子の気持ちが痛いほど伝わってきた。
この2人も含めて全体的に男性の活躍(存在感)が目立つ話だったかな。と言っても5話あるうちの2話は女性が質問者だから男性ばかり出ているわけでもないんだけど。
他の作品に比べたらこの作品は女性もいい感じの人が多いしきちんと活躍してたと思うけど、なんとなく後ろに控えた存在になっていたように思うのは気のせいだろうか。

冒頭、若者3人の会話だけで進むけど、ここでもう少しそれぞれの外見的な違いを書いてあったらもっとすんなり物語に入っていけた気がする。
会話文での差だけだとイメージが掴みにくかったので。

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2014/02/01

光瀬龍/多聞寺討伐

多聞寺討伐 (扶桑社文庫)

時代SFという不思議なカテゴリ。
時代(歴史)小説の中にSF設定があるという構成の短篇集。
実際に書き残された文書の不思議な記述をSF的に解釈して構成した作品と、それぞれの時代に潜んでいるタイムパトロールが密航者を捕らえる作品の2つのパターンが中心。

読むのに時間は掛かったけど面白かった♪
未来設定のSFだと話が難しすぎて何が書いてあるのかわからないままになってしまうことが多いけど、これはSFでも江戸時代を舞台にしているので普通の時代小説と同じ感じで楽しめた。
何より時代物の部分の書き方が上手かったのが大きい。
町民や岡っ引き、同心など事件に巻き込まれていくもの、事件を追うものの言動が他の時代小説と遜色ない雰囲気で描かれていて読みやすかったし、またそれらの登場人物たちがその時代にはあり得ない不思議な現象に巻き込まれていく違和感を際立たせていた。

ただ、やっぱりSF的な描写になってしまうと書かれている文章に対する想像が追いつかなくなってしまい何が起きているのか判らずに終わってしまうこともあった。
特に表題作の「多聞寺討伐」はその傾向が強かったかな。

未来と現代と過去を繋いだ「歌麿さま参る」が一番好きだった。
これってシリーズだったりするのかな?3人の活躍がもっと読みたい。

<収録作品>
追う 徳二郎捕物帳 / 弘安四年 / 雑司ヶ谷めくらまし / 餌鳥夜草子 / 多聞寺討伐 / 紺屋町御用聞異聞 / 大江戸打首異聞 / 三浦縦横斎異聞 / 瑞聖寺異聞 / 天の空舟忌記 / 歌麿さま参る 笙子夜噺

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