柚月裕子/検事の死命
シリーズ3作目。
今回は短編2編と2部構成の中編1編という内容。
すごく面白かった。
どの作品も主人公の佐方という人物の人となりをシンプルに、でもとても丁寧に描き出していて引き込まれる。
また彼の周辺の人物たち(同僚、上司、家族)の描写もとてもよかった。
特に2つめの短編「業をおろす」は素晴らしかった。
他の2篇は佐方の元に持ち込まれた事件についての物語だったけれど、これは彼の家族の物語。
自分の正義を貫き、獄に繋がれたまま病死した佐方の父・陽世。
彼はなぜそのように生き、そして死ななければならなかったのか。
幼なじみで親友だった男の名誉を回復するためにその真実を見つけ出した地元の古刹の住職によって語られる言葉の重みが胸に迫った。
またその前段、法事のために久しぶりに実家に帰った佐方と彼を迎える家族(祖父母と大叔母)の会話のシーンもとてもよかった。
特に自慢の息子を喪し世間に頭を下げながら日々を暮らし、それでも残された孫のために何かしようとする祖父母の想いが切なくて思わず泣いてしまった。
方言での会話もよかった。
タイトルに繋がる中編も非常に佐方らしい事件。
ただ、あまりにも佐方に余裕がありすぎて「もしかしたら負けるんじゃ?」というハラハラ感があまりなかったのが残念だった(贅沢な悩みw)
あと、被告側の妨害工作が思った程ではなかったのが意外。
地元の有力者という立場を利用して、もっと露骨なことをしてくるのかなと思っていたので、それにしてはアッサリしてるなという印象を持った。
(そういうのはドラマの中だけの極端な話で、現実はそんなこと出来ないのかな?)
前作を読んだときは「佐方は検事より弁護士がいいんじゃ?」と思ったけど、やっぱり検事の話も面白いな。
<収録作品>
心を掬う / 業をおろす / 死命を賭ける(「死命」刑事部編) / 死命を決する(「死命」公判部編)
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