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2014年3月の8件の記事

2014/03/29

長嶋有/問いのない答え

問いのない答え

Twitterでフォローしあってる人々の生活やそれぞれの繋がりを描いた作品。
Twitterを扱った小説で、Twitter文学賞でも3位に入っていたので読んでみたけどなかなか進まず読み終わるのに2週間かかった(さすがに遅すぎ(-_-;))

最初は何の予告もなく急に語り手が変わるといった「独特の作法」に慣れなくて「???」になったけど、原因はそういう部分ではない。
多分、読みながら物語以外のこと(例えば自分とネットの関わり方など)を考えさせられる作品だったからではないかと。
そういう意味では面白かった。

それにしても世の中の人はTwitter(ネット)であんなに濃密に(リアルでも)相手と関わってるものなの?
私なんてネットで知り合った人と現実に会うことなんて稀だけどな。
あと、相手の年齢や職業をわざわざ訊くというのもちょっと違和感を持った。
そんなことしたこともされたこともないから。
その人が何歳だろうと、どんな職業だろうとディスプレイに表示された内容だけで判断していくのがネットの流儀なんじゃないのかなと思っているんだけど。
特にTwitterの場合はその傾向が顕著だな。
もちろん日々のつぶやきの中で相手のことが少しずつ見えてくることはあるけど、それをわざわざ確認する必要はないと思ってる。
まあ、現実社会での付き合い方がその場所によって様々であるのと同じようにネットでの付き合い方も集団ごとに違うんだろうな。

あと、(本編には関係ないけど)スマホを横にすると自動的に画面が横になる人多すぎなんじゃ?
私は速攻で自動で動かないように設定するよー。
そこがすごく気になったw

この作品に出てくる質問ゲーム(質問者は質問の最後の部分だけを公開。それに対してフォロワーが答えをツイート。後で質問全文を公開し回答を質問にこじつけたり、ツッコミを入れたりする)は面白い。
でもTwitterって過去のつぶやきを掘り出すのには向いてないシステムだと思う。
ハッシュタグ使えばいいのかな?
あと参加してる人だけTLとは別にリスト化しておくとかかな。

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2014/03/15

津原泰水/たまさか人形堂それから

たまさか人形堂それから

シリーズ2作目。

1作目を読んでから時間が経っていたので、アウトライン(若い女主人と2人の腕の良い人形師がいて修復を主に請け負うお店の話)以外の細かい設定を忘れていて、「そうだったっけ?」「あー、なるほど」と思いながら読んだ。

特に束前という登場人物のことはすっかり忘れていて「こんなに重要な設定だったんだっけ?」という印象だった。(ごめんなさい、束前さん(^^;)

前作で感じた「文章のテンポが気持ちいい」という部分は今回も変わらず。
特にポンポンと繰り出される会話部分がよかった。
「小田巻姫」の冒頭のジョンスコを巡る会話の応酬も笑えたし、最後の「雲を超えて」での人形たちの会話も楽しかった。

店を離れた富永がどんな姿で帰ってくるのか、澪と束前の関係はどうなるのか…続きが楽しみ。(次は忘れないようにしないと!w)

<収録作品>
香山リカと申します / 髪が伸びる / 小田巻姫 / ピロシキ日和 / 雲を超えて

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2014/03/14

しあわせなミステリー

しあわせなミステリー

4人の作家による「人の死なないミステリー」短篇集。

執筆陣は伊坂幸太郎、中山七里、柚月裕子、吉川英梨の各氏。
本のタイトルや表紙イラストから想像していたのとはちょっと隔たりがある内容のものが多かったけど、好きな作家さんの作品がまとめて読めて楽しかった。

特に伊坂さんの「BEE」は楽しかった!
「腕はいいけれど妻に頭が上がらない」殺し屋・兜が自宅に出来た蜂の巣を退治する話。
兜の恐妻っぷりがすごく切なくて笑えた(笑)
1作目は雑誌掲載だけなのかな。読んでみたい!

中山さんの「二百十日の風」はファンタジー風味。
と言ってもふんわりした作品ではなく、キリキリした緊張感をはらんでいるところが中山さんらしかった。

柚月さんの「心を掬う」は先日読んだ『検事の死命』にも収録されていた作品。
読んだばかりだったので流し読みしちゃったけど、ラストはやっぱりジワッと来た。

最後の吉川英梨さんは初読み。
残念ながら私には合わなかった。
この作品だけなのかもしれないけど、人物設定も物語の内容もどれをとってもしっくり来なくて楽しめず。

個人的には好きな作家さん比率が高かったのでまあまあ満足だけど、この作品の組み合わせで「しあわせなミステリー」ってタイトル付けるのはちょっとどうかな、と。
確かに人は死なないけど、けっこうひどいことになってたりするので注意。

<収録作品>
伊坂幸太郎:BEE / 中山七里:二百十日の風 / 柚月裕子:心を掬う / 吉川英梨:18番テーブルの幽霊

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2014/03/10

清水義範/愛と日本語の惑乱

愛と日本語の惑乱 (講談社文庫)

清水さんお得意の言葉についての考察と恋愛小説を組み合わせた異色作。

主人公はそこそこ売れている中堅のコピーライター。
言葉を扱うプロとしてTV局の放送用語委員会に参加したり、業界紙に掲載していたエッセイを本にする企画が進んでいたりするその中で主人公が覚える言葉についての違和感と、付き合って2年になる有名女優との恋愛模様が描かれていく。

わりと全体的に真面目なモードで進むので期待していた「笑い」の要素が少なめだったのは残念だったけど、普段は見逃しがちな日本語の曖昧さあるいは変な厳格さを言及している部分は面白く読んだ。
ただ、恋愛小説にする必要があったのかどうかは私にはよく判らなかったな。

日本語学者 金水敏(きんすい さとし)氏による解説も分かりやすく、これを読んで「そういうことが書いてあったのか」と気づいた部分もあった。

ちなみにダジャレとか語呂合わせが好きな人というのは「脳の中で似た言葉を探す作業に快感があって止められなくなっている状態」なんだって。
この状態のことを「フェルスター症候群」というそうな。
これ→ http://en.wikipedia.org/wiki/Foerster%7s_syndrome… みたいだけど英語なのでよく分からない。

あとチョムスキーによる「人間はすべての言語を話すことが出来る能力を予め持って生まれてくる」という話も興味深かった。

『つまり言語は本人の努力の結果生じるのではなくて、言語の元になる能力、すなわち言語知識の原形がすでに脳に存在しているんだということです』(p192)

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2014/03/08

谷瑞恵/異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女

異人館画廊 盗まれた絵と謎を読む少女  (コバルト文庫)

幼いころから英国で暮らし大学で図像学を学んだ千景は、画家だった祖父の死をきっかけに10年ぶりに帰国する。
横浜で画廊を営む祖母の家に落ち着いたが、その矢先フランスで起きた盗難絵画の捜査協力の依頼が入る-。

見たものの心を狂わせる危険なモチーフが描かれている盗難絵画を奪取するための顛末を描くミステリーの部分と、幼いころ事件に巻き込まれ記憶と他人に対する信頼を失った千景と幼なじみの透磨の関係を描く恋愛部分の2本立て。
個人的な好みとしてはミステリー部分だけでよかったかもw

絵画自体が凶器になるという着眼は面白かった。
それを入手するためのチーム「キューブ」のメンバーも個性的でいい。

ただ、千景と透磨の関係はあまりにもステロタイプで反応が過剰すぎ。

いちいちめんどくさいな~と思ってしまう。
これがなかったらもっとサクサク話が進むのに…。

ところで西洋画のイコンというのは大抵西洋宗教が根底にあってその知識が記憶のどこかにあるからこそイコンとしての効力があるんじゃないの?
それについてまったく知識のない日本人がイコンが描いてある絵を見て同じようにそれに捉えられてしまう(しかも即効、確実に)というのはにわかには信じ難いんだけど。
その辺りの説明をもっときちんとして欲しかった。
そうでないとただの「オカルト」になってしまうと思う。

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2014/03/06

西條奈加/いつもが消えた日 お蔦さんの神楽坂日記

いつもが消えた日 (お蔦さんの神楽坂日記)

シリーズ2作目。

望の中学の後輩でサッカー部員の有斗の家族がある日忽然と姿を消した。
そして家の中には大きな血だまりが残されていた。
この血痕の意味は、そして家族はどこに行ったのか。
何も分からないまま突然当たり前の日常を失った有斗を支える望とお蔦さんの物語。

前作は短編で事件も日常の謎的なものが多かったのに対し、今回は長編でしかもかなり重い内容だった。
何も分からないままたった一人で残されてしまった有斗と、彼を引き取り一緒に生活を始める望とお蔦さんのやり取りが微笑ましく、同時になんとも切ない。
そうした日々の様子を丁寧に描きながら、同時に事件の真相が少しずつ見えてくる構成。
ミステリーによくある「事件の内容を部外者に必要以上に詳細に語る警察関係者」がいないせいでなかなか事件の全体像が見えずモヤモヤする部分もあったけど、その分有斗の子どもらしさ、健気さ、家族を思う気持ちが伝わってくる描写が多く何度も泣かされた。

最後も登場人物ひとりひとりに対してきちんと決着がついていて納得できる結末だった。
特に最後の数ページはずっと泣きっぱなしw

有斗の家族については正直、長期間あの条件の中にいてそんなにきちんとしていられるものかなという気がしないでもなかったけどね。

しかし、望は中学生なのにちょっと出来すぎ。
あの年頃で周囲に流されずに自分の正義を貫くって難しいと思うけどな。
これもお蔦さんの影響なんだろうな。

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2014/03/01

喜多喜久/化学探偵Mr.キュリー

化学探偵Mr.キュリー (中公文庫)

大学の理学部准教授のMr.キュリーこと沖野と庶務課の新人・舞衣が学内で起こる事件を解決する連作ミステリー。

読みやすかった。
読みやすくはあるんだけど、その分深みがない。
登場人物のキャラも今ひとつピントが合わないし、事件もぼんやりしてた。

大体、新人の事務員なのに外をウロウロしてる時間多すぎ。
大学の庶務課はそんなに暇なのかと。
しかもそんな新人に学生のメンタルヘルスの担当させちゃうとかすごい人事だな(^^;

全体的にそういうザックリした設定の話だった。
だからこそ自由に動いて楽しめる部分もあるので、気楽に読むには○。

設定といいネーミングといいどうしても某作品と比べてしまうわけで。
そうするとどうしてもね。
でも著者も敢えてそこを狙ったんだろうから、そのチャレンジ精神(なのか?)は評価したい。

<収録作品>
化学探偵と埋蔵金の暗号 / 化学探偵と奇跡の治療法 / 化学探偵と人体発火の秘密 / 化学探偵と悩める恋人たち / 化学探偵と冤罪の顛末

ところで作品内で「庶務課の課長はWikipediaを編集するのが趣味で学内の教授の記事を作りまくってる」とか言うのがあったけど、実績もない私大の大学教授の記事をいくら書いても「特筆性なし」で削除されるのがオチだと思うけどw

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今野敏/宰領 隠蔽捜査5

宰領: 隠蔽捜査5

シリーズの長編5作目。
仕事中の竜崎の元に伊丹から元警察官寮が秘書を務める国会議員が朝から行方不明なので内々に捜査してほしいとの連絡が入る。
イヤイヤ了解した竜崎だったが万一のことを考えて署で出来る限りの態勢で捜査に当たるよう動き始めるが、その矢先大森署管内で運転手の遺体を積んだ議員の車が発見され-。

昨夜続きを読み始めたら先が気になって2時までかかって一気読み。
相変わらずテンポの良い会話とスピード感のある展開で読みやすい。
竜崎がいる場所の状況や人の動き、心理までが目に見えるように描写されるのでまるでその場にいるかのような気持ちになれる。

一方犯人側の状況は今回も相変わらず手探り状態。
この物語は竜崎がいかにして人(警察官)の心に食い込んでいくかということが主題で、犯人や事件はそのための設定という感じ。
そして今回もその目的どおり、多くの警察官(しかも神奈川県警というアウェーで!)を魅了する竜崎なのでであったw

しかも竜崎本人には自分をよく見せようとか上手く立ち回ろうという気持ちは皆無で、ただ事件を早期に確実に解決することだけを目指して警察官として正しく合理的な方法を選択しているに過ぎないという描き方をしているのがいつもながら印象的だった。

ただ、そうした竜崎を中心にした警察内部の動きは面白かったけど、事件のほうは犯人像と犯行に今ひとつギャップがあるように思えてならない。
計画の途中で予想外なアクシデント(しかも重大な)を起こしてなお計画通りに犯行を進められるような、そんな人物には思えなかったけどな。

事件解決後、伊丹が竜崎に「謝れ」というやりとりのシーンが可笑しかった。
やっぱり伊丹が一番の竜崎ファンなのね。
所轄の署長から呼び捨てで電話が掛かってくるのが実は嬉しくて仕方ないと見たw
そんな伊丹を主人公にした「.5」がまたそろそろ読みたいな。

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