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2014/04/11

宮木あやこ/泥(こひ)ぞつもりて

泥ぞつもりて (文春文庫 み 48-1)

清和、陽成、宇多。
三代の若き天皇と彼に仕えた女達の物語。

後宮恋愛ものとしてよりも、人間ドラマとしてなかなか面白く読んだ。
特に宇多天皇の時代を描いた「東風吹かば」の章が好き。

先の帝 陽成院の母親である高子と寵を争った暄子、そして高子の兄で政の実験を握る基経。
朝廷の中心だった彼らが年を重ね、少しずつ表舞台から身を引き始めたまったりと碁を打ちながら話をしているシーンが印象的。

ラスト、失脚した高子とそれを傍で見守る暄子の会話もいい。

藤原北家を政治の中心に押し上げた良房の養子としてその跡を継いだ基経を、自己の利には興味がない完全な合理主義者として描いているところも面白かった。
陽成や宇多の時代に役目を放擲して屋敷に篭ったのも、駆け引きとかではなく「もう仕事したくなかった」という解釈が新鮮。

帝とその后、時の権力者といった歴史上の人物としてではなく、私たちと同じ感情を持ちその時代を必死で生きた人間としての姿が立ち現れて来る群像劇として面白い小説だったと思う。

<収録作品>
泥(こひ)ぞつもりて / 凍れる涙 / 東風吹かば

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