大島真寿美/ゼラニウムの庭
成長速度が異常に遅い体質を持って生まれたがために世間に隠されて生きてきた嘉栄(かえい)。
その嘉栄の双子の妹・豊世(とよせ)が晩年になって語った一族の物語を、後に作家となる孫のるみ子が綴った物語。
うーん、残念ながらまったく内容を消化しきれずに読み終わった、という感想。文章は読みやすいし内容もよく分かるんだけど、書いてあるすべてのこと、そして人物にほとんど感情移入できなかった。
彼らの感じていた嘉栄に対する畏怖の感情を理解することが出来なかったのが原因かなあ。
もちろん身近にそんな人物がいたら「怖い」「気持ち悪い」と感じるだろうというのは想像できるんだけど、嘉栄は彼らにとっては血縁のある家族なわけだから他人が頭で想像するのとは別の何かがその底にあったのではないか。
その「何か」が掴みきれなかったという感じ。
あと、彼女たちの実家が尋常じゃなくお金持ちの設定だったというのも大きいかも。
あえてそう書いたのかもしれないけど、本当に家族、一族の中だけで閉じている物語だったので、読者としての自分はどの立ち位置にいればいいのかが判らなかった。
るみ子が書いた物語のあと、それを読んだ嘉栄の独白のような文章が付記されている。
全体の9割を占めるるみ子の書いた物語はもしかしたら壮大なプロローグで、その嘉栄が書いた付記こそが本編なのでは。
それを読んだら今までのモヤモヤしたものが晴れるのでは、と期待したけど(少なくとも私にとっては)そうではなかった。残念。
(るみ子の物語を補完する内容ではあったけれど)
スッキリと見通せるのに先の景色が曖昧といったような物語の中で唯一、冒頭の豊世とるみ子の会話の部分が心に残った。
それと最後に出てきた葵も、嘉栄の個性に負けない(というか意に介さない?)サバサバしたキャラでよかった。
人とは違った運命を持って産まれ生きた嘉栄を、恐れずまた敬うこともなく、そのままそういう人として受け入れたという意味では、タイトルにある「ゼラニウム」の名前を付けられた葵こそが嘉栄が求めていた人物だったのかもしれない。
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