門井慶喜/ホテル・コンシェルジュ
京都にあるホテルのベテランコンシェルジュと新米フロント係がスイートルームに長期滞在する財閥のぼんぼんの持ち込む厄介事を解決する連作短編集。
門井さんの作品はテーマは面白そうで興味を惹かれて読み始めるんだけど実際に読んでみると「なんか違う」と思うことが多い。
残念ながらこの作品もそうだった。
まず何よりも桜小路がスイートに長期滞在している理由が納得出来ない。
「留年を繰り返している大学を卒業するために甘やかされている自宅を出て勉強に専念する」という理由付けだけど、その割に勉強しているような気配はなく、適当で優雅な生活を送ってるようにしか見えない。
しかもその滞在によって生じる月に100万円以上にもなる費用をお金に細かそうな伯母さん(桜小路の父の姉)が出しているというのも。
あの伯母さんならもっと効率的な方法を考えそうなものだけど。
あと、そんなお金持ち一族の惣領息子であるにもかかわらず、ホテルのコンシェルジュの存在も知らなかったというのも。
そんな具合に設定に全然納得出来ないまま進むのでずっと気持ち悪かった。
探偵役のコンシェルジュ・九鬼の人物設定も最初から「有能」としてしまったがためにステロタイプの無個性な人になってしまったような気がする。
他の登場人物(助手役の新人フロント・麻奈、桜小路の伯母のあき子など)も共感出来る登場人物がいなくて残念。
タイトルから、もうちょっと落ち着いた雰囲気の重厚な物語を期待してたんだけどな。
<収録作品>
みだらな仏像 / 共産主義的な自由競争 / 女たちのビフォーアフター / 宿泊客ではないけれど / マダムス・ファミリー
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