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2014年7月の10件の記事

2014/07/27

隆慶一郎/柳生非情剣

新装版 柳生非情剣 (講談社文庫)

剣に生きる一族に生まれた柳生連也斎、友矩、宗冬、十兵衛、新次郎、五郎右衛門の5人それぞれを主人公に、骨肉相食む人生を描いた短篇集。

短編ごとに主人公と視点が変わるので、同じ人物でも物語が変わると別の側面が見えてくるのが興味深かった。

それぞれ40ページほどの短編だけど、状況や人物、心情などが息苦しささえ感じるくらい丁寧に描かれていて強い余韻を残す作品集。
肉親との戦いの中に生きた4人に対し、自分を逃がそうとした高弟の息子のために鬼神のように戦い戦場で死んでいった五郎右衛門が印象に残った。

柳生っていうと十兵衛くらいしか知らなかったけど、他にも剣の天才をこんなにも輩出していたのね。
しかもこの5人はそれぞれ兄弟、従兄弟、そしてその父親あるいは伯父という非常に近しい関係。
天才的な遣い手なんて何十年に1人くらいしかいないようなイメージだったけど、こんなに短期間に同族から何人もの名だたる名人が出ていたということに驚く。
といっても、少なくともこの作品中の彼らは剣の天才だからといって決して幸せではなかったようだけど。
剣は殺戮の道具だからそれもまたさだめってことなのかな。

<収録作品>
慶安御前試合(柳生連也斎) / 柳枝の剣(柳生友矩) / ぼうふらの剣(柳生宗冬) / 柳生の鬼(柳生十兵衛) / 跛行の剣(柳生新次郎) / 逆風の太刀(柳生五郎右衛門)

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2014/07/26

田中啓文/鍋奉行犯科帳 浪速の太公望

浪花の太公望 (集英社文庫)

そして3作目も一気に読了。

今回も楽しかった!
事件と同時に食べ物にまつわるあれこれも考えなくちゃならなくて大変だと思うけど、読んでいる間はそういうことを気にせずにニヤニヤ笑いながら読める気軽な作品に仕上がっているのがいい。

3編どれも面白かったけど、中でも「狸のくれた献立」が好きだったな。
全体のストーリーがシンプルで込み入ってないのがよかったし、何より最後の狸の眷属の宴会は最高!
声を出して笑ってしまったw
綾音と小糸の絡ませ方も上手かった。

「釣り馬鹿に死」の三平も可愛かったけど、きっかけになった事件の扱いがちょっと雑な印象が残ったのが残念だった。

<収録作品>
地車囃子鱧の皮 / 狸のくれた献立 / 釣り馬鹿に死

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2014/07/23

緑川聖司/晴れた日には図書館へいこう ここから始まる物語

晴れた日は図書館へいこう ここから始まる物語 (ポプラ文庫ピュアフル)
本が大好きな小学5年生のしおりが毎日のように通う図書館で出会う不思議な事件をテーマにした日常の謎系ミステリー。

楽しかった。
小学生の女の子が主人公なので込み入った話はないけど、それが却って「日常の謎」らしくて好ましい。

物語の中に季節の移ろいや、人と人の関係も丁寧に柔らかいタッチで描かれているのも読んでいて気持ちよかった。

ただ、主人公のしおりを始め、登場人物がいい子、いい人すぎるかなとは思う。
悪い人の登場を期待してるわけではないけど、もうちょっとワガママだったり意地悪だったりする部分があってもいいんじゃないかなという気がするので。
特にしおりのお父さんとお母さんはなんで離婚したのかさっぱり判らなかったなあ。

喫茶店で出会ったおばあさんが子どもの頃に読んだ本をめぐる顛末を描いた「幻の本」好き。
あと番外編の「九冊は多すぎる」も楽しい趣向だった。

<収録作品>
移動するドッグフードの謎 / 課題図書 / 幻の本 / 空飛ぶ絵本 / 消えたツリーの雪 / 九冊は多すぎる

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2014/07/21

東野圭吾/夢幻花

夢幻花(むげんばな)

長編ミステリー。

冒頭で年代の違う断片的な話がいくつも出てきてなかなか話が進まないので一瞬挫折しそうになってしまった(^^;
でも、事件が動き始めてからは一気読み。
ちょっと偶然多すぎじゃね?と思いつつも、テンポよく畳み掛けてくる展開に引き込まれた。
最後の伏線の回収も見事。

でも、すごく上手くまとまってる話ではあるけど感動したって感じではないかな~。
何となくツルーッと上滑りしていってしまう感じがあったような。

最後のほうで要介の「このホテルでトラブルがあった時に関わった」ってセリフがあったけど、それは『マスカレード・ホテル』のことなのかな?

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2014/07/20

田中啓文/鍋奉行犯科帳

鍋奉行犯科帳 (集英社文庫)

江戸時代の大阪を舞台にした時代小説。

面白かった~♪
仕事よりも何よりも美味しいものを食べるのが好きな大阪西町奉行・大邉久右衛門や配下の与力、同心たちの明るいキャラクターとテンポのいい会話で楽しく読めた。
また、タイトルからもっとふざけた感じの軽めの作品かと思っていたけど、事件や謎解きは意外にもしっかりした話で読み応えがあった。

時代物というと舞台はほとんど江戸だしたまに大阪を舞台にしたものがあっても武士よりも町人や職人が主役の作品が多いので、大阪の奉行所が活躍するこの作品は新鮮に感じた。
話のテーマに合わせた食べ物薀蓄も楽しかった。

<収録作品>
フグは食ひたし / ウナギとりめせ / カツオと武士 / 絵に描いた餅

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2014/07/15

川瀬七緒/シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官

シンクロニシティ 法医昆虫学捜査官

江戸川区のレンタル倉庫から発見された腐乱死体。
身元の分かるものが一切発見されない中で法医昆虫学者として捜査に参加することになった赤堀は現場からある重要な手がかりを見つけ出す-。

シリーズ2作目。
前作に増してかなり複雑な筋立てで、登場人物も多いけどスルーっと読めてしまう文章力は変わらず。
キャラの作り方とか展開とかすごく上手くて安心して読める。
ただ、今回は確かに虫はたくさん出てくるものの「法医昆虫学者」としての活躍ではない部分が多かったような気がする。
まあ、主人公がハエの子どもの世話ばかりしてるわけにはいかないのだろうけどね(^^;

今回の岩楯の相棒はイケメンの月縞くん。
前作のワニさんが好きだったので変わってしまってこの点はちょっとガッカリ。
と言っても、岩楯は本庁の刑事で、相棒は所轄の刑事という組み合わせを考えるといつも同じ所轄で同じような事件が起こる設定にするわけにはいかないだろうから仕方ないのね…。

一作目の鰐川は見た目イマイチだけど穏やかな性格のメモ魔、二作目の月縞は組織に対して不信感を抱く若手のイケメン。
それぞれ性格の違う相棒(しかもその場限りの)を上手くコントロールして使いこなし、しかも最後には本人をヤル気にさせちゃうあたり岩楯の指導者としての能力ってかなりのものだと思うなあ。
もうすぐ出る(出た?)三作目はどんな相棒になるのかな。

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2014/07/13

森炎/あなたが裁く! 「罪と罰」」から「1Q84」まで 名作で学ぶ裁判

あなたが裁く! 「罪と罰」」から「1Q84」まで

東大法学部卒業、地裁の裁判官を経て現在は弁護士という経歴の著者による「映画や小説の名作の中で起きた事件を実際の法廷で裁くとどうなるか」という内容の本。

内容が丁寧、かつ簡潔でわかりやすい。
「(裁判員制度の導入により)「一億総裁判官」時代の到来を受けて、市民が真に気軽に楽しく読めて、なおかつ刑事裁判の全体像が自然に判るように工夫した」本とのことで、その目的にあった内容、文章で読みやすく勉強になった。

事件とかの内容を読むとどうしても加害者側の性格、生い立ち、日常の生活態度などを加味して考えがちだけど、実際の裁判ではそういったことはあまり重視されないらしい。いわゆる「罪を憎んで人を憎まず」ってことなのかな。
でも一般人としてはなかなかそう割り切って考えるのは難しいと思うんだけど。そういう心理や知識をきちんと学んだ人がやるからこその裁判なんじゃないの?と思うので、やっぱり裁判員制度には疑問しか残らないな。

「ウエストサイド物語」から「1Q84」まで全部で24の映画、小説作品が取り上げられているけど、裁判の内容以上に特筆すべきは「その作品のあらすじの説明がすごく上手!」ということ。
簡潔にサラッと書いてあるけど、非常に解りやすくそれでいて物語の本質的な部分も見えるいい文章だった。
他の作品を題材にしたものも読んでみたいな。
続編希望。

イラストレーターのたなか鮎子さん( http://www.ayukotanaka.com/ )によるカバー+扉イラストも印象的。

刑事裁判は決して人間性自体を裁くものではありません。刑罰は倫理や道徳とは違うのです。裁判でモラルを押し付けるようなことになってはいけません。裁判所は世間的なモラルとは一線を画さなくてはならないのです。(p127)

刑事裁判は、あくまで、検察側の立証が十分かどうかを判断するものです。検察側と被告側のどちらの言い分が正しいかを判断するものではありません。(p220)

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2014/07/05

川瀬七緒/147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官

147ヘルツの警鐘 法医昆虫学捜査官

焼死体の体内から見つかった蝿の幼虫を手がかりに法医昆虫学の准教授・赤堀が事件の真相に迫る。

面白かった。
文章が読みやすいし、主人公の赤堀、チームを組む刑事2人、さらに犯人側の人物まできちんと作りこみされていて臨場感があった。

専門家が犯罪捜査に協力するという最近よくあるパターンだけど、赤堀の場合警察側から与えられた情報だけで考えるのではなく、自分の研究の一環としてフィールドワークもこなす身軽さ、積極性があることが物語に勢いと広がりを与えていると思う。
またそれを支える(あるいは振り回される)2人の刑事(岩楯、鰐川)もいい。

部外者の参加は歓迎されていないよという雰囲気を出しながらもあからさまに妨害して話を停滞させるような面倒な展開にしてないところもマル。
途中で「そこまで必要かなあ?」と思うような回り道も多少あったけど、全体的にスムーズな流れで面白かった。
続きも楽しみ!

あー、でもムシが苦手な人はダメかも…(^^;
私はそんなに苦手な方じゃない(というか女性としたら平気なほうかも)けど、それでも時々想像力スイッチ切って読んでるとこあったもの(笑)
(例えば冒頭の解剖シーンとか)
ただ、それはわざとグロいシーンにしているわけではなく、丁寧さゆえの描写だと思えたのでそういうシーンも嫌悪感はなかったな。

しかし、大の男、しかも刑事にまで引かれてしまう赤堀准教授、同性の友達いるのかなあ…(あ、赤堀は女性キャラですよん)

あと、最後のとこ、怪我の回復早すぎじゃないの?(笑)

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畠中恵/たぶんねこ

たぶんねこ

「しゃばけ」シリーズの12作目。短編5編。

うむむ…微妙。
最初の「跡取り三人」はまあまあよかったので期待したんだけど、その後の4作は今ひとつ。
物語が動き出すきっかけがもけっこう無理やりだし、登場人物も感情移入出来ない人が多すぎる感じ。
特に「こいさがし」と「くたびれ砂糖」はその傾向が顕著でモヤモヤした気分が残った。

前作の『ひなこまち』が面白かったので楽しみにしてたんだけどなあ。残念。

このシリーズは全体的にほんわりなイメージなのに、時々最後まで救いのない登場人物が出てきてモヤモヤしたまま終わることがある。
今回の場合なら「くたびれ砂糖」に出てきた小僧たちを改心させないままエンディングにしてしまったこととか。
まあ、「世の中、いい人ばかりじゃない」ってことかもしれないけど、お話なんだから最後はスッキリ終わってもいいんじゃないの?と思うんだけど。
しかも今回の場合、子どもなんだしね。

このシリーズは最初の方から「なんかイマイチ…」という感想が多い。
それでも全巻読んでるわけだからそれだけの魅力はあるってことかと。
確かに読みやすい作品ではあるよね。
なので次も読むでしょう、多分。

<収録作品>

跡取り三人 / こいさがし / くたびれ砂糖 / みどりのたま / たぶんねこ

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2014/07/03

西條奈加/三途の川で落しもの

三途の川で落しもの

橋から転落し瀕死の状態のまま三途の川の岸まで辿り着いてしまった小学生・叶人は、輪廻の輪から外れ三途の川で渡し守をする2人の男の仕事の手伝いをすることになる。

ファンタジー。
面白かった。
現代の小学生と江戸時代の男たちの噛み合ってるようで噛み合ってないコミカルなやり取りが楽しい。

その中で「生きること」「死ぬこと」「幸せ」といった難しい命題がさり気なく語られている。
さりげなさすぎてちょっと食い足りない感じはあるけど、全体の雰囲気とのバランスを考えるとあのくらいがちょうどいいかも。

耳から聞いて想像したままの姿で出てくるあの世の番人、ダ・ツ・エヴァや県営王の造形も面白かった。

最後の章で明かされる叶人が三途の川まで辿り着いてしまった背景はちょっと唐突。
最初のほうで家族の話が繰り返し出てくるのでそれに関連してるのかと思ったら、そうじゃなかったのでちょっとビックリ。
確かに叶人にとっては重い事実で本人がそれを忘れてしまおうとしていたのだと思うけど、それでももう少し早い時点で少しずつ明示されていたほうがよかったような気がする。

あと、エピローグ。
あれはあれで微笑ましくていいんだけど、もうちょっとクールに終わったほうがよかったかなと思う。

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