森炎/あなたが裁く! 「罪と罰」」から「1Q84」まで 名作で学ぶ裁判
東大法学部卒業、地裁の裁判官を経て現在は弁護士という経歴の著者による「映画や小説の名作の中で起きた事件を実際の法廷で裁くとどうなるか」という内容の本。
内容が丁寧、かつ簡潔でわかりやすい。
「(裁判員制度の導入により)「一億総裁判官」時代の到来を受けて、市民が真に気軽に楽しく読めて、なおかつ刑事裁判の全体像が自然に判るように工夫した」本とのことで、その目的にあった内容、文章で読みやすく勉強になった。
事件とかの内容を読むとどうしても加害者側の性格、生い立ち、日常の生活態度などを加味して考えがちだけど、実際の裁判ではそういったことはあまり重視されないらしい。いわゆる「罪を憎んで人を憎まず」ってことなのかな。
でも一般人としてはなかなかそう割り切って考えるのは難しいと思うんだけど。そういう心理や知識をきちんと学んだ人がやるからこその裁判なんじゃないの?と思うので、やっぱり裁判員制度には疑問しか残らないな。
「ウエストサイド物語」から「1Q84」まで全部で24の映画、小説作品が取り上げられているけど、裁判の内容以上に特筆すべきは「その作品のあらすじの説明がすごく上手!」ということ。
簡潔にサラッと書いてあるけど、非常に解りやすくそれでいて物語の本質的な部分も見えるいい文章だった。
他の作品を題材にしたものも読んでみたいな。
続編希望。
イラストレーターのたなか鮎子さん( http://www.ayukotanaka.com/ )によるカバー+扉イラストも印象的。
刑事裁判は決して人間性自体を裁くものではありません。刑罰は倫理や道徳とは違うのです。裁判でモラルを押し付けるようなことになってはいけません。裁判所は世間的なモラルとは一線を画さなくてはならないのです。(p127)
刑事裁判は、あくまで、検察側の立証が十分かどうかを判断するものです。検察側と被告側のどちらの言い分が正しいかを判断するものではありません。(p220)
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