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2014年8月の6件の記事

2014/08/27

小路幸也/札幌アンダーソング

札幌アンダーソング (単行本)

冬の札幌の住宅街で発見された全裸死体。
捜査に当たった刑事の仲野久と先輩刑事 根来は、その死体の状況から以前「自殺」「事故」として片付けられた死体との共通点に気づき独自に捜査を始める。
そこで久たちは一人の少年と出会う。

う~ん、微妙。
登場人物は魅力的だし文章もサラっとしてて読みやすいけど、なんか納得いかない。
あれだけ死人がバンバン出てきたのにそんなに軽快に終わられてもな~という感じ。
ラストもきちんと終わった感じがなくてモヤモヤが残った。

春も魅力的なんだけど、ちょっと能力盛りすぎじゃないかな。
あまりにも常人離れした能力持ちすぎで現実味がなかったし、それぞれが打ち消し合ってしまってだんだん何が凄いのかわからなくなってた部分もあった。
だいたい、そんなに美形で天才でしかも変態(!)な少年が地方都市にいたらもっと噂になって大変じゃないの~?と思うわ(^^;
とはいえ、そういう「人としてのキャパを超えている」設定にしても、本人は屈託なく楽しんでるキャラにしちゃうところは小路さんらしくて好きだけどね。

あと、敵方の人物があまり頭よさそうな感じには思えなくて、直接対決の部分もわりとアッサリ終わってしまったのが残念。

キュウちゃん(仲野)と根来のコンビはいい感じなので、春の能力や家族もあまり特殊に走らず刑事2人を中心にしたもっと普通の刑事モノを読んでみたいところ。

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2014/08/24

石持浅海/二歩前を歩く

二歩前を歩く

軽いホラー風味のミステリー短篇集。

面白かった♪
前に読んだ『三階に止まる』と似てるかな。
違っているのは、前作は登場人物が一定しない「ノンシリーズ」のような雰囲気の作品集だったけど、今回は登場人物がすべてある特定の会社の社員で、それぞれの身の周りで起きた(オカルト的に)不思議な現象を同社の研究所勤務の小泉という特定の人物が謎解きするというパターンだったというところ。

この「探偵役を特定する」という仕掛けが非常に効果的で、全体的に『三階に止まる』よりも安定して面白かったし、結末のちょっとゾクッとする感じも活かされていたと思う。
そして何より小泉のキャラが素敵すぎるw
頭が良くて論理的で、人当たりがよく面倒見がいいけど偉ぶらない。
しかも仕事も家庭も大切にするタイプらしい。

石持さんの作品に出てくる探偵役はいつも頭が良くて素敵な人が多いけど、また新たなキャラ登場で楽しかった。
しかし、同じ会社でこんなにいろんなことが起きるなんて…この会社大丈夫なのかしら(^^;
しかも考えようによっては「すべての契機になっているのは小泉なのでは」とも思えるところがよけい怖い。

ゾワゾワとするラストの話を続けてきたその最後、「九尾の狐」だけ他の話と違うエンディングに持っていったところが巧いなあと思った。
サックリ読めるけど満足感の高い1冊だった。

<収録作品>
一歩ずつ進む / 二歩前を歩く / 四方八方 / 五ヶ月前から / ナナカマド / 九尾の狐

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2014/08/23

都筑道夫/退職刑事<1>

退職刑事 (1) (創元推理文庫)

主人公は退職した元刑事。
5人息子のうち唯一自分と同じ職業を選んだ五男の住む団地に足繁く訪れ、現在捜査中の事件の概要を聞き出しそこから犯人を推理するという安楽椅子探偵もの。
’73~’75年初出の短編7編を収録。

書かれたのが約40年前ということで事件の設定には少々古臭さがあるものの、すべて同じ場所、同じ人物だけの会話で推理が進んでいくという安楽椅子探偵もののお手本のような作品でとても楽しめた。

事件についてのやり取りもいいけど、その間に挟まれる何気ない親子の会話や父子が事件の話をしている間は別室でTVを見ていて、時々お茶を入れに現れる息子の妻の存在が自然でよかった。

また、事件の内容がほとんど男女間のいざこざ的な内容だったのも印象的。
最後の著者のあとがき、法月綸太郎氏の解説も含め楽しめる1冊だった。

この作品集は2002年に東京創元社から全6巻で再刊されたシリーズ。
地元の図書館になかったので他の地区の図書館から取り寄せて貰ったけど時間がなくて3冊のうち1冊しか読み終わらず(延長が出来なかった)(T_T)
しばらく時間を置いてまた続きを借りてこよう。

<収録作品>
写真うつりのよい女 / 妻妾同居 / 狂い小町 / ジャケット背広スーツ / 昨日の敵 / 理想的犯人像 / 壜づめの密室

もっとも素朴で、純粋な知恵の物語であるためには、背景の多様さや臨場感はむしろ邪魔で、謎と論理の変化があればよい。(著者あとがきより)

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2014/08/11

贋作館事件

贋作館事件

著名なミステリ作家の作品を現代日本の8人のミステリ作家がパロディ、パステーシュに仕上げた短篇集。執筆陣は芦辺拓、北森鴻、小森健太朗、斎藤肇、柄刀一、二階堂黎人、西澤 保彦、村瀬継弥の各氏。

対して取り上げられているのはクリスティ、チェスタトン、アシモフ、ドイル、ルブラン、小栗虫太郎、乱歩、久生十蘭、都筑道夫という錚々たるメンバー。
といっても例によって例のごとく勉強不足の私は原作を知らないものがたくさん(というか、ほとんど)だったのでホントの面白さにはたどり着けないけど。

そんな中で過去に読んだことのあったのはアシモフの『黒後家蜘蛛の会』。
このパロディ『ありえざる客』(ゲストがアシモフ本人w)はちょっとニヤニヤしながら読めたので他の作品も原作を知っていたらもっと楽しめたんだろうな。

それでも、そういった知識がなくても楽しめる作品になっているところにパロディを書いた作家たちの力量を感じる。
更に1人1作づつの作品が終わったあとに、今読んだ内容の斎藤肇氏によるショートショートパロディが出てくるという遊び心満載の作品集だった。
奥付までパロってあるのが楽しい。

こういう企画物のアンソロジーの中でもかなりよく出来た1冊ではないかと思う。

<収録作品>
「ミス・マープルとマザーグース事件」村瀬継弥 / 「ブラウン神父の日本趣味(ジャポニズム」 芦辺拓・小森健太朗 / 「ありえざる客 贋の黒後家蜘蛛の会」斎藤肇 / 「緋色の紛糾」柄刀一 / 「ルパンの慈善」二階堂黎人 / 「黒石館の殺人《完全版》」小森健太朗 / 「黄昏の怪人たち」芦辺拓 / 「幇間二人羽織」北森鴻 / 「贋作『退職刑事』」西澤保彦 / 「贋作家事件」斎藤肇

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2014/08/06

沢木耕太郎/ポーカー・フェース

ポーカー・フェース (新潮文庫)

エッセイ集。

沢木さんの本を読むのは久しぶり。
沢木さんのエッセイを読むといつも「男前だなあ」と感じるけど、今回も相変わらずシンプルかつ潔さを感じる文章で読んでいて心地いい。
普段しつこくオチのある話に慣れすぎているためか、あまりに潔すぎる結末にちょっと物足りなさを覚えるくらいだった。

今回は著者自身の経験だけでなく、作家仲間や女優、歌手らとの交友関係について触れている内容も多かった。
特に女優の高峰秀子さんとの交流の話が印象的。
ほとんど知らない女優さんだけど、沢木さんが「すばらしい書き手だった」と言う彼女の本が読みたくなった。

私はこれまで財布というものを持ったことがない。金はそのとき使えるだけのものがジーンズのポケットに突っ込まれている。それがなくなれば、またあるだけの金を突っ込んでおく。かりに、使える金がなくなり、ポケットに一円も入れられないようなときがあっても、それはそれで構わない。p315

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2014/08/03

都筑道夫/キリオン・スレイの生活と推理

キリオン・スレイの生活と推理 (1977年) (角川文庫)

東京・目白の友人宅に居候しているアメリカ人の前衛詩人 キリオンが持ち前の好奇心から身の回りで起こる事件に首を突っ込んで真相を暴いていく短編ミステリー。
'77年文庫化された作品。

主人公のキリオンが若者なので当時の若者文化中心に描かれているせいか多少古臭い感じがしたし、殺人など重大かつ込み入った事件に民間人(しかも外国人)が首を突っ込むのはどうなのかなという部分もあったけど、話としてはけっこう面白かった。

以前読んだ『古書ミステリー倶楽部』に入っていた作品が面白かったので読んでみたんだけど、なんとなくその時に感じたキャラと違っていたように思えたので『古書~』の作品も読んでみたけど、設定は特に変わってなかった。
何か他の作品と勘違いしたのかな(?_?)

人気シリーズだったようでこれ以外にあと3冊出版されているみたい。機会があったら読んでみよう。

<収録作品>
なぜ自殺に見せかけられる犯罪を他殺にしたのか / なぜ悪魔のいない日本で黒弥撒を行うのか / なぜ完璧なアリバイを容疑者は否定したのか / なぜ殺人現場が死体もろとも消失したのか / なぜ密室から凶器だけが消えたのか / なぜ幽霊は朝めしを食ったのか

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