« 2014年11月 | トップページ | 2015年1月 »

2014年12月の11件の記事

2014/12/31

三上延/ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~

ビブリア古書堂の事件手帖 (6) ~栞子さんと巡るさだめ~ (メディアワークス文庫)

シリーズ最新刊。

面白かった。
スルスルと読み終わって、気がついたら長編だった。
一冊まるまる太宰。
そしてあの人もこの人もこう繋がるわけなのね!という怒涛の展開。
物語の面白さと伏線回収の見事さが感動的だった。
栞子と五浦の関係もいい感じ。

たまに出てくるドギマギモードの栞子にはやっぱりちょっとイラッとさせられるけど、それを逆手にとったトリックもあったりしてなるほど、と。

ただ、今までは不気味だなとしか思わなかった智恵子だけど、今回冒頭で大輔と話しているシーンを読んで、いつまでも他人と駆け引きするような会話しか出来ない様子がちょっと可哀想だ思ってしまった。
今回の作品では智恵子と同じくらいの年齢の女性が2人出てくるけど、現状や他者を受け入れ柔らかく前向きに生きている姿が素敵に見えた。

残りはあと1冊か2冊とのこと。
智恵子と栞子の母子がどんな結末を迎えるのか興味深い。
栞子と大輔はこのまま行く…よね?もしかしたらどんでん返しがあるのかも?
予定調和では終わらない可能性も大かな。
いずれにしても次が楽しみ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/28

海堂尊/玉村警部補の災難

玉村警部補の災難 (『このミス』大賞シリーズ)

桜宮市警に出向中の加納警視正が手がけた事件を相棒(?)の玉村警部補が振り返る…という構成の短篇集。

久々に読むバチスタシリーズ。
このシリーズは人物関係も伏線も展開も複雑なので長編だと途中で息切れしてしまうことも多いけど、これは読みやすくて面白かった。

実力と頭脳と行動力を兼ね備えていてしかもそれを自負している加納が事件解決のためにガンガン飛ばして行くのが小気味いい♪
それに振り回されるタマちゃんとグチ先生は大変だろうけど…(汗)
でも逆に加納の2人への信頼も感じられた作品だった。

また、こういった軽めの短編にもAiやDNA鑑定など科学的捜査の早期導入や検死体制の地域格差についての提言をさり気なく(でもないかw)入れてくるあたりが、海堂さんらしいなあという印象。
最後の「エナメルの証言」が犯人側の登場人物含めて特に興味深かった。

<収録作品>
不定愁訴外来の来訪者 / 東京都二十三区内外殺人事件 / 青空迷宮 / 四兆七千億分の一の憂鬱 / エナメルの証言

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/27

梶よう子/ことり屋おけい探鳥双紙

ことり屋おけい探鳥双紙

3年前に懇意にしている旗本からの依頼で幻の鳥を探す旅に出た夫・羽吉の留守を守って一人「ことり屋」を続けるおけい。
一日千秋の思いで羽吉を待つおけいの想いとその周囲で起こる事件を描いた連作短編集。

しっとりとした雰囲気でとてもいい作品だった。
旅に出たまま帰らない羽吉を待ち焦がれるおけいの気持ちが随所に描かれているけど、うるさく感じない程度に抑制が効いているのがよかった。
またおけいを気にかける戯作者・馬琴や八丁堀同心・永瀬とその娘・結衣との交流も丁寧に描かれていて物語に奥行きを与えていた。

そして何より鳥たちについての丁寧で愛情溢れる描写がとてもよかった。
今のように色々な動物を手軽に手に入れることの出来なかった江戸の人たちにとって小さな鳥は今以上に人に愛されていたんだろうな。
珍しい植物や鳥、獣を集めた「花鳥茶屋」というのも興味深い。

ただ、ラストはちょっと強引だったような。
ここまで引っ張ったわりにあっけないな、という印象だったのがちょっと残念。
登場人物はみんな魅力的なので続きが読みたいけど、このラストだと難しいのかな。

<収録作品>
かごのとり / まよいどり / 魂迎えの鳥 / 闇夜の白鳥 / 椋鳥の親子 / 五位の光 / うそぶき

表紙のイラストも素敵だった。
この方かな?→ http://pine.chu.jp/pine/

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/24

土橋章宏/幕末 まらそん侍

幕末 まらそん侍

安政二年、上野国安中藩で開催された遠足(とおあし/現代のマラソン)を題材にした連作歴史小説。

最初は登場人物の言動が歴史小説にしてはちょっとフランクすぎて「あれ?」って感じだったけど、読んでるうちにだんだん違和感がなくなってきて楽しめた。

幕府の隠密として安中藩に送り込まれていた男が自分の存在意義に疑問を持ちいつもと違う報告を送ったために苦境に立たされていく…という内容の「隠密」がよかった。
全体的にハートウォーミングな結末。ちょっと甘いかなと思うけど、読後感は悪くなかった。

ちなみに「安政遠足」は史実らしい。
http://www.wikiwand.com/ja/%E5%AE%89%E%94%BF%E9%81%A0%E8%B6%B3…
あと、著者は映画『超高速参勤交代』の原作を書いた人なのね。

<収録作品>
遠足 / 逢引き / 隠密 / 賭け / 風車の槍

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/21

近藤史恵/胡蝶殺し

胡蝶殺し

急死した先輩役者の遺児の後見をすることになった萩太郎。
同い年の息子を持つ歌舞伎役者の葛藤と少年たちの成長を描いた物語。

面白かった。
タイトルからもっと剣呑な話を想像していたし前半はちょっとハラハラする展開だったけど、ラストは希望が見える綺麗な結末で満足。

父親が亡くなり寄る辺がなくなった秋司と自分の子どもである俊介の間に立ち、どちらの才能も活かしてやりたいと葛藤する萩太郎の気持ちが丁寧に描かれていて説得力があった。
そして最後に明かされる少年の決意に胸を打たれる。
ちょっと少年たちが出来過ぎな感はあるけどいい話だった。

「才能はあるが、努力が足りない」などと、したり顔に言う人がいるが、本当の才能というのはそんな単純なものではない。
努力せずにはいられない衝動も含めて、才能というのだ。
(p38より)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/19

畠中恵/えどさがし

えどさがし (新潮文庫)

「しゃばけ」シリーズの番外編。
5つの短編のうち若だんなは1つの話でチラリと顔を出すだけで、あとは他の登場人物がメイン。
長く続いているせいかちょっとマンネリ気味なのでこういう趣向は楽しい。

気に入ったのは「太郎君、東へ」。
河童の女親分、禰々子さんの気風のよさ好きだな~♪
全体的にハッキリしない登場人物が多いので、禰々子さんの真っ直ぐではっきりした性格が一層際立つ。
上野広徳寺の寛朝和尚を主人公にした「たちまちづき」も、特に後半の展開がよかった。

日限の親分のおかみさん・おさきを主人公にした「親分のおかみさん」は今ひとつ。
前述した「ハッキリしない登場人物」の代表のようなおさきの性格設定が冒頭から続くので、ちょっとウンザリ。
江戸の下町の長屋に住んでいるからといってみんなが元気なおかみさんになるわけじゃないと思うけど、考えてることが後ろ向き過ぎてイライラする。
だいたい、いくら寝たり起きたりの生活が続いてるからといって、結婚して何年も経つ女が「これからお昼はどうしたらいいんだろう」って真剣に悩むっておかしくない?
お姫様じゃないんだからそのくらい今までの経験でどうにかなりそうだと思うんだけど。
まあ、話の展開は、そんなおさきが生さぬ仲とはいえ人の親になることで変わっていくということだから「あえて」なのかもしれないけど。

佐助と仁吉の話はどちらも雰囲気は悪くないし2人の気持ちも伝わってくるんだけど、ちょっとひねりすぎなのが今ひとつ。
別に謎ときとかいらないんじゃないの?と思う。
もっとシンプルな話のがよかったな。

<収録作品>
五百年の判じ絵 / 太郎君、東へ / たちまちづき / 親分のおかみさん / えどさがし

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/15

梶よう子/桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介

桃のひこばえ 御薬園同心 水上草介

シリーズ2作目。

前作同様、御薬園の草花を丁寧に取り入れた話の内容自体はいいんだけど、登場人物たちには今ひとつ気持ちが入らないまま読了。

特に主人公の草介の鈍さが酷い。
ほっこりキャラのつもりかもしれないけど、却ってイライラする。

千歳の頑なっぷりも同様。
この2人のあれこれがなければもうちょっとスムーズに読めた気がする。
その話はどこか他でやってくれないかなあ、という感じ。

今作に四角四面のイマイチキャラとして登場する御薬園の見習い同心・吉沢のほうがだんだん「いい味出してるなあ」と思えるくらいだった。

表題作で登場する吉沢の妹・美鈴が草介のボケぶりを目の当たりにして
「ほんと、鈍い。おかわいそうすぎます。」
っていうところはちょっと笑えた。
こういうふうに突っ込んでくれるキャラがいればまた違うのかもね。

<収録作品>
アカザのあつもの / 大根役者 / 女房のへそくり / 柴胡の糸 / 桃のひこばえ / くららの苦味 / 清正の人参 / 相思の花 / 葉の文

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/12

梶よう子/お伊勢ものがたり 親子三代道中記

お伊勢ものがたり 親子三代道中記

隠居した母、他家に嫁いだ娘、嫁入り前の孫娘の親子三代のお伊勢参りの旅。案内役はちょっと頼りない御師の手代見習い。笑いあり、涙ありの道中記。

ちょっと事件に巻き込まれすぎじゃないかとも思うけどテンポがよく楽しく読めた。
江戸から伊勢までの道中の名物や景色、風習がさり気なく物語に組み込まれているので一緒に旅をしている気持ちになる。
しかし、毎日何キロも歩いて旅をするのって凄い。
現代人には考えられない。
道中、人に会いすぎって気もするけどみんな歩きならそういうものなのかな。

初めての遠出の旅をする親子3人だけでなく、案内役の手代見習い久松にとっても自分を変える旅として描かれているのがいい。
ただ、その変化の過程がちょっと曖昧なので、もう少し心理描写があるともっとよかったかな。
設定では久松は若くていい男設定なんだけど、私の脳内では何故か(と言っては失礼か(^^;)花組の植本潤さん変換だったw

最後はちょっとうまく行きすぎだけど、楽しく読めていい話だった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/09

西條奈加/まるまるの毬

まるまるの毬

麹町で人気の小さな菓子屋「南星屋」。
武士の身分を捨てて菓子職人になった主人の治兵衛と娘のお永、孫のお君の三人の周囲で起きる事件を描いた連作短編時代小説。

久しぶりに泣きながら本を読んだ。
西條さんの作品はどれもいいけど、これは一番好きかも。

治兵衛、お永、お君そして治兵衛の弟で僧侶の石海ら登場人物の設定がしっかりしていて、読んでいると彼らの言葉や動き、想いまでもが届いてくるようだった。
特に人物として秀でているわけではないけど周囲の幸せを願いながら日々を笑顔で過ごそうとする人々の生き方が心地よかった。

最初は菓子をテーマにした軽めの話かなと思っていたら中盤以降の怒涛の展開!
その緩急がすばらしかった。
不安と期待、喜びと失望、迷い、戸惑い…そういった感情が丁寧に描かれていて胸に迫る。
何よりよかったのはどんなに失意の底にあってもそこには必ず希望も描かれていたこと。

すべてが丸く収まるわけではない、でも最後は笑顔で、という落とし所も上手かった。
とても素敵な読書時間だった。満足♪

<収録作品>
カスドース / 若みどり / まるまるの毬 / 大鶉 / 梅枝 / 松の風 / 南天月

タイトルの『まるまるの毬』、「毬」は「まり」かと思ったら「いが」なのね!
「まり」と「いが」が同じ漢字だって初めて知った。
日本語、難しいわ。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/08

杉本章子/精姫様一条 お狂言師歌吉うきよ暦

精姫様一条 お狂言師歌吉うきよ暦 (講談社文庫)

宮家から将軍家の養女になった姫の嫁ぎ先を巡るお家騒動の顛末を描いた長編時代小説。

文章は読みやすいし雰囲気は悪くないんだけど登場人物が多くて人間関係が煩雑すぎる。
もうちょっと登場人物を絞って、さらに視点をある程度定めて欲しかった。

あと、タイトルロールなのに精姫様自身はほとんど登場しないのも残念。
逆に婿候補の某藩の若殿はある程度ページを割いて出てくるものの、こちらは中途半端な感じで退場してしまって消化不良気味。

この騒動によって起きた殺しの下手人を探るお狂言師の歌吉と小人目付の日向の、お互いに想いあっているのにお役目柄近づけないという距離感の描写がよかった。
また、反対派で輿入れを邪魔しようとする藩の目付を、本来は敵対する立場の日向が助けるあたりは意外性があって面白かった。

あと、登場人物が使う江戸言葉が綺麗なのが好印象。

しかし、奉行所とかが以前盗賊だった人間を改心させて手下として使うとかはよく見るけど(鬼平とかね)、ごく一般の町人を幕府の役人が手駒として使うってことって本当にあるの?
しかも歌吉なんてまだ若い女性なのに、けっこう危険な役回りもさせられてたりして。
あまり聞かない設定なのでそのあたりがちょっと気になった。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2014/12/02

梶よう子/柿のへた 御薬園同心 水上草介

柿のへた 御薬園同心 水上草介 (集英社文庫)

将軍様の薬草園・小石川御薬園の管理を受け持つ御薬園同心を主人公にした連作短編時代小説。

正直、登場人物にはそれほど好きなタイプはいないんだけど(なんだかどの人も「う~ん?」って感じ)、全体的な雰囲気は嫌いじゃないという不思議な作品。

どの作品にも草介が愛する御薬園の植物たちが無理なく取り入れられていてその自然さがいい。

続刊も出ているみたい。
この後、どんな展開になっていくのかな。

<収録作品>
安息香 / 柿のへた / 何首烏(カシュウ) / 二輪草 / あじさい / ドクダミ / 連子 / 金銀花 / ばれいしょ

| | コメント (0) | トラックバック (0)

« 2014年11月 | トップページ | 2015年1月 »