東野圭吾/祈りの幕が下りる時
加賀恭一郎シリーズ最新刊。
面白かった。
圧倒的な読みやすさで一気読み。
相変わらず人間関係がかなり複雑で名前がたくさん出てくるので後半ちょっと混乱した部分はあるけど、それでも事件の発端から結末まで興味を失わせずに書き抜く筆力がすごい。
さらにそこに十数年前に亡くなった加賀の母親の消息も絡めて、加賀の日本橋シリーズの終幕、そして新たなシリーズへの幕開けも期待させる作品として描いているのが素晴らしかった。
誰かの天才的な推理力で一気に解決するのではなく、一つ一つの疑問を地道に潰していった先に見えてくる真実を丁寧に描いているからこそ最後のページまで楽しめた。
他部署の同期や外部の人間が垣間見た、捜査する加賀に対する感想がさり気なく入っているのも効果的。
今回は加賀と松宮が一緒に捜査することになるわけだけど、この2人のバランスも自然でとてもよかった。
実際にこんなことがあったら偶然が多すぎると思うけど、これは「そういう運命の中にある物語だ」と納得できる出来だった。
満足。
「原発はねえ、燃料だけで動くんじゃないんだ。あいつは、ウランと人間を食って動くんだ。人身御供が必要なんだよ。わしたち作業員は命を搾り取られてる。わしの身体を見りゃあわかるだろう。これは命の搾り滓だよ。」(東野圭吾『祈りの幕が下りる時』p287より)
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