高殿円 / 剣と紅
遠州の名門・井伊家の一人娘として生まれながら15歳で髪を下ろし尼となり、その後「次郎直虎」という男名で井伊家を支えた女性の物語。
初読みの作家さん。
本屋で見た文庫の表紙とタイトルが気になったので図書館で借りてみた。
(ただし、図書館で借りたハードカバー版は表紙イラストが違っていて残念。私は文庫版のが好きだな)
読みやすくて一気読み。
いつもの通り、史実の話になっちゃうと関係性、特に姻戚関係が複雑すぎてさっぱり判らなかったけど、それ以外の部分は面白かった。
特に主人公も著者も女性のため、女性同士の関係を描いた部分が多かったのが印象的。
ただ流れに翻弄されるのではなく、その中で自分の役割と生き方をきちんと把握し、たくましく生きていく女性たちの姿が随所に描かれていた。
人に見えないものを見る力を持ち男名を名乗り地頭として家を支えた香(かぐ / 直虎の本名)よりも、政略結婚させられたと見えつつ女性ならではの情報網で生き抜く他の姫たちのほうがしたたかに見えた。
『おなごが攻略で他国へ嫁ぐのはただの悲劇ではない。哀れ、悲劇で終わらせてはならぬ。男が剣で断ち切ったものを血でつなげるのはおなごだけよ。香、そなたも出家したからとて俗世と縁が切れるわけではないこと、よくよく身に染みさせよ』(p220)
『輿入れはおなごのいくさ。紅はおなごの剣。無為に生きる暇などどこにもない。-わたくしはこれから、松下の家で当分いくさにあけくれまする』(p324)
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