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2015年6月の7件の記事

2015/06/28

門井慶喜 / 注文の多い美術館 美術探偵・神永美有

注文の多い美術館 美術探偵・神永美有

シリーズ3作目。

久しぶりに読むけど、この作品ってこんなに軽くてドタバタした感じだったっけ?もうちょっとシリアス路線のような気がしたんだけど。

文章は読みやすいんだけど、登場人物が自分勝手なヤツばっかりなので読んでて疲れる。
特にイヴォンヌはもう「うるさーい!」って叫びたくなる感じ。
まったく共感出来ないキャラで出てくるたびにイライラした。更に佐々木もけっこう変なキャラになってるし。
唯一安心感があるのは神永なんだけど、逆に安定しすぎていて面白みがないというか…。

そういう登場人物たちの騒がしさに意識を持って行かれてしまうせいか、肝心の美術品にまつわる謎もあまり納得した気分にはなれず。

けっこう気に入ってたシリーズなんだけど、もういいかなあとちょっと思ってしまった。
残念な読後感。

表紙のイメージも前2作とはまったく違うので違和感があった。

<収録作品>
流星刀、五稜郭にあり / 銀印も出土した / モザイクで、やーらしい / 汽車とアスパラガス / B級偉人 / 春のもみじ秋のさくら-神永美有、舌にめざめる

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滝田務雄 / 田舎の刑事の好敵手

田舎の刑事の好敵手 (ミステリ・フロンティア)

恐妻家で思い込みが激しく、ちょっと抜けているけど捜査の腕だけは確かな刑事・黒川鈴木を主人公にしたコメディミステリー。

何気なく借りてしまったけど、シリーズ物でしかも3作目らしい(汗)
でも、そんなに違和感なく読了。

正直、本編の事件以外の部分に力が入っている作品(特にお笑い方向に)ってそんなに得意じゃないので読み始めは大丈夫かな?と不安だったけど、思いの外スムーズに読めた。

主題に関係ない会話や展開も多いけど、会話のテンポがいいし話題を転換するタイミングもよかった。
黒川の昔からのライバルで別の方向にずれている透山の設定も面白かった。

ただ、白石の「~ですぜ」っていう喋り方はちょっと違和感あり。
あと黒川や白石など主要な登場人物の外見がイメージしにくくてちょっと入り込みにくい部分もあった。
シリーズの最初から読んだらまた違うのかも。

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2015/06/23

市井豊 / 人魚と金魚鉢

人魚と金魚鉢 (ミステリ・フロンティア)

「聴き屋」シリーズ第二弾。
今回も短編集で5編収録。

前作を読んでからずいぶん経つのでかなり忘れていることが多かったけど、ストーリーを追うのには特に問題はなし。
会話のテンポが良くて読みやすかった。

最初の「青鬼の涙」だけは主人公の柏木の家族の話。
柏木って(朧気な記憶ながら)もっとしっかりした青年のイメージがあったのに、冒頭からかなり天然ボケな会話が繰り返されるのでなんかちょっと違和感。
(最初、別の登場人物の家族の話かと思った)
子どもの頃の、おじいさんとの距離感もなんとなく以前読んだ(そしてこのあと出てくる)柏木のイメージとは違っていたような。
大学を舞台にした他の4作は以前のイメージに戻ったのを考えると「キャラクターはその場の相対的な関係性で決まる」ってことなのかな。
(大学では周りがみんな困ったちゃんなので柏木がしっかりして見える、的な)

妹の立夏ちゃんが可愛かった。
今度は兄弟の話も読みたいな。

ストーリー展開はちょっと強引な部分がチラホラ。
でも個性的なキャラの書き分けとか、結末の落とし所は嫌いじゃなかった。
それに前回みたいに殺人事件が起こらなかったのもよかった。

しかし、この作品を読むとどうしても『動物のお医者さん』を思い出すな(笑)

<収録作品>
青鬼の涙 / 恋の仮病 / 世迷い子と / 愚者は春に隠れる / 人魚と金魚鉢

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2015/06/21

有栖川有栖 / 怪しい店

怪しい店

火村准教授+作家アリスシリーズ。【店】をテーマにした作品を集めた短篇集。

今回も読みやすくて一気読み♪
どの作品も個性的で楽しかったけど、一番好きだったのは火村が調査のために訪問した土地で偶然入った理髪店での出来事を語る「潮騒理髪店」。
このタイトルにもなっている理髪店とそこの老店主の醸し出す雰囲気がとてもよい。
その土地で火村が出会ったちょっとした「謎」(事件ではない)をアリスに解かせるという話だったんだけど、そうしたミステリー部分はなくてもよかったかもと失礼な感想を抱いてしまった(笑)

以前『暗い宿』と題された【旅館/ホテル】をテーマにした短篇集があったけど、それの続編らしい。
そういえば『暗い宿』のときも「こんなホテルがあったら泊まってみたい」と思わされる描写があったなあ。
有栖川さんはそういう「理想の場所」の描写が巧い。

<収録作品>
古物の魔 / 燈火堂の奇禍 / ショーウィンドウを砕く / 潮騒理髪店 / 怪しい店

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2015/06/16

細谷正充・編 / 名刀伝

名刀伝 (ハルキ文庫 ほ 3-3 時代小説文庫)

世に「名刀」と呼ばれる日本刀とそれに関わる人々の物語を集めたアンソロジー。
執筆陣は浅田次郎、山本兼一、東郷隆、羽山信樹、津本陽、吉村兼一、白石一郎の各氏。

最近の日本刀ブームに乗っての刊行なのかもしれないけど、テーマに合った渋い作品ばかりで読み応えがあった。

どれも個性的で面白かったけど、私は山本兼一さんの「うわき国広」が好きかな。
町人(刀商)が主人公のせいか、全体的に軽みとユーモアがあって楽しめた。

浅田さんの「小鍛治」は『沙高樓綺譚』の中の1編。
このシリーズは舞台設定も内容もすごく好き。
ドラマ化したら面白そう。

好村兼一さんの「朝右衛門の刀箪笥」は主人公の朝右衛門のヤなヤツっぷりが徹底していていっそ清々しいくらいだった。
とはいえ、「家」とそこに伝わる「技」を正しく受け継ぐことを考えれば、朝右衛門の主張のが正しいような気がするけど。
結末が怖かった。

津本さんの「明治兜割り」は榊原鍵吉が主人公。
全然知らなかったけど、こんな強い人がいたんだ。
脳震盪を起こりにくくするために柱にくぼみが出来るくらい頭を何度も打ち付ける修行ってのが怖かった…。

本阿弥光悦ってもともと刀剣の鑑定をする家系に生まれた人だったのね。
知らなかったわ…(^^;

<収録作品>
浅田次郎「小鍛治」(小狐丸) / 山本兼一「うわき国広」(堀川国広) / 東郷隆「にっかり」(にっかり青江) / 羽山信樹「抜国吉」(粟田口国吉) / 津本陽「明治兜割り」(胴太貫正国) / 好村兼一「朝右衛門の刀箪笥」(和泉守兼定) / 白石一郎「槍は日本号」(日本号)

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2015/06/10

野口卓 / ご隠居さん

ご隠居さん (文春文庫)

腕がよく、また話も面白いのであちこちに贔屓の家を持つ流しの鏡磨きの老人・梟助(きょうすけ)が主人公。
最初のうちは事件が起こるわけでもなく得意先の相手から求められたテーマに沿った小咄や落語などを梟助じいさんが淡々と語るというちょっと不思議な内容。
ずっとこのまま行くのかな?と思ったら次第に話が大掛かりに。
このまま梟助じいさんの正体は明かさずに終わるのか(そして続編が?)と思っていたら、最後はひょんなことからじいさんの劇的な半生が回想されるというなかなか変わった展開の時代物だった。

出入りの職人に丁寧に接する贔屓客の家族と、どんなに大事にされても自分の分をわきまえて一歩引いた対応をし相手の家の内情は「見ざる言わざる聞かざる」を徹底する梟助じいさんの関係が気持ちよかった。
まあ、それも「生活がかかってないから」という部分はあるのかなあ。

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2015/06/06

田中啓文 / 鍋奉行犯科帳 お奉行様の土俵入り

鍋奉行犯科帳 (集英社文庫)

シリーズ5作目。相変わらず大食らいのお奉行様とその配下と周囲の人々、そして大阪の人々の「うまいもん」を組み合わせた楽しい話ばかりで面白かった。

この作品のいいところはやっぱり分かりやすく「勧善懲悪」なところ。
いろいろ事件は起きるけど最後は「まあ多分こうなるだろう」というところに落ち着いていく。
意外性はないけど、納得しやすい結末で気持よく読み終わることが出来る。

あと、食べることに夢中で我儘な久右衛門だけど、ケチンボだったり日和見主義ではないのもいい。
好き勝手やっている部分と、部下や周囲の人間を大切にして最後はきちんと決着をつける部分のバランスが巧い。

これからも長く続いて欲しいシリーズだな
(最近、刊行ペースが早いので嬉しいけど、同時に心配…(^^;)

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