カテゴリー「書籍・雑誌」の455件の記事

2008/07/13

斎藤美奈子/物は言いよう

物は言いよう
物は言いよう

内容(「BOOK」データベースより)
性や性別についての望ましくない言動を検討するための基準です。しかし、意識のありようまではとやかくいいません(心の中で「このブス」「このクソババア」と思うのはかまわない。)せめて、おおやけの場ではそれに相応しいマナーを身につけよう、との趣旨で考案されました。本書を通して、笑いながらFC (フェミコード)感覚を身につければ、いやーなセクハラ、思わぬセクハラとは、もうさようならです。

政治家や作家、文化人などが語った公の発言を「FC(フェミコード)」を基準に考察する、という内容の本。

その発言内容によってFC判断の難易度を★の数(1~3)で示してある。
★1つの発言、例えば

子どもを一人もつくらない女性が自由を謳歌して、楽しんで、年とって税金で面倒見なさいというのはおかしい。

程度なら私にも「(思うのは勝手だけど)それを公式の場で言っちゃダメでしょう」とすぐに判るけど、★3つレベル、例えば

近い将来、日本で新しい小説的思想、思想的小説にはっきりした世界を達成するのは、若い女性だと思います。

あたりになると「え、これのどこが差別なの?むしろ応援してる内容では?」と思えてしまうような内容が多かった。
著者に「これはこうこうこういう理由だからFC的に×なんだよ」って説明されれば「なるほど」と思うものの、うっかりすると自分も使ってしまいそう。
こういうことに敏感でいるのは難しいことだなあ、と思った。

FC的な問題って微妙だからこそちゃんと考えなくちゃならないんだろうけど、あまりにも微妙すぎると「面倒だから触れないほうがいいや」って考えに流れてしまって不可侵領域になってしまうこともあり得るんじゃないのかな。
(放送禁止用語みたいに「言わなきゃいいのか」って感じ)
でも、そうやって隠されてしまうのは却ってマズイことだと思うので、そのあたりのバランスをどうとっていくか、が今後の課題かも。
(と、どうとでも取れる適当な感想でお茶を濁す私であった…^^;)

でも、基本的に一般論として「女性は~」とか「男性は~」とかいった大きなくくりで話をするからつい口が滑っていってしまうんじゃないかな。
そうではなく、目の前にいる誰かをちゃんと見据えてその相手に向けた言葉を発すればFCに引っ掛かることってかなり減るし、もし引っ掛かっていたとしてもお互いにそれについてきちんと話すことが出来るような気がするんだけどどうだろう。

それにしても、かなり有名な、しかもその業界では力がありそうな人ばかりの発言を実名入りで取り上げて、冷静に的確にそのFC的勘違いを指摘する著者の度胸の据わり方に拍手。

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2008/07/11

大森望・豊﨑由美/文学賞メッタ斬り!~たいへんよくできました編~

文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編 (2008)
文学賞メッタ斬り! 2008年版 たいへんよくできました編 (2008)

いつも発行されているのに気づかなくて半年以上経ってからしか読めなかった「メッタ斬り」シリーズ。
今回は発売直後に本屋で発見して図書館に予約したので、2ヶ月遅れで読むことが出来た。
と言っても、実際にここに取り上げられている芥川賞・直木賞が決まったのは去年の10月だからそれから10ヶ月近く経っているわけではあるのだけど。

今回の「メッタ斬り!トークショー」のゲストは芥川賞受賞作家の長嶋有さんと直木賞受賞作家の石田衣良さんのお二方。
長嶋さんは穏やかでちょっと控え目でいい人な雰囲気だったけど、問題は衣良さん。
読む前から「メッタ斬り!コンビと衣良さんって合わないんじゃ…」と思っていたら、やはり…。
メッタ斬りコンビのツッコミに対する、衣良さんの(判っているクセにわざと)核心を微妙にずらした回答が噛み合わないこと!^^;
衣良さんの受け答えってなんとな~く勘に障るんだよねえ。
作品は好きだけど、あまりお友だちにはなりたくないタイプだなあ…。
と言って、メッタ斬り!コンビだったらいいかというとそうでもないけど(笑)

各文学賞候補作・受賞作、選考委員へのコメントは、いつも通り。
唯一違うのはいつも「大ハズレ」で終わっている芥川・直木両賞の予想が、何と両方とも大当たり(138回。芥川賞/川上未映子『乳と卵』、直木賞/桜庭一樹『私の男』)だったこと。
こういう企画は「何だかんだ言っても思った通りにはならない」というのが次回も続ける存在意義になるんじゃないのかな。
そういう意味でこの企画も「その役割を終えた」ってことなんだろうか…?
確かに最初の頃のパワーはなくなって、内輪受けで成立してる部分が多くなって来ているように思えるし、何よりやっぱり1,400円は「高い」と感じてしまうところがね~。
(図書館から借りて読んでるのに値段に言及する私もどうかと思うけど^^;)

企画自体もマンネリしてる気がするので、ここで心機一転ふりだしに戻って再構築してみるのもいいのかも。

ちなみに先日発表された第139回の芥川賞・直木賞候補は下記の通り。
<芥川賞>

  • 磯崎憲一郎「眼と太陽」
  • 岡崎祥久「ctの深い川の町」
  • 小野正嗣「マイクロバス」
  • 木村紅美「月食の日」
  • 津村記久子「婚礼、葬礼、その他」
  • 羽田圭介「走ル」
  • 楊逸「時が滲む朝」

<直木賞>

  • 井上荒野『切羽へ』
  • 荻原浩『愛しの座敷わらし』
  • 新野剛志『あぽやん』
  • 三崎亜記『鼓笛隊の襲来』
  • 山本兼一『千両花嫁』
  • 和田竜『のぼうの城』

相変わらず、殆ど知らない作家さんばかりだ…^^;
選考会は7月15日。

あと、こんなニュースもあったり。
伊坂さん直木賞予選前辞退  「ゴールデンスランバー」

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2008/07/05

藤本由香里/私の居場所はどこにあるの?少女マンガが映す心のかたち

私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち (朝日文庫 ふ 26-1)
私の居場所はどこにあるの? 少女マンガが映す心のかたち (朝日文庫 ふ 26-1)

内容紹介
1960年代末から90年代末頃までの少女マンガの描写から、その心理や内面に焦点をあてて分析。女性の恋愛観、セクシュアリティ、家族観、職業観の変化を精緻に追う。同時に少女マンガにおける性的指向に関する描写の変遷もをたどりつつ、来るべきトランスジェンダーの時代の幕開けを告げる。「居場所」を求めてさまようすべての人々に贈る必読の書。少女マンガ評論の新境地を拓いたと評価の高い幻の名著、待望の文庫化。

面白かった。

かなりガッツリした評論作品だったけど、文章が読みやすかったし、何より対象が私も親しみのある「少女マンガ」だということで非常に楽しく読めた。
特にこの作品が単行本として出版されたのが10年前(つまりそれより前の作品しか扱われていない)で、最近はとんとマンガから遠ざかっている私にも理解できる作品が多かったのが嬉しかった。

でも、面白かったけど、実際に自分がマンガを読むときにこの本の中に書かれているようなことを感じながら読んでいたのか?というと、それは疑問。
なので、「なるほど、そういう考え方も出来るのね」とは思ったけど、「そうだったのか、納得した」という感じではなかった。
少女マンガは「ジェンダー」とか「アイデンティティー」というものに深く関わっているという主張で、それは私もそうだろうなと思うけど、それ以前に私はただ単に「面白いから」読んでいたって意識しかなかったから。
(それとも自分が意識しないどこか深い部分でそれを感じていたんだろうか?)

ビックリしたのはこの本の中でいくつかの作品のあらすじが解説されている部分があるんだけど、それが私も何度も読んでよく知っている大好きな作品であるにも関わらず「ええっ、あのマンガってそんな内容だったっけ?」ということが多かったこと。
特に萩尾望都さんの作品(例えば「スターレッド」とか「マージナル」とか)は、私が覚えている内容と比べると「別作品?」と思えるくらい違っていたので思わず笑ってしまった^^;
一体私は何を読んでいたのであろうか?
読み流すにもほどがあるって感じだなあ(笑)
確かコミックスや文庫で持っていたと思うので、もう一回改めて読み返してみよう。

それと気づいたことが一つ。
私は作品を読むときに主人公(を始めとした登場人物)に自分を重ねるということを殆どしないということ。
これはマンガ以外の作品(例えば小説やお芝居や映画とか)でも同じ。
感想として「もし私だったら」と考えることはあるけど、基本的にいつも作品は「作品として」鑑賞しているなあ…ということを、この本を読んで確認した。
だから、入り込める作品になかなか出会えないのかも。
その分、この本にあるようにそれを読むことで葛藤したり考え込んだりはあまりしないし、作品のイメージや雰囲気に囚われてしまうことがないので、どんどん色んな作品をサクサク読んでいけるってことでもあるんだろうと思う。

そんな私でも物心付く前から20年以上に渡って読み続けた少女マンガから受け取ったものは計り知れないほど膨大である。
文庫解説で作家の三浦しをん氏が

「心身の構成成分の大半が少女漫画」

と書いているけど、私も「大事なことはみんな少女漫画から教わった」なあ。
考え方の基本的な部分とか、人との関わり方、更には生きていくのに絶対必要ない知識までいろんな部分で今の私の血となり肉となっていることがたくさんある。
(少女に限らず)漫画というメディアにはそういうパワーがあると思うので、これからも良質な作品を提供し続けていって欲しいなあ、と思う。

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2008/06/22

宮部みゆき/孤宿の人(上下)

孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (上) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)
孤宿の人 (下) (新人物ノベルス)

内容紹介
それは海うさぎとともにやってきた。
江戸から金比羅代参で讃岐を訪れた九歳の少女ほうは、丸海の港で置き去りにされ、たった一人見知らぬ土地に取り残される。幸い、丸海藩の藩医・井上舷洲宅に奉公人として住み込むことになった。それから半年……、この丸海の地に幕府の罪人・加賀殿が流されてくること……。海うさぎが飛ぶ夏の嵐の日、加賀殿の所業をなぞるかのように不可解な毒死事件や怪異現象が井上家と丸海藩に次々と起こっていく……。
宮部みゆきが紡ぎ出す時代ミステリーの最高傑作! 装いも新たにノベルスで登場。

ちょっと話が入り組みすぎていたかな~…という印象。
登場人物が多くて視点がその都度入れ替わってしまったことや、自然現象として起こったこと、人間が意図的に起こしたことの区別が曖昧だったこと、同じ内容がなんども繰り返されていたこと、などが原因かな。

江戸で重職に就いていながら、家族、部下を斬殺した罪で遠く離れた丸海藩に流され、幽閉されることになった加賀殿の存在。
この物語の中心となる人物の持つ意味や、裏に隠された真実というものがなかなか明かされず、その周辺で起こる不思議(不気味)な事件のみが前面に出てしまったことが物語を曖昧にしてしまっていたと思う。

登場する人物の多くは、そうした藩の重大事項に触れられる身分のものではなかったから、彼らの目や耳にはそうした「真実」は現れず、ただある意図をもった「噂」や「伝聞」だけで右往左往している姿が描かれているということなのだろうと思う。
そして最初のうちは、その描かれない加賀殿に対する不安が物語を盛り上げていたことも確か。
でも、それが何度も繰り返されるうちにちょっと飽きてきて「そろそろホントのことを明かしてくれてもいいのでは?」と思ってしまったのであった。

だから、下巻で加賀殿の事件の真実が明かされ、やがて「ほう」との交流が始まりその人間性が少しずつ明らかになってきてからは物語がスムーズに流れ出したように思う。

とはいっても、それでもどんどん読ませてしまう、そして最後に泣かせて納得のエンドマークで終わらせるところに宮部さんの実力を感じるわけだけど。

相変わらず心に沁みる小さなエピソードが巧い。
特にそれまで「阿呆の「ほう」」とバカにされ続け、自分でも自分に自信がもてなかったほうに、加賀殿から新しい名前の漢字を贈られるエピソードがとてもよかった。

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2008/06/16

金城一紀/映画編

映画篇
映画篇

出版社 / 著者からの内容紹介
物語の力が弾ける傑作!!
笑いと感動で胸が温かくなる傑作ぞろいの作品集。『ローマの休日』『太陽がいっぱい』など不朽の名作をモチーフに、映画がきっかけで出会った人々の友情や愛を描く。

映画をモチーフに、といってもその映画そのものをなぞるわけではなく、エピソードの一つとして使われているといった感じ。
いや、私が気が付いていないだけでもっと深くシンクロしているという可能性もあるか…^^;
でも、そういう知識がなくても気持ちよく楽しめる短篇集。
最初ちょっと重めな話で始まるので「ずっとこの雰囲気なのかな~?」と不安になったけど、だんだん柔らかで暖かな内容になってきたので安心して読めた。

特に愛する夫を亡くして元気がなくなった祖母を元気づけるために孫たちが2人の思いでの映画を上映する計画を立てる「愛の泉」がとてもよかった。
おばあちゃんの思い出話、個性的な孫たちそれぞれの生活と関係、そして中心人物(孫の1人)哲也の生活と恋の物語などいくつものストーリィが短い物語の中にきちんと収まっていて読み応えがあった。

昔自分の家族を殺した仇敵に立ち向かっていくパンチパーマで5等身のおばちゃんと両親が離婚しそうな小学生の男の子の1日だけの友情を描いた「ペイルライダー」も面白かった。

この作品で哲也たちが区民会館で無料上映する「ローマの休日」が全編に共通して出てきて、それぞれの登場人物たちが(そうとは知らずに)その上映会に集まってくるという設定が効果的。
映画という媒体の持つパワーを感じさせてくれる作品だった。

「太陽がいっぱい」「ドラゴン怒りの鉄拳」「恋のためらい/フランキーとジョニー もしくは トゥルー・ロマンス」「ペイルライダー」「愛の泉」の5編を収録。

「この世界は見えないシーソーみたいなものでさ、悪いほうに傾き過ぎたりすると、浜石教授みたいな人がそれに気づいてもう片っぽのほうに乗っかってくれるから、なんとかバランスを取れてるんだよね。わたしももっとがんばって、いつかちゃんとしたほうに乗っかれる人になりたいな」(「愛の泉」p342より)

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2008/06/09

文庫なのに?!

帰ろ~と思って池袋まで来たら、西武線が人身事故で運転見合わせ中。
「あ~あ」と思いながら、時間潰しに池袋リブロへ。

文庫の新刊平台を眺めていたら、以前読んだ『中村雅楽シリーズ』の著者戸板康二氏のエッセイ集『思い出す顔』を発見。
その後、ぐるっと棚を回っている間にもう一冊。
(なんと、谷崎の『細雪(上)』)

文庫2冊だし、どちらもそんなにページ数も多くない(300ページ前後)から1,500円も出せばお釣りが来るくらいかな~…くらいに思っていたのに、実際に会計したら合計が1,929円もしたのでちょっとビックリした。
取りあえずそのままお金を払ったけど、レジを離れた後念のため本を取りだして値段をチェックしてしまった。
(最近レジ打ちを間違われることが何度かあったので)
もちろん間違いではなくホントに1,400円と書いてあったわけだけど…こんなに高い文庫本を買うのは多分初めてだった。
1,400円って言ったら、もう殆どハードカバー価格じゃないですかっ!
(もちろん『思い出す顔』のほう。『細雪』は438円という文庫らしい価格だった(笑))

でも、講談社文芸文庫ってみんなこのくらいの値段なのね。
次に買うときは驚かないようにちゃんと覚えておこう。

思い出す顔 戸板康二メモワール選 (講談社文芸文庫 とF 1)
思い出す顔 戸板康二メモワール選 (講談社文芸文庫 とF 1)
細雪 (上) (新潮文庫)
細雪 (上) (新潮文庫)

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2008/06/08

【訃報】:氷室冴子さん死去

「なんて素敵にジャパネスク」 作家の氷室冴子さん死去(アサヒ・コム)

今日は朝から出掛けていてニュースも見ていなかったので、さっき帰ってきてムムリクさんのブログ記事(「ふたつの訃報」)にて訃報を知った。

私はコバルト文庫に代表されるような少女向けの小説にあまり夢中にあまり興味がなかったので氷室さんの作品もそれほど読んだ記憶がない。
覚えているのは上記のニュース記事のタイトルにもなっている『なんて素敵にジャパネスク』とあと数点くらい。
その中で一番印象的で今でも氷室さんの名前を聞くと真っ先に思い出すのは『なぎさボーイ』と『多恵子ガール』。
中学生(だったよね?)のなぎさと多恵子の不器用な恋の行方を描いた作品なんだけど、ほぼ同じ期間に起きたエピソードを『なぎさボーイ』ではなぎさ視点で、『多恵子ガール』では多恵子視点で書かれているのがとても新鮮で、「視点が変わるだけでこんなに物事って違うように見えるのね」と驚きながら読んだ記憶がある。
渡辺多恵子さんによる表紙のイラストがなぎさと多恵子のキャラにピッタリだったのも効果的だった。
(このシリーズはこの他『北里マドンナ』も読んだ記憶あり。ただ覚えているのはかろうじてタイトルだけみたい…)

それからAmazonで作品リストを見ていたら、マンガ『ライジング!』の原作って氷室さんだったのか~とか、『シンデレラ迷宮』ってずっと前にキャラメルボックスの舞台で見たなぁ、とか小説以外の部分でも作品に触れていたことが判った。

ここ10年ほど新作は発表していなかった模様。
ずっと闘病生活をされていたのだろうか。

ご冥福をお祈りします。

なぎさボーイ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
なぎさボーイ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
多恵子ガール (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
多恵子ガール (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
北里マドンナ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
北里マドンナ (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
ライジング! 【コミックセット】
ライジング!  【コミックセット】
シンデレラ迷宮 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
シンデレラ迷宮 (集英社文庫―コバルト・シリーズ)
 

※ムムリクさんの記事にトラックバックさせて頂きました。

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2008/06/01

米澤穂信/氷菓

氷菓 (角川スニーカー文庫)
氷菓 (角川スニーカー文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
いつのまにか密室になった教室。毎週必ず借り出される本。あるはずの文集をないと言い張る少年。そして『氷菓』という題名の文集に秘められた三十三年前の真実―。何事にも積極的には関わろうとしない“省エネ”少年・折木奉太郎は、なりゆきで入部した古典部の仲間に依頼され、日常に潜む不思議な謎を次々と解き明かしていくことに。さわやかで、ちょっぴりほろ苦い青春ミステリ登場!第五回角川学園小説大賞奨励賞受賞。

久々の米沢作品。
「古典部シリーズ」第一弾、とのこと。
舞台は部活動がさかんな進学校、神山高校。
「無駄なことはしたくない」がモットーの省エネ高校生・奉太郎がひょんなことから廃部の危機に瀕していた古典部に入部したところから事件は始まる…。

小さな謎の積み重ねがあって、そこから物語全体に関わる大きな謎解きに繋がっていくというスタイル。
各章に散らばった小さい謎解きのほうはけっこう面白かったけど、古典部の部長になる"千反田(ちたんだ)える"の持ち込んだ謎については引っ張ったわりに結末はあまり意外性を感じなかった。
これは、私が年齢的に奉太郎たちよりも、謎の中心人物であった"える"の伯父のほうに近いというのが影響しているんだと思うけど。
もちろん、私自身がそれを体験した世代ではないけど、「その頃そういうことがあった」というのは知識として知っていて当然という程度には近い世代であったということ。
(少なくとも「そんなことがあったんだ」と初めて聞く話ではなかった)
更には「何があったのか」と並んでもう一つの謎であった、古典部の文集の名前「氷菓」についての謎解きもヒントが提示された時点でピンと来た。
これについてはアイドル系の歌謡曲の歌詞として頭にインプットされていたので、作品の中で登場人物の高校生が(その意味に)衝撃を受けている描写と私の頭の中でグルグル回ってるその明るいフレーズとの間のギャップが凄くて全然感情移入が出来なかったのだった…^^;

でも、そんなことより私がずっと違和感を持っていたのは主人公・奉太郎の性格。
まだ高校1年生の奉太郎が、

「やらなくていいことなら、やらない。やらなければいけないことは手短に」

という省エネスタイルを貫く理由がよく理解できなかった。
高校1年生の男子っていったら、放って置いても無駄なエネルギー放出しまくり、って存在じゃないの?
(すごい偏見ですが(笑)あ、そのエネルギーを何かに転換出来ればいいのかも~(笑))
もちろん、人はどんなモットーを持っていてもいいと思うし、実際私も基本的に「面倒くさいことは大嫌い。しなくていいことはしたくない」という性格なのでそういう考え方自体を否定するわけではない。
でもだからこそ、そういう性格って「気が付いたらそうだった」って類のものであって、「これが自分のモットーです」って他人に言ったりするものではないような気がするんだけどなぁ。
それを奉太郎はあまりにも何度も口にするから、私にはそれが自然と身に付いた、または元々彼が持っている性質なのではなく、敢えて自分に言い聞かせているように感じられた。
もしかしたらそれも一つの謎なのかしら。それとも考えすぎ?

ちょっと微妙な違和感があったけど短くて読みやすい作品、しかもシリーズものなので、このあとも読んでみる予定。

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東野圭吾/黒笑小説

黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)
黒笑小説 (集英社文庫 ひ 15-8)

出版社 / 著者からの内容紹介
東野圭吾が描く、「黒い笑い」
平静を装いながら文学賞の選考結果を待つ作家、内心では「無理だろう」と思っている編集者――。文壇事情を皮肉たっぷりに描く短編の他、笑いをテーマにした作品を収録した傑作短編集。(解説/奥田英朗)

東野さんの作品は「長くて、シリアスで、重いもの」のほうが評価が高いみたいだけど、個人的にはこういう「短くて、ふざけてて、ニヤッと出来る」作品のが好きだな。

誰かの行動やある現象を角度を変えて描くことでそこに立ち現れてくる違和感と可笑しさを扱った作品が多いんだけど、その題材の選び方、悪意の込め方、題材への執着加減が絶妙。
これ以上やったら醜悪になる、不愉快に感じられるというレベルギリギリのところで踏みとどまる自制心がスゴイ。
決して爆笑出来る内容ではないけど、「こんなことよく考えつくよな~」と思いながら読みながらニヤニヤ笑える作品ばかりで面白かった。

「もうひとつの助走」「線香花火」「過去の人」「選考会」「巨乳妄想症候群」「インポグラ」「みえすぎ」「モテモテ・スプレー」「シンデレラ白夜行」「ストーカー入門」「臨界家族」「笑わない男」「奇跡の一枚」の13編を収録。

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2008/05/31

坂木司/先生と僕

先生と僕
先生と僕

大学入学のために上京してきた極度の恐がり屋・二葉は、初対面の中学生・隼人に誘われ彼の家庭教師を務めることになる。
二人が一緒に歩くと何故かぶつかる不思議な事件。
トラブルに巻き込まれることを恐れて腰が引けている二葉を、都会っ子で頭のいい隼人が引っ張って事件(謎)を解決していく連作短篇集。

表題作他「消えた歌声」「逃げ水のいるプール」「額縁の裏」「見えない盗品」の5編を収録。

これも面白かった。
大学生と中学生の師弟コンビが遭遇する「日常の謎」系ミステリーで、内容もそれに合わせて血生臭いところは一切なくサクサク読める。
それでいて解決までの筋道やその途中で交わされる2人の会話に適度な深みがあって、読み終わったあとに爽快感とともにちょっとした深みも味わえる作品だった。

面白くしているポイントはやっぱり、二葉と隼人、主役2人のキャラクター設定の見事さ。
関東近県の田舎町から大学入学をきっかけに上京してきた二葉。
殺人事件が出てくるミステリーが読めないほどの恐がりだけど、「覚えよう」と思って見たものは5秒で記憶できるという特技を持っている、という設定。
一方、隼人はミステリーが大好きな東京生まれの中学1年生。
二葉よりも5つも年下だけど頭の回転の速さ、知識の豊富さ、観察力、洞察力、行動力、どれを取っても二葉の上を行き、彼を引っ張っていく。
その上、外見はジャニーズ張りの美少年で、謎の究明のためには女性陣に絶大な威力を持つその特徴を利用することも厭わない性格。
…という田舎者でちょっとドンくさい大学生と、都会生まれでスマートな中学生コンビのバランスがいい。
特に、顔がよくて頭がよくて生意気で…というだけでは、何となく鼻に付くヤなガキになってしまうであろう隼人を、例えば「区民プールのウォータースライダーに目を輝かせる」なんていうエピソードを入れて「なんだ、可愛いところあるじゃない」と受け入れさせてしまうちょっとした匙加減が「巧い!」と思った。
主役が好きになれるかどうかって、こういう作品では重要なことだよね。

ただ、隼人とのコントラストのためにあまりにも二葉に「田舎育ち、世間知らず」というキャラを振りすぎたという部分はあったかも。
あまりにも彼の理解力が乏しいのでそこにイラッとさせられることが時々あった。
確かに年齢や生まれた環境の違いはあると思うけど、6年というのは全く理解できないというほど離れているとも思えないし、環境的にもいくら田舎だとはいえTVや雑誌や新聞がある限りそんなに情報に疎いということは考えにくいと思えるんだけどな…。
しかも二葉は「そこにあるものを写真のように記憶できる」という特技があるわけでしょう。
「見える」「記憶できる」ということは、それだけで洞察力、想像力に繋がる才能だと思うんだけどなあ。

でも、そういう二葉の朴訥さに隼人が少しずつ(いい意味で)影響を受けていくという展開も狙っているなら、2人の「差」が大きいほうが効果的なのかも。
この後2人がどんなふうに成長していくのか気になるので、これもシリーズ化してくれると嬉しい。

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仁木悦子/仁木兄妹の探偵簿〈1〉〈2〉

仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈1〉兄の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻
仁木兄妹の探偵簿―雄太郎・悦子の全事件〈2〉妹の巻

1986年に亡くなった仁木悦子さんの作品の中から、著者と同じ名前の妹とその兄・雄太郎が探偵役を務める短篇を集めた作品集。

〈1〉「兄の巻」収録作品
「灰色の手紙」「黄色い花」「弾丸は飛び出した」「赤い痕」「暗い日曜日」「初秋の死」「赤い真珠」「だだ一つの物語」「(犯人当て)横丁の探偵」
〈2〉「妹の巻」収録作品
「木からしと笛」「ひなの首」「二人の昌江」「子をとろ 子とろ」「うさぎさんは病気」「青い香炉」「サンタクロースと握手しよう」「(犯人当て)月夜の時計」

背が高くてやせっぽちで大好きな植物の研究をしているのが一番幸せな兄・雄太郎と、チビで標準より太め、不思議なことに遭遇すると自分で解決せずにはいられない妹・悦子が様々な事件に遭遇し、持ち前の好奇心と探求心でその謎を解決する物語。

仁木さんの作品を読むのはこれが初めて。
安野光雅氏の表紙とタイトルに惹かれて図書館で借りてみた。

雄太郎も悦子も一般人なのに、こんなに次々と事件(しかも殆どが殺人事件!)に巻き込まれるという展開はどうなのよ?と思わなくもないけれど、最近のミステリのように殺伐とした雰囲気ではなく人情とか、人の温かさのようなものを最後にきちんと感じさせて終わるほのぼのした作風でとても読みやすかった。
謎解きもそんなにトリッキーでなく、普通の人がちょっと悪巧みして考えた、またはそういうつもりはなかったけど偶然が重なってそうなったといったちょっと緩めの雰囲気が私好み。

でも何より魅力的なのは、探偵役の仁木兄妹。
特に語り手である妹の悦子の好奇心溢れる行動力や、豊かな感情表現が物語を支えているといっても過言ではないと思う。
最初の作品で音楽学校に通う学生だった悦子は、その後新聞社所属のヘリコプターパイロットである浅田氏と結婚し、哲彦(テッチン)と鈴子(スウ子)2人の子どものママとして登場している。
結婚し子どもを持っても彼女の好奇心は健在で、時にはテッチンをお隣に預け、むずがるスウ子をあやしながら事件解明に駆け回ったりしている。
それでも彼女の行動が自分勝手で独善的に見えないのは、事件への好奇心と同時に、事件の関係者への思いやりと自分の家族(特に2人の子どもたち)への溢れるばかりの愛情もしっかり描写されているから。
悦子とテッチン、スウ子の、事件には直接関係のない他愛のない会話がさりげなく、でも愛情を込めて描かれているのが微笑ましかった。
(特に子どもたちを車に乗せるのを「積み込んで」って表現するのが私は好きだったな)

第一巻が「兄の巻」、第二巻が「妹の巻」となっているから、「兄の巻」では全て雄太郎が、「妹の巻」では全て妹が謎解きをするのかと思ったらそうでもない。
さすがに「兄の巻」では最初の何編かは雄太郎メインだけど、それも後半からは悦子に乗っ取られ(笑)「妹の巻」では完全に悦子の独壇場。
(時々思い出したように雄太郎が出てくるけど)
多分全体的に妹メインの作品数が圧倒的に多かった、ということなんだろうけど個人的にはちょっと仙人然とした部分もある雄太郎の存在もけっこう好きだったので、もうちょっと活躍してくれたらよかったな。
仁木兄妹の全集は長編ものもあるようなので、今度はこっちも読んでみよう。

仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈1〉夏・秋の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻
仁木兄妹長篇全集―雄太郎・悦子の全事件〈2〉冬・春の巻

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2008/05/28

覚え書き:梨木香歩原作『西の魔女が死んだ』映画化

なんと、来月(6月21日~)公開だそうで。
全然知らなかった~!

「西の魔女が死んだ」オフィシャルサイト

メニューをクリックしたときに表示される、おばあちゃんちへ続く小道がすばらしくキレイ♪
大きな画面で見てみたいな。
でも、絶対泣いちゃうだろうな…。

西の魔女が死んだ (新潮文庫)
西の魔女が死んだ (新潮文庫)
フォレスト・ストーリー~Sound Scape from 映画「西の魔女が死んだ」
フォレスト・ストーリー~Sound Scape from 映画「西の魔女が死んだ」

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2008/05/26

(株)NAKANOのPAGEOPENER(ページオープナー)

池袋LOFTの文房具売り場をプラプラしていたら、ブックカバーや栞などを扱っているコーナーで「PAGEOPENER」という商品を発見。
その名の通り、本のページを開いたままキープするためのグッズ。

本体のpageopener後ろに写っている(小さい)写真にあるように、真ん中の2本のピンを本の厚みを中心に表紙側に、両端の2本を開いたページの内側になるように差して使うらしい。

普通に本を読む時は特に必要ないけど、編み物するときにテキストを開いておけるものがないかな~と探していたので「お、これは!」と思って早速買って試してみた。

結果…う~ん、編み物の本を長時間開いたままキープするのにはちょっと不安定かも。
確かに何もないよりはいいけど(当然だ^^;)、置いておくと段々端のピンが浮いて来ちゃうのがちょっと気になる。
(表紙にキッチリ折り目を付ければいいんだろうけど、それが出来ない本好きのサガ…(笑))
ピンが全部同じ長さじゃなくて、両端がもうちょっと長めだったらよかったかも。
もう一つ買って上下で押さえておけば大丈夫かな。

この商品を扱っている(株)NAKANOは音楽関係の商品の企画・開発をしている会社らしい。
(この商品にも「MUSIC FOR LIVING」の文字が刻印されている)
ということはこれも本来は「楽譜用」ってことか。
楽譜だったらこのくらいの強度でちょうどいいのかな?

サイト内の「ミュージックギフトショップマーケット」で紹介されている音楽をモチーフにした商品(ストラップとかレッスンバッグとか)が可愛い♪

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2008/05/18

西澤保彦/スコッチ・ゲーム

スコッチ・ゲーム (角川文庫)
スコッチ・ゲーム (角川文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
通称タックこと匠千暁、ボアン先輩こと辺見祐輔、タカチこと高瀬千帆、ウサコこと羽迫由起子、ご存じキャンパス四人組。彼らが安槻大学に入学する二年前の出来事。郷里の高校卒業を控えたタカチが寮に帰るとルームメイトが殺されていた。容疑者は奇妙なアリバイを主張する。犯行時刻に不審な人物とすれ違った。ウイスキイの瓶を携え、強烈にアルコールの匂いを放っていた。つけていくと、河原でウイスキイの中身を捨て、川の水ですすいでから空き瓶を捨て去った、と…。タックたちは二年前の事件の謎を解き、犯人を指名するため、タカチの郷里へと飛んだ。長編本格推理。

今回は長編。
タカチこと高瀬千帆が故郷から遠く離れた安槻大学に入る(つまりタックやボンちゃん、ウサコたちと知り合う)きっかけになった、連続殺人事件の真相を探る物語。

お、重い…。
事件の内容も重いけど、解明された真実も動機もあまりにも重くて救いがない。

こんな事件の当事者(というか中心にいる人物)になってしまったとしたら、タカチがあんなにエキセントリックな性格なのも理解できる。
でも、タカチがあんななのは「この事件があったから」ではないんだよね。
逆にその前のほうが大学時代よりも更に(性格的には)過激だった印象。
その原因についても物語の中で言及されていたりはするんだけど、ちゃんと納得出来る回答は出てこなかったな。
どっちにしても「面倒くさい性格の人だなあ」という印象は変わらなかったけど(笑)

文章は簡潔で読みやすかったけど、人間関係が入り乱れていてしかもその間に事件とは直接関係のないタカチや他の登場人物たちの心情や考察が入ってくるので事件の動きを理解するのが難しかった。
しかも事実の提示方法(順番とか、タイミングとか)にちょっと違和感あり。
例えば、上のあらすじで書いてあるアリバイは同じことが小説の裏表紙に書いてあるんだけど、これが作品の中で明らかにされるのはかなり物語が進んでから、解決編の直前くらいなのだ。
あらすじを書くのは作家本人ではないんだろうけど…なんだかちょっと変な感じがした。

キャラクターの描き方は巧い。
ただ、あまりに巧すぎて誰がメインで誰が脇役なのかを判断するのが難しい、とか話が妙に長い(直接事件と関係ない話が多い)という難はあり。
私としてはその「関係ない部分」のほうが(今回も)面白かったので、個人的にはいいんだけど、ミステリーとして読んだ場合はどうなんだろう?

特にタカチやタックたちの関係性の築きかたについての考察はなかなか考えさせられるところが多かった。
ボンちゃん(ボアン先輩)みたいな人が実際にいたら救われる人ってたくさんいるんじゃないかな。
でも、もしかしたらその真意に気付かずに、単に「しつこい人」「空気が読めない人」と判断されてしまう可能性もなきにしもあらずかも…。
人間関係って難しい(というか面倒くさい^^;)。

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西澤保彦/黒の貴婦人

黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)
黒の貴婦人 (幻冬舎文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
飲み屋でいつも見かける“白の貴婦人”と、絶品の限定・鯖寿司との不思議な関係を大学の仲間四人組が推理した表題作。新入生が自宅で会を開き女子大生刺殺事件に巻き込まれる「招かれざる死者」。四人の女子合宿にただ一人、参加した男子が若者の心の暗部に迫る「スプリット・イメージ」ほか本格ミステリにしてほろ苦い青春小説、珠玉の短編集。

先日読んだ「謎亭論拠」「解体諸因」と同じシリーズの短篇集。
表題作他「招かざる客」「スプリット・イメージ または避暑地の出来心」「ジャケットの地図」「夜空の向こう側」の5編を収録。

この間読んだ2作が面白かったので、追いかけて読んでいるけど物語中の時系列と発行順、それに発行出版社がそれぞれバラバラなのでこれがなかなか難しい。
しかも、いくら同じシリーズとはいえ、状況や設定が違えば(当然ながら)それぞれ別のアプローチの作品になっているわけなので、自分が希望する作品が読めるわけでもないというのもあるし。

この本は前に読んだのと同じように短篇集だけど、雰囲気はかなり違った。
前2冊のように事件の概要だけがどんどん提示されてそれをパズルを解くようにみんなで推理して…といったアッサリした展開ではなく(そういうのもあるけど)、それぞれの物語の登場人物の関係性が詳細に描かれていたり、心情が吐露されたりしているので事件そのものはそれほどでもないのに物語そのものはかなりヘビィな印象。
特に「スプリット・イメージ」はちょっと読むのが辛かった。

その他の話も、推理や展開にあまり説得力がなかったような気がする。
事件の話よりもレギュラーメンバーから出てくるサイドストーリーに繋がるのであろうこぼれ話のほうが面白かったかも…。

あと、太田忠司氏が書いている解説が面白かった。
「この世には『議論を好む人間』と『そうでない人間』の二種類がいる」って話。
氏自身は前者で、高校の学校帰りに級友と「カレーライスは和食か洋食か」を巡って議論した思い出などが書かれていた。
これを読んで「そういえば私も学生の頃は、結論が出ない(というよりも「ない)」話を延々と喋っているのが好きだった」ことを思い出した。
まともに利害関係が絡んでいたり、感情的になってしまう議論というのは苦手だけど、ただ言葉遊びのように議論のために議論する、というのはけっこう好き。
最近はそういう話に付き合ってくれる人がいないのであまりしないけど、例えば会社のミーティングなどでもどちらの意見が「いい、悪い」「賛成、反対」とかではなく、「こういう考え方も出来ますよね」ってそのテーブルに上がっていない考え方をただ提示していくってのは時々やってたり…(笑)
そう考えると、ある内容の事柄について頭から「絶対に○○だ」という考え方ってあまりしない人間かも。
どちらかというと「どうでもいい」「どっちでもいい」というスタンスでいることが多いので感情的に視野狭窄にならずに済んでいる部分はあるけど、反面あまり周囲に興味がないことが多いので(笑)情報量が圧倒的に少ないという弊害もあるかな。
物事に対する姿勢がニュートラルで、偏らない見方が出来る「バランスの取れた人」になるのはなかなか大変だ。

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有栖川有栖/白い兎が逃げる

白い兎が逃げる (光文社文庫)
白い兎が逃げる (光文社文庫)

内容(「BOOK」データベースより)
「君を好きになった。君も僕に興味を持って欲しい。それが無理なら、離れたところから君を見守っているだけでもいい」―。ストーカー行為に悩む劇団「ワープシアター」の看板女優・清水玲奈。彼女を変質者から引き離すプランは、成功した筈だった。ところが、ストーカーの死体が発見され、事件は思わぬ展開に! 臨床犯罪学者・火村英生の論理的思考が冴え渡る、4編の傑作本格推理。

臨床犯罪学者・火村助教授と推理作家・有栖川有栖のコンビが活躍するシリーズ。
表題作他「不在の証明」「地下室の処刑」「比類のない神々しいような瞬間」の4編の中編を収録。

事件の発生から、主役2人の登場、捜査、推理、解決という流れがスムーズで巧い。
短篇だと物足りないし、長編だと話が複雑になってきて付いていくのが大変になるので、「中編」と呼ばれるこのくらいのページ数の作品が一番読みやすい。

4作の中では「比類のない神々しいような瞬間」が面白かった。
著者曰く「(作品のラストに明かされるある事実は)賞味期限のあるアイディア」とのことだったけど、初出から6年経っても「おお、なるほど」と感心できる私のような読者もいるわけだからよろしいのではないでしょうか?(笑)

表題作は内容が凝っていて、二転三転する設定が面白かったしラストの謎解きは意外性があったけど、その分話に付いていくのがちょっと大変だった。
脳の持続力や瞬発力がないとミステリーを楽しむのは難しい。

牛尾篤氏によるカバーデザインが印象的。

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畠中恵/とっても不幸な幸運

とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1) (双葉文庫 は 18-1)
とっても不幸な幸運 (双葉文庫 は 18-1) (双葉文庫 は 18-1)

内容紹介
ややひねくれているけれど、料理自慢で世話好き店長のいる酒場。今日もクセモノ常連客が、いわくつきの「とっても不幸な幸運」の缶を持ち込んだ。缶から現れた物がもたらしたのは「災い」? それとも「幸せ」? 「しゃばけ」シリーズで大人気の作家が贈る現代版ファンタジックミステリー!

ヒャッキンで買った、『とっても不幸な幸運』という名前のカンヅメ。
見た目は何の変哲もないカンヅメだが、それを開けると開けた人物の過去の記憶やそれを象徴する幻が飛び出してくるという不思議なシロモノ。
それに惹かれるように起こる事件を、新宿のバー『酒場』のマスターや常連たちが解決していく短篇ミステリー連作集。

『酒場が舞台のミステリー』というと北森鴻さんの<香菜里屋シリーズ>が最初に思い浮かぶ。
でもあんな雰囲気を想像して読み始めると物語に入っていくのがちょっと大変。
「カンヅメを開けると幻や記憶やそれを象徴するものが出てくる」というファンタジー的な設定を理解して、素早く前述の想像と入れ替えることが出来るか、がこの作品を読むポイントかも。
(または最初から先入観なしに読むこと)

私はこの切り替えがなかなか上手く行かずにちょっと戸惑った。
だってその「カンヅメから不思議なものが出てくる」というのがこの中の全ての作品に共通する設定だということに、2つめの作品を読むまで気付かなかったんだから。
(1作目だけの特殊な設定かと思って読んでいた^^;)

それに慣れてしまえば、サクサク読めて終わり方もホッと出来る作品。
…なんだけど、それでもこの『酒場』のマスターや客の言動に、なんとな~く違和感を感じてしまったのは何故なんだろう?
なんとなく「とってつけた」的な発言や行動が目に付いてしまったような気がする。
特にマスターは連作の最後に出てくる若い頃のエピソードと、今の姿が上手く結びつかなくて何となく微妙な感じのまま読み終わってしまった。

舞台がバーじゃなければ…とも思ったけど、他人の大人がこんなに親密に時間や場所を共有出来るのはやっぱり「お酒を飲む場所」でしかあり得ないのかもなあ…。


香菜里屋を知っていますか
香菜里屋を知っていますか

<香菜里屋シリーズ>もこの作品で最後みたいですね。
だんだん工藤(マスター)が千里眼状態になってきて、ミステリーとしてはあまり興味がなくなっています…。
それよりも「香菜里屋の料理本」が出たら嬉しいかも^^;

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2008/05/11

ハセベバクシンオー/「相棒」シリーズ 鑑識・米沢の事件簿

相棒シリーズ 鑑識・米沢の事件簿~幻の女房~ (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ) (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ)
相棒シリーズ 鑑識・米沢の事件簿~幻の女房~ (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ) (宝島社文庫 610 「相棒」シリーズ)

内容紹介
大人気ドラマシリーズ『相棒』のスピンオフ小説が、劇場版の公開に合わせて発売に! 爆弾テロ予告事件が起こった東京ビッグシティマラソン。犯人を捜していた鑑識官・米沢守は、そのマラソンの参加者に、自身の逃げた女房を見つけ出してしまう。特命係の杉下右京・亀山薫がテロ予告事件の犯人を追うなか、米沢はひとり、逃げた女房の行方を捜していた……。『相棒』の人気キャラクター、鑑識・米沢が大活躍する、文庫オリジナルストーリー。

人気ドラマ「相棒」の現在公開中の映画版のサイドストーリー。
しかも主役は鑑識の米沢守。
いわゆる最近流行の「スピンオフ」作品ということ。

ドラマ自体けっこう好きで(全編ではないけど)よく見てるし、その中でも米沢を演じている六角さんは昔何度も下北あたりの劇場で生の舞台を拝見したことがあるので(勝手に)親近感を持って見ていた役者さんだった。
(六角さんが主役をやった「夜曲」は名作!何度見ても泣けました)
このドラマでも六角さん特有のオタクっぽいけど妙に人なつっこい、不器用そうに見えて実は手先が器用で繊細で気が利く。
といった微妙なキャラクターを米沢という登場人物に反映させて、今では特命係の2人にとってもドラマ全体にとってもなくてはならない存在になっているのが印象的。
本編のノベライズは見かけても「う~ん…今じゃなくてもいいか」って感じだったけど^^;、これは見た途端「あ、面白そう!」と思って即買いだった。

爆弾テロ予告があったマラソン大会の参加者に別れた(逃げた?)女房・知子の姿を見つけた鑑識の米沢が、事件解決後彼女を訪ねて職場とアパートに赴くが実際に顔を合わせることなくその場を去る。
それから2日後、「女性の変死体発見」の出動要請に応じて出掛けた先はそのアパートの彼女の部屋だった。
動揺を隠しながら職務を遂行する米沢。
状況から彼女の死が「自殺」で片づけられようとしていた矢先、所轄署の1人の刑事が米沢を訪ねて来る…。

最初にちょっとしたミスリーディングがあって、その後よく似た境遇の「相棒」と2人独自の捜査を展開し、真相を掴んでいく過程が丁寧に、しかも読みやすく判りやすく描かれていて面白かった。
しかも、テレビで見る米沢のキャラクターがそこにちゃんといて、「確かにこんなふうに反応するだろうなあ」とか「こういうこと言いそう!」って表現がそこここにあって、ストーリーや謎解きと同時にそうした部分も楽しく読むことが出来た。
特に、「相棒」と2人で自分のマンションに向かう途中、HIP-HOPのダンサーたちや小学生の男の子に気軽に声を掛けられる、という部分。
「得体の知れなさ」が逆に「愛すべきキャラクター」に感じられる描写がよかった。

右京と薫は予告テロの後始末に追われて手助けを求められない、だから米沢が自力で…という設定や、それでいてトリオ・ザ・捜一のメンバーや角田5課長、たまきや美和子などのレギュラーメンバーをさりげなく出してくる構成も巧かった。
ホントにこのままドラマ化しても大丈夫なのでは?と思える作品。
そうなったら嬉しいんだけど…。

次は、トリオ・ザ・捜一(特に歪んだ正義感・イタミン(as 川原さん)!)やいつもマイペースな角田5課長を主役にしたスピンオフを期待!

相棒 劇場版―絶体絶命!東京ビッグシティマラソン42.195km
相棒 劇場版―絶体絶命!東京ビッグシティマラソン42.195km
相棒-劇場版-オリジナルサウンドトラック
相棒-劇場版-オリジナルサウンドトラック

相棒-劇場版-

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畠中恵/ゆめつげ

ゆめつげ (角川文庫 は 37-1)
ゆめつげ (角川文庫 は 37-1)

出版社/著者からの内容紹介
『しゃばけ』シリーズで大ブレイク中の著者が贈る、軽妙な和風ミステリ!
江戸は上野の端にある神社で神官を務める粗忽な兄としっかり者の弟。兄には夢告の能力があった。その噂を聞きつけて舞い込んで来たのが、大店の行方不明の一人息子の行方を占ってほしいという依頼だったのだが……。

表紙のコミカルなイラストから、もっと軽く笑える短篇連作集を想像していたら、実際はわりとシリアスな内容の長編ミステリ。

その最初のイメージのギャップのせいか、なかなか物語に入っていけなかった。

繰り返される弓月の夢告の内容の解釈や、色んな思惑が絡まり合った周囲の事情が今ひとつ判りにくかったし、内容がシリアスなわりに中心にいる弓月はけっこう「のほほん」としている部分があって(まあ、そういう設定なんだけどね)、読んでいるこちらとしてはどんな感じで物語を捉えればいいのか迷っているうちに読み終わってしまったよ…という感じかな。

千年の昔から神を守り続けてきた「神官」という仕事が、幕末という時代を迎えて人の手によってその方向をねじ曲げられようとしていたことを描きたかったんだとは思うけど、何だか色んなものを詰め込みすぎだったような…。
大店の札差夫婦の息子探しと、辻斬り騒動はまた別の話にしたほうが判りやすかったように思う。

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2008/04/29

よしながふみ/大奥〈第一巻~第三巻〉

大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))
大奥 (第1巻) (JETS COMICS (4301))

すごく久々にマンガを読んだ。

「面白い」という噂は聞いていたけど、もともとあまりコミックス売り場に行かないせいもあって、たまに行ってもどこにあるか見つからない、とか見つけたと思ったら1巻目だけないとかいう状況が何度か続いてなかなか手元に来なかった。
それが今日の帰りに何気なく本屋に寄ったら、たまたま3冊とも揃っていたので「今だ!」ってことでまとめ買い。
で、帰って来て一気読み。

面白かった!!!

江戸幕府三代将軍家光の時代に若い男だけが次々と死んでいく奇病が流行し、その後女子に対して男子の人口が3分の1になってしまった日本が舞台。
そこでは生命力の弱い男に代わって、全ての労働力が女に委ねられ、家督も女が継いでいく世界となっている。
そして、「大奥」もまた女性の将軍と、三千人の美男たちで出来ていた…という話。

将軍が女で、周りに侍るのが男たちという逆ハーレム状態の「大奥」の話だってことは聞いていたのでもっと笑える軽い内容なのかと思っていたら、これがかなり重厚な造りの物語で読み応えアリ。
セリフや心理描写がかなり濃厚で奥が深い。
集中して読んだので、けっこう疲れた^^;

単純に男と女が逆転している(男性の女性化、女性の男性化)ということではなくて、それぞれがそのメンタリティを保持したままでその立場が逆転しているという複雑な状態をとても巧く表現していると思う。
しかも「大奥」という設定だけ持ってきて他は全く別の世界というわけではなく、主要人物はちゃんと歴史上の人間関係や設定をなぞっているのも面白い。

それに何より絵が上手いのがいい。
「美形」がちゃんと「