奇跡のクラーク・コレクション展@三菱一号館美術館
大手町の三菱一号館美術館で開催中の「奇跡のクラーク・コレクション-ルノワールとフランス絵画の傑作-」展を観てきた。
クラーク・コレクションとはシンガーミシン創設者の子孫である大富豪のアメリカ人クラーク夫妻が収集した美術品で、通常はアメリカ東部マサチューセッツ州の「クラーク美術館」に収蔵されているとのこと。
今回はその中から選りすぐりの近代フランス絵画を中心にした73点が公開されている。
ルノワールを始め、ミレー、モネ、コロー、ロートレック、ドガ、ピサロなど「私でも知ってます」的な有名な画家の名前が目白押し。
しかも大きさも内容もしっかりした、さらにあまり日本では一般的に知られていない作品ばかりだったのでどれも非常に見応えがあった。
以下、印象に残った作品について。
- モネ『エトルタの断崖』
断崖に映った光と影、さらに海と空の色合いがすごく綺麗だった。 - モネ『ジヴェルニーの春』
柔らかで華やかな色彩があふれていて、まさに「春」という感じ。
見るだけで心が浮き立つ作品。 - マネ『花瓶のモスローズ』
ガラス製の花瓶に活けられたピンクの薔薇を描いた小品。
力強さと繊細さ、可愛らしさが同居していてずっと観ていたくなる作品。
死の1年前、体調を崩している時期に描かれたらしいけど、そうした弱々しさを全く感じさせない。 - ドガ『稽古場の踊り子たち』
横長のキャンパスに描かれたバレエの稽古場と若いバレリーナたちの姿。
奥行きと活気、そして僅かな倦怠感を感じる作品。 - ジェローム『奴隷市場』
中央に描かれた奴隷として売られていこうとしている若い女性の美しさが印象的。
奴隷として描かれているのに、卑屈さは全くなく裸身を晒して艶然と微笑む様子は女王のように見えた。 - ジェローム『蛇使い』
蛇使いの全裸の少年の後ろ姿がすごく綺麗。
その様子を興味津々で見守る観客たちの表情や仕草も克明で思わず目を惹きつけられた。
背景の壁や床の装飾も細かくて美しかった。
ジェロームも印象派なのかな?
印象派の作品はもっと輪郭が曖昧なイメージがあるけど、ジェロームの作品はあくまでリアルで繊細なのでちょっと違う感じ。
でも私はこういう作品のが好きかも。
あ、この作品は以前どこかで見たことあるなあ。
「A Roman Slave Market」 - ブグロー『座る裸婦』
このブグローの裸婦もすごくリアリティがあって美しかった。
ポーズによる筋肉の動きや肌の質感、色など、本物よりも本物っぽい感じ。
しかも大きな画面いっぱいに裸婦が描かれているので迫力があった。 - ルノワール『テレーズ・ベラール』
青と白を基調にして描かれた少女の肖像。
明るい青と紫で彩られた背景の色合いが美しかった。
モデルの少女は「着てる服がダサい」という理由でこの絵を気に入らなかったとか(笑)
絵の中ではとても知的でそんなふうなことを言いそうな感じではないんだけど、それはルノワールの理想なのかな。 - ルノワール『鳥と少女(アルジェリアの衣装をつけたフルーリー嬢)』
少女の全身像。
青や緑を基調とした濃い背景に、淡い明るい色の衣装をまとった少女がくっきりと浮かび上がっていて美しかった。
少女が鮮やか過ぎて鳥の印象があまりないな…(汗) - ルノワール『縫い物をするマリー=テレーズ・デュラン=リュエル』
背景の緑と少女が被った赤い帽子のコントラストが印象的。
一心に縫い物をする少女の真剣な表情も素敵。
こんなにたくさんの名品を他の美術館に貸し出しちゃって元の美術館は大丈夫なの?とちょっと心配になったけど、クラーク美術館は現在増改築中でその間のみの世界巡回とのこと。
これが終わるとあとはニューヨークやボストンから車で3時間(ってどのくらい遠いの?(^^;)行ったところにある本家まで行かなくちゃならないらしいので、この機会に是非。
会期は5月26日まで。
■「奇跡のクラーク・コレクション」公式サイト
会場の三菱一号館美術館は今回初めて行ったけど、ちょっと変わった構造の美術館だった。
美しいレンガ造りの建物の中の2階と3階が展示室なんだけど、(美術館としては)小さい部屋と廊下の中に数点ずつ作品が展示してあって、そこを巡りながら作品を見ていく構成。
なんとなくどこかのお家におじゃましているような雰囲気だった。
ただ、混んでいるせいもあってかちょっと落ち着かない部分もあったかな。
それと思ったより展示室が多くてあちこち出たり入ったりするので、展示品を見ているときはよかったけど最後出た後でロッカーの場所が判らなくなってしまいウロウロしてしまった(^^;
展示されている作品はすべて額装され、保護用のガラスが掛けられていたんだけどそのガラスに照明が反射していないのがよかった。
美術館によっては時々、光が反射するだけでなく見てる観客の姿まで映り込んでしまい自分で見る位置を探さないと作品が見えないという場合もあったりするので、そういう点でストレスなく作品に集中出来るのはありがたい。
みんなこういう展示だったらいいのになあ。
今回の展覧会用の音声ガイドに特別ゲストとして黒柳徹子さんのチャンネルがあったんだけど、最初の挨拶を聞いたら滑舌がすごく悪くて(特にラ行とサ行)いたたまれない気分になってしまいそれ以上聞けなかった。
幸い普通の作品解説は他の人だったので問題なかったけど…。
TVなら平気なのかもしれないけど、イヤホンであれを聞くのは(失礼ながら)ちょっと勘弁…という感じ。
黒柳さんももうお年だから仕方ないのかなあ。
美術館の中庭には花や木の植え込みを巡る小道にベンチがいくつも設置されて散策や休憩が可能。
また、その周りにはカフェや雑貨屋さんも。
ここのカフェも評判がいいので寄ってみたかったけど、その前にお茶をたくさんいただいてお腹が空いていなかったので今回は残念ながらパス。
楽しみは次回に取っておこう。
| 固定リンク
| コメント (0)
| トラックバック (0)
最近のコメント