カテゴリー「購入本」の3件の記事

2009/04/30

今野敏/心霊特捜

心霊特捜
心霊特捜

内容(「BOOK」データベースより)
番匠警部…R特捜班班長、背広はヨレヨレだが統率力◎。数馬主任…古神道伝承者、細身だが眼光鋭く迫力満点。鹿毛巡査…実家は密教系の寺、皮肉屋のパンクロッカー。比謝巡査…沖縄出身のノロ、桁外れにマイペース、紅一点。そして、岩切大悟…県警刑事総務課所属で、R特捜班との連絡係だが恐がり。神奈川県警 R特捜班、別名『心霊特捜班』。心霊現象が絡む事件を担当する特別捜査班。山本周五郎賞・日本推理作家協会賞W受賞後第一作、クールでちょっと切ない警察小説。

心霊現象による事件の解決を目的に鎌倉署内に設立された「R特捜班」(Rは霊(Rei)のR)の活躍を描いた短編集。
「死霊のエレベーター」「目撃者に花束を」「狐憑き」「ヒロイン」「魔法陣」「人魚姫」の6編を収録。

リアリティ満点の「安積班シリーズ」とは打って変わって、こちらは悪魔祓いだの狐憑きだの自縛霊だの憑依だのといったオカルトな内容でかなり意外な感じでした。
とはいえ、そうしたキワモノ的な題材を扱いつつも「R捜査班」のメンバーのキャラクター設定や事件の内容、物語の構成などはさすがにキッチリ作られているので、読みやすいし安定感もちゃんとある作品になっているわけですが。

かなり非現実的で「あり得ない」内容だけど、考えてみれば警察官というのも一般人とは比べられないくらい人の死に関わる職業であるわけだからそうした非現実的なものを否定しつつもどこかで繋がっている部分がもしかしたらあるのかも?なんてことを想像してみたり。
それに、他に人の目がないところでの犯行だったとしたら、幽霊でもいいから見ていてくれないかと思うこともあるんじゃないかなあ。
証言として有効ではなくても、そこから捜査の糸口が見つかる可能性はあるかもしれないじゃない。
(この本の中にもそういう内容の話があった)
もしかしたらこれから先の未来では、本当にそうした捜査を研究するようになってくるのかも。
あと、霊的なものとはまた違うけど「残留思念」とかね。
例えば死の間際といった極限の状態では人間の脳波や身体から何らかの物質(?)が放出されているんじゃないのかな。
(それが「思念」なのかどうかは判らないけど)
だから、それを何らかの方法で読み取ることが出来るようになったら、事件の解決に役立てられるのでは…なんてことを考えたのでした。
ただそこが人間の立ち入れる場所であったらその場所にいた人が必ずしもその犯罪に関係のある人とは限らないから何らかの方法でそれを特定しなくちゃいけないわけだよね。
例えば地質の鑑定みたいになんちゃらの含有量で時代が判定できるようになるとか?
すごく荒唐無稽の話のようにも思えるけど、例えば今は生きたままの人間の輪切り画像だって撮影できるようになってるわけだから、このあと何十年何百年経てばそうしたことが当たり前になっている時代だって来ないとは限らないよね。

ところで、この物語の中で「R特捜班」は鎌倉署にあることになってるんだけど(所属は本庁)、その理由は「古都であるため住民からのそうした通報が多いから」。
これを読んで、じゃあ京都や奈良はどうすんだ、と思ったのは私だけではないはず…(笑)

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2008/09/14

太田忠司/奇談蒐集家

奇談蒐集家 (創元クライム・クラブ)
奇談蒐集家 (創元クライム・クラブ)

出版社 / 著者からの内容紹介
【求む奇談!】新聞の片隅に載った募集広告を目にして、「strawberry hill」を訪れた老若男女が披露する不思議な体験談――鏡の世界に住まう美しい姫君、パリの街角で出会った若き魔術師、邪眼の少年と猫とともに、夜の町を巡る冒険……謎と不思議に満ちた奇談に、蒐集家は無邪気に喜ぶが、傍で耳を傾ける美貌の助手が口を開くや、奇談は一転、種も仕掛けもある事件へと姿を変えてしまう。夜ごと"魔法のお店"で繰り広げられる、安楽椅子探偵奇談。

 

古めかしく重厚なバーの奥にしつらえられた特別室。
そこでくつろぐ変わった風貌の男。
差し出される名刺には「奇談蒐集家 恵美酒 一」の文字。
新聞広告に誘われてやってきた客は彼の前で自らの不思議な体験を語り始める。
「これこそは奇談!」と喜ぶ恵美酒を後目に、部屋の片隅にひっそりと控える恵美酒の美貌の助手・氷坂がその物語の謎を解き明かしていく…。
という、舞台設定はすごく凝っていて面白いんだけど、残念ながら内容は今ひとつピンと来なかったというのが正直なところ。

ただ、単純に「不思議な話をしてその種明かしをしてもらって終わり」ではなく、最後になって氷坂による種明かしを真実であると信じた訪問者たちがその内容に従って行動した結果…という後日談が入ってくる。
これがかなり辛辣、かつ不気味な内容。
多分、こここそが著者の本当に書きたかった部分なんだと思う。
確かにインパクトはあった。
でも、やっぱりここに至るまでの元になる話がちょっと弱かったのと、最後の仕掛けが出てくるのがちょっと遅すぎて、全体的に見るとちょっと曖昧な形で終わってしまった印象かな。

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2004/09/20

タニス・リー/闇の公子

闇の公子
タニス・リー 浅羽 莢子/ハヤカワ文庫

まだこの世が平らかだった頃、地底に筆舌も及ばぬほどの妖しさと魔法に満ちた妖魔の都があった。
その都の主、美しくも残酷な闇の公子・アズュラーンが愛すべき玩具である人間達に仕掛ける気まぐれな悪行の数々を綴る美しき物語。


とても面白かったです。

とにかく訳文(訳者:浅羽莢子氏)が魅力的。
こんなにも美しい言葉で書かれた物語は久しぶりに読みました。

ベースにある原作の完成度が高く、そして主人公である闇の公子・アズュラーンと言うキャラクターが魅力的であるのはもちろんです。
でも幾ら美しくて魅力的な作品であったとしても、外国語で書かれた物語は日本語に訳して貰えないと読むことが出来ません。(少なくとも私は)
また仮に訳されたとしても、その訳が原作の物語をそのまま(あるいはそれに限りなく近い形で)再現できるかどうかも判りません。
その点、この作品は原作の美しさを再現することが出来る優れた、しかも原作を愛する翻訳者に巡り会うことが出来た、幸運な作品だと言えるでしょう。

翻訳物があまり得意ではない私ですが、この作品はその内容にあったクラシカルで威厳に満ちた(しかし古くさくも堅苦しくもない)文体と言い、音楽的でさえあるその豊富で美しい語彙の数々と言い、全てが素晴らしかったです。

そんな美しい言葉で紡がれるのは、多くの妖魔に傅かれながらも、闇の帝国で孤独に生きる美しき公子・アズュラーンの物語です。

公子・アズュラーンの人間に対する屈折した、しかし哀しいまでの愛情(なのでしょうね、きっと)が胸に迫りました。
気まぐれに人間を誘惑し、翻弄し、時に拒絶されるや、その人生に害をなし、絶望させ、破滅させる…しかし、その心の底にあるのは彼なりの「愛」であったのだと思います。
それは最後は(原因は自分の蒔いた小さな種であったわけですが)「憎悪」によって滅びようとしている人類をその身を挺して守ろうとした事からも明かです。

それに対し、ゾラーヤスやケバなどかつては全くの人間であったけれども、アズュラーンの怒りに触れ、その人としての生を踏み外してしまった者たちによる人類に対する復讐の方が、容赦なく、すさまじいものであった事にとても象徴的なものを感じました。

また、ラスト近くで出てくる「神」の存在も今までにない独特な描写で非常に印象的でした。


この作品は「サボテン島のハリネズミ」さんの『闇の公子:タニス・リー』の記事に触発されて読みました。
美しく完成度の高い物語を読むことが出来てとても楽しかったです。
ご紹介ありがとうございました。
トラックバックをつけさせて頂きました。

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